日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW23] 同位体水文学2021

2021年6月6日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.12 (Zoom会場12)

コンビーナ:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、大沢 信二(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設(別府))、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)、座長:浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)、森川 徳敏(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

11:25 〜 11:40

[AHW23-09] 大分平野における温泉水中のアンモニア態窒素安定同位体比組成

*中村 高志1、網田 和宏2、大沢 信二3 (1.山梨大学大学院・国際流域環境研究センター、2.秋田大学大学院・工学研究センター、3.京都大学大学院・地球熱学研究施設(別府))

キーワード:大分平野、温泉水、アンモニア態窒素安定同位体比

温泉水中に含まれる溶存性アンモニア態窒素の安定同位体組成を把握するために、大分県大分市内において塩化物イオン濃度が異なる温泉(泉源)の温泉水、ならびに、対象サンプルとして深井戸の地下水や湧水を採取し、主要溶存化学成分の分析に加え、アンモニア態窒素安定同位体比をアンモニア揮散法(Cao et al., 2018) により測定した。
温泉水中の塩化物イオン濃度は2506 ~ 19395mg/Lの範囲で検出され、アンモニア態窒素濃度は14.4 ~ 53.9mg/Lの範囲で検出された。アンモニア態窒素濃度は塩化物イオン濃度が高い温泉ほど高くなる傾向 (R2=0.49) が認められ、深部における窒素負荷の可能性が示された。アンモニア態窒素安定同位体比値は-2.6 ~ +2.0%0の範囲を示し、対象サンプルである深井戸の地下水中については+5.5%0と高い値を示した。アンモニア態窒素安定同位体比値は、塩化物イオン濃度が高い(>13000mg/L) のサンプルで低く、塩化物イオン濃度が低いサンプルほど高い傾向を示し、最も高い窒素安定同位体比値を示した深井戸地下水のアンモニア態窒素がこの傾向の端に位置していた。これらのことから、温泉水中のアンモニア態窒素は深部で負荷される窒素と、地表付近から供給される窒素の混合があることが示された。

謝辞: 本研究は科研費基盤研究B (19H0199, 代表: 平島崇男) の助成を受けて実施した。

参考文献: Thi Thuy Hai Cao et al. (2018) Effect of dissolved organic nitrogen contamination on δ15N-NH4 determination in water samples by modification of the diffusion method with gas‐phase trapping. Rapid Communications in Mass Spectrometry. DOI: 10.1002/rcm.8091