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[ACG44-06] 原子間力顕微鏡を用いた海洋起源有機エアロゾルの付着性評価
キーワード:海洋起源エアロゾル、波の花、原子間力顕微鏡(AFM)、付着力、沈着
エアロゾル粒子はひとたび沈着すると、大気との境界で起こる様々な環境問題の原因となる。例えば、沿岸地域では海塩をはじめとした海洋起源エアロゾルはガイシや鉄塔などの表面に付着することでインフラ設備の腐食を引き起こす。このような環境中におけるエアロゾル粒子の付着挙動を解明するには、長年見過ごされてきた、付着力(物体に対して粒子が付着し続ける力)の影響を考慮する必要性がある。本研究では、海洋起源エアロゾルの付着性を評価することを目的とし、海洋起源エアロゾルを模した試料に対して原子間力顕微鏡(AFM)を用いた個別レベルでの詳細な付着力測定(フォースカーブマッピング法)を実施した。有機物成分に富む海洋起源エアロゾルの代表として、SSMAP(Sea Surface Microlayer Aerosol Project)の一環で捕集・冷凍された能登半島の波の花試料を粒子化し、AFMにより付着力を測定した。また、有機物の有無の影響を調べるため、標準的な単糖類(グルコースとフコース)粒子と人工海塩についても比較の対象とした。加えて、実大気中から捕集された海洋起源エアロゾルとの比較も行った。人工海塩や実大気中の海塩粒子に比べて、標準単糖類粒子は顕著に大きな付着力を持つことが明らかとなった。AFMの形態測定の結果から波の花粒子は無機塩と有機物が様々な割合で含まれ、コアシェル構造を持つことが分かった。波の花粒子のフォースカーブマッピングから、コア(無機塩)部分のみを測定した粒子(コア粒子)とシェル(有機物)部分を測定した粒子(シェル粒子)に分類し比較を行った。コア粒子は人工海塩や実大気中海塩と同等の付着力を持ち、シェル粒子はこれらの粒子よりも大きな付着力を持つ傾向が見られた。また数は少ないが実大気中から捕集された有機物に富んだ海洋起源エアロゾルは標準単糖類に近い大きさの付着力を持つことが示唆された。したがって、海洋起源エアロゾルの付着性を評価する際には、単糖類をはじめとした海洋起源有機物の付着性を考慮する必要がある。