11:45 〜 12:00
[AOS15-11] 瀬戸内海播磨灘に出現するカイアシ類の種組成と生物量について
キーワード:瀬戸内海、動物プランクトン、カイアシ類、季節変動
瀬戸内海では1980年代後半から漁獲量の減少が続いているが、その一要因として、貧栄養塩化に伴う一次生産者の減少、これに続き魚類の餌料生物である動物プランクトンも減少している可能性が考えられている。しかし、瀬戸内海において動物プランクトンの詳細な調査観測は2000年代以降行われておらず、漁獲量の減少原因を解明する上で動物プランクトンに関する知見が決定的に不足しているのが現状である。本研究では海洋の二次生産者として重要な役割を担っているカイアシ類について、現在の種組成および生物量を明らかにする目的で、東部瀬戸内海の播磨灘において周年を通した観測を実施した。
播磨灘に一定点(Stn. NH)を設け、2019年4月から2020年3月までは0 m層および10 m層、2020年4月から12月には20 m層を追加して毎月サンプリングを行った。各水深でバンドーン型採水器により10 Lを採取し、目合い100 µmのプランクトンネットによりカイアシ類を濃縮後、倒立顕微鏡下で成体は属レベルまで同定し、ノープリウス幼生は総数を計数することで個体密度(inds./m3)を算出した。同様に頭胸長についても測定を行い、生物量(mgC/m3)に換算した。また同採水層の試水について蛍光法によりChl a濃度の測定も行った。
観測の結果、カイアシ類の出現種としてはParacalanus属、Oithona属、Microsetella属が優占する傾向にあった。総個体密度は0.02~6.28×104 inds./m3、生物量は0.05~30.9 mgC/m3の範囲にあり、いずれも夏・秋期は冬・春期と比較して2倍から10倍程度高い明瞭な季節変動が観察された。またカイアシ類の個体密度および生物量は、Chl a濃度(0.36~9.1 μg/L)と類似する季節変動を示したことから、カイアシ類の出現動態は餌生物の量に依存していることが示唆された。1970年代末~1980年代当初(Uye et al., 1986)および1990年代前半(Uye and Shimazu, 1997)に実施されたカイアシ類の観測結果と本研究の観測結果を比較すると、カイアシ類の総個体密度は同程度であったが、生物量は低下傾向にあった。またParacalanus属は現在も周年を通して優占種として出現していたが、比較的大型種であるCalanus属の出現頻度が大きく減少していた。以上の結果から、現在の播磨灘におけるカイアシ類の出現傾向として、個体密度は減少していないものの、大型種が減少したことで生物量として減少傾向にあると考えられる。
Uye S, Kuwata H and Endo T (1987) J Oceanogr Soc Japan, 42, 421-434
Uye S and Shimazu T (1997) JO, 53, 529-538
播磨灘に一定点(Stn. NH)を設け、2019年4月から2020年3月までは0 m層および10 m層、2020年4月から12月には20 m層を追加して毎月サンプリングを行った。各水深でバンドーン型採水器により10 Lを採取し、目合い100 µmのプランクトンネットによりカイアシ類を濃縮後、倒立顕微鏡下で成体は属レベルまで同定し、ノープリウス幼生は総数を計数することで個体密度(inds./m3)を算出した。同様に頭胸長についても測定を行い、生物量(mgC/m3)に換算した。また同採水層の試水について蛍光法によりChl a濃度の測定も行った。
観測の結果、カイアシ類の出現種としてはParacalanus属、Oithona属、Microsetella属が優占する傾向にあった。総個体密度は0.02~6.28×104 inds./m3、生物量は0.05~30.9 mgC/m3の範囲にあり、いずれも夏・秋期は冬・春期と比較して2倍から10倍程度高い明瞭な季節変動が観察された。またカイアシ類の個体密度および生物量は、Chl a濃度(0.36~9.1 μg/L)と類似する季節変動を示したことから、カイアシ類の出現動態は餌生物の量に依存していることが示唆された。1970年代末~1980年代当初(Uye et al., 1986)および1990年代前半(Uye and Shimazu, 1997)に実施されたカイアシ類の観測結果と本研究の観測結果を比較すると、カイアシ類の総個体密度は同程度であったが、生物量は低下傾向にあった。またParacalanus属は現在も周年を通して優占種として出現していたが、比較的大型種であるCalanus属の出現頻度が大きく減少していた。以上の結果から、現在の播磨灘におけるカイアシ類の出現傾向として、個体密度は減少していないものの、大型種が減少したことで生物量として減少傾向にあると考えられる。
Uye S, Kuwata H and Endo T (1987) J Oceanogr Soc Japan, 42, 421-434
Uye S and Shimazu T (1997) JO, 53, 529-538