日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS10] 陸域海洋相互作用ー惑星スケールの物質輸送

2021年6月3日(木) 09:00 〜 10:30 Ch.11 (Zoom会場11)

コンビーナ:山敷 庸亮(京都大学大学院総合生存学館)、升本 順夫(東京大学大学院理学系研究科)、佐々木 貴教(京都大学 大学院理学研究科 宇宙物理学教室)、Behera Swadhin(Climate Variation Predictability and Applicability Research Group, Application Laboratory, JAMSTEC, 3173-25 Showa-machi, Yokohama 236-0001)、座長:升本 順夫(東京大学大学院理学系研究科)、Swadhin Behera(Climate Variation Predictability and Applicability Research Group, Application Laboratory, JAMSTEC, 3173-25 Showa-machi, Yokohama 236-0001)

10:15 〜 10:30

[AOS10-06] 火星で海と暮らす長期滞在施設

★招待講演

*大野 琢也1 (1.鹿島建設株式会社)

キーワード:海洋、宇宙建築、回転による人工重力

火星での長期滞在のために、人類には欠かせない条件がいくつかある。それは、重力という環境。水、土、空気といった物質。そして、放射線や隕石の遮蔽である。さらにそれらを可視化できれば、精神安定をもたらし、人々が安心して暮らせる空間を実現できると考える。

低重力下では成長、あるいは身体の維持が難しく、地球に自力で立てない体になる恐れがある。これは人類の分断を促進し、いずれ紛争の原因につながることが懸念される。ここで、重力の課題に対しては、回転による遠心力を利用した人工重力を提案する。火星独自の重力に加え、遠心力を合力し、地球環境近似の重力環境を実現する。物質の課題に対して、水や二酸化炭素は火星に大量にあるといわれるが、窒素などは大気中に微量存在するのみと考えられるため、火星の一部分を区画して、その内部のみを住環境とすることが初期には現実的であると考える。遮蔽に関しては、上記特定された区画部分の隔壁の構成での対応を検討したい。

ここで提案する火星都市(マーズ・グラス・シティ)は火星地面から高さ方向200mまでの回転施設を内包する袴部分、上部天蓋部、地下部からなる。居住区は火星地面に直接設置する部分と、回転式の人工重力エリア、天蓋の振れ止めを兼ねた超高層部分に分かれる。人工重力を発生させるために回転させるのは、袴部分にある居住区のみとなる。天蓋の頂点にはヘリポートを設置し、他の施設との空の交通のハブとする。この人工重力施設に水をたたえることによって、側壁に沿って水面がせりあがる。これによって、この施設では視覚的にどこからでも豊かな水が見える。ここには十分な水がある、視覚的にそれが見える。それによって安心感は倍増するだろう。

ドーム内環境での内部気圧は1気圧とする。火星では大気圧が、地球の約1/100と希薄であるため、内外気圧差ほぼ1気圧。これは10t/㎡にもなるため、ドームを押さえ込むための強大なテンションが必要となる。地面と水平方向はテンションリングとして完結させる。地面に向かうワイヤーについては地中に深く潜らせて、施設の地下部分で連結し、地面に反力をとる。

足場なしでの施工とするため、二重ドームとしている。外部側は主として、外部からの小型の飛来物程度には耐える構造とし、内部側は放射線遮蔽のため、高吸水性ポリマーに水分を含ませたものを配置することを考える。このような施設を人類の宇宙進出に合わせて、月面や火星面、小惑星などに建設していくことによって、長期間居住の快適性を保証できるものとなると考える。