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[ACG44-04] 北太平洋亜寒帯沿岸と北部ベーリング海陸棚における海水中のヨードメタンとヨードエタンの分布特性
キーワード:ハロカーボン、揮発性有機化合物、ヨウ素
海水中には、ヨードメタン(CH3I)やヨードエタン(C2H5I)、クロロヨードメタン(CH2ClI)、ジヨードメタン(CH2I2)などの有機ヨウ素ガス種(Volatile organic iodine compounds ; VOIs) が存在する。これらVOIsは海洋から大気に放出されると光分解してヨウ素原子を供給することで、対流圏大気のオゾンを触媒的に破壊する効果をもつ(e.g., Carpenter et al., 1999)。海洋植物がVOIsを生成していると考えられており、大型藻類、小型藻類(植物プランクトン)、光合成細菌、従属栄養細菌による生成が確かめられている(e.g. Schall et al. 1994; Tokarczyk and Moore 1994; Hughes et al. 2008)。海水中におけるVOIsの鉛直分布を調べた研究は数多いが、その直下にある海底堆積物中のVOIsが調べた研究事例は無かった。そこで本研究では、北極域のチャクチ海南部、北部ベーリング海、北海道噴火湾の海水と堆積物中のVOIsを測定した。大気や海水中では、どこでもヨードエタンがマイナー成分であるが、堆積物表面では圧倒的なメジャー成分に躍り出ることを発見した。噴火湾での通年観測により、春の珪藻ブルームの直後から堆積物中でヨードエタンの濃度が急増することから、珪藻由来の有機物からヨードエタンが発生すると考えられた。噴火湾で採集した珪藻の凝集物を暗所培養したところ、3~7日後にヨードエタンとヨードメタンが生成されることを確認した。無酸素条件下では、ヨードエタンの発生は多いが、ヨードメタンの発生は少なくなることも明らかにした。これらの特徴は、海水や堆積物中の両化合物の濃度分布の特徴を説明できるものである。堆積物の作用が海洋表層にも及ぶ沿岸域であれば、堆積物におけるヨードエタンやヨードメタンの発生の影響が大気にも及ぶ可能性がある。