17:15 〜 18:30
[AHW24-P04] 極小微動アレイ探査による地下水位測定手法の検討
キーワード:微動探査、地下水、繰り返し測定
1.はじめに
地下水資源を保全・評価するためには、資源の全体量とその変化量を、面的に評価し、継続的にモニタリングすることが不可欠である。地下水資源の場合、各種の地質調査に基づく帯水層構造の把握と、観測井を用いた地下水位のモニタリングが行われるが、最適な地点や密度で観測井を設置できない場合も多く、井戸を用いない帯水層構造と地下水位の測定手法の開発が求められている。
物理探査手法の1つに、常時微動と呼ばれる地面の微小な揺れを、地表に設置した微動計で観測することでS波速度を測定する「微動探査」という手法があり、探査地点における鉛直一次元方向のS波速度構造が求められる。S波速度は地盤の物性値により決定されることから、S波速度の鉛直分布から帯水層や基盤の分布などの地質構造を把握することが出来る。発表者らのグループは、これまで神奈川県西部足柄平野の帯水層構造(宮下・先名,2014)や、大分県別府市における別府温泉の帯水層構造等を、微動アレイ探査によって明らかにする(宮下,2018)など、微動アレイ探査を用いた水文調査を行ってきた。
一方、地盤は土や岩石などの固相部分と、地下水や土壌水などの液相部分、地表付近の不飽和帯に存在する気相部分の三相から構成されている。このため、地盤中の液相部分の割合(≒地下水位)が変化すれば、S波速度に変化が生ずることが予想される。高橋(2019)は、岩石のS波速度と飽和度の関係についてのレビューとモデル解析を行った。文献による過去の実験から、砂岩と頁岩の場合、S波速度は水飽和度の増加とともに減少し、石灰岩は、水飽和によるS波速度に変化はなく、花崗岩は水飽和度の増加とともにS波速度が増加する傾向を示していた。一方、未固結堆積層における実験結果は得られなかったが、固結層と比較し、間隙率の大きさから、水分量の変動がS波速度影響を与えている可能性が考えられる。
そこで、本研究では、同一地点で地下水位の測定と極小アレイ微動探査を同時に繰り返し行うことで、地下水位の変化とS波速度分布との関係について検討を行った。
2.方法
定点における繰り返し微動探査は、足柄平野上流部扇状地地帯に位置する二地点(H54,R50)において、2014年6月~11月に9回、2019年8月と2020年1月に各1回、計11回極小アレイ微動探査を行った。なお、2014年における探査は、中心及び中心から距離0.6mに3台等間隔に配置した計4台で実施した。一方、2019年度における探査は、上記4台による極小アレイ配置に追加し、中心から距離5mに2台の微動計を配置する異形アレイ配置を追加して、より深部までの探査を試みた。
また、これらの地点に併設された浅層地下水観測井において、地下水位の連続測定を行った。
計測に用いた微動計は、2014年における探査は白山工業製微動観測キットJU210、2019年度における探査は同微動観測装置JU410を用い、サンプリング間隔を200Hzで行った。また微動探査結果の解析は、先名ら(2014)の方法に従っておこなった。
3.結果及び考察
11回の微動探査の結果、H54地点では最大探査深度が68.9m、R50地点では最大探査深度は86.9mとなり、最大深度におけるS波速度はH54地点で965m/s、R50地点で940m/sとほぼ同程度のS波速度を示した。また、微動探査時の地下水位はH54地点で-12.73~-15.30m、R50地点で-7.24~-8.41mまで変化し、各水位変動幅は2.57m及び1.18mであった。
地下水面近傍におけるS波速度は、H54地点で370~880m/s、R50地点で230~370m/sであり、2地点において、S波速度の速度帯が異なっていたほか、同一地点においても、探査時期の違いによって、S波速度が大きく異なる結果となった。また、地下水面近傍を挟んで、上下でS波速度が変化している探査が、H54地点では11探査中8探査、R50地点では11探査中10探査で見られた。
個々の微動探査ごとに同一深度のS波速度が大きく変化する要因としては、微動探査ごとの微動計の設置誤差や解析における波形読み取り誤差など、探査及び解析上の誤差のほか、地温変化や不飽和帯の土壌水分量の違いなどの要因が考えられる。今後はこれらの誤差要因について検討するほか、他の地質や気候条件における検討を行う。
地下水資源を保全・評価するためには、資源の全体量とその変化量を、面的に評価し、継続的にモニタリングすることが不可欠である。地下水資源の場合、各種の地質調査に基づく帯水層構造の把握と、観測井を用いた地下水位のモニタリングが行われるが、最適な地点や密度で観測井を設置できない場合も多く、井戸を用いない帯水層構造と地下水位の測定手法の開発が求められている。
物理探査手法の1つに、常時微動と呼ばれる地面の微小な揺れを、地表に設置した微動計で観測することでS波速度を測定する「微動探査」という手法があり、探査地点における鉛直一次元方向のS波速度構造が求められる。S波速度は地盤の物性値により決定されることから、S波速度の鉛直分布から帯水層や基盤の分布などの地質構造を把握することが出来る。発表者らのグループは、これまで神奈川県西部足柄平野の帯水層構造(宮下・先名,2014)や、大分県別府市における別府温泉の帯水層構造等を、微動アレイ探査によって明らかにする(宮下,2018)など、微動アレイ探査を用いた水文調査を行ってきた。
一方、地盤は土や岩石などの固相部分と、地下水や土壌水などの液相部分、地表付近の不飽和帯に存在する気相部分の三相から構成されている。このため、地盤中の液相部分の割合(≒地下水位)が変化すれば、S波速度に変化が生ずることが予想される。高橋(2019)は、岩石のS波速度と飽和度の関係についてのレビューとモデル解析を行った。文献による過去の実験から、砂岩と頁岩の場合、S波速度は水飽和度の増加とともに減少し、石灰岩は、水飽和によるS波速度に変化はなく、花崗岩は水飽和度の増加とともにS波速度が増加する傾向を示していた。一方、未固結堆積層における実験結果は得られなかったが、固結層と比較し、間隙率の大きさから、水分量の変動がS波速度影響を与えている可能性が考えられる。
そこで、本研究では、同一地点で地下水位の測定と極小アレイ微動探査を同時に繰り返し行うことで、地下水位の変化とS波速度分布との関係について検討を行った。
2.方法
定点における繰り返し微動探査は、足柄平野上流部扇状地地帯に位置する二地点(H54,R50)において、2014年6月~11月に9回、2019年8月と2020年1月に各1回、計11回極小アレイ微動探査を行った。なお、2014年における探査は、中心及び中心から距離0.6mに3台等間隔に配置した計4台で実施した。一方、2019年度における探査は、上記4台による極小アレイ配置に追加し、中心から距離5mに2台の微動計を配置する異形アレイ配置を追加して、より深部までの探査を試みた。
また、これらの地点に併設された浅層地下水観測井において、地下水位の連続測定を行った。
計測に用いた微動計は、2014年における探査は白山工業製微動観測キットJU210、2019年度における探査は同微動観測装置JU410を用い、サンプリング間隔を200Hzで行った。また微動探査結果の解析は、先名ら(2014)の方法に従っておこなった。
3.結果及び考察
11回の微動探査の結果、H54地点では最大探査深度が68.9m、R50地点では最大探査深度は86.9mとなり、最大深度におけるS波速度はH54地点で965m/s、R50地点で940m/sとほぼ同程度のS波速度を示した。また、微動探査時の地下水位はH54地点で-12.73~-15.30m、R50地点で-7.24~-8.41mまで変化し、各水位変動幅は2.57m及び1.18mであった。
地下水面近傍におけるS波速度は、H54地点で370~880m/s、R50地点で230~370m/sであり、2地点において、S波速度の速度帯が異なっていたほか、同一地点においても、探査時期の違いによって、S波速度が大きく異なる結果となった。また、地下水面近傍を挟んで、上下でS波速度が変化している探査が、H54地点では11探査中8探査、R50地点では11探査中10探査で見られた。
個々の微動探査ごとに同一深度のS波速度が大きく変化する要因としては、微動探査ごとの微動計の設置誤差や解析における波形読み取り誤差など、探査及び解析上の誤差のほか、地温変化や不飽和帯の土壌水分量の違いなどの要因が考えられる。今後はこれらの誤差要因について検討するほか、他の地質や気候条件における検討を行う。