日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS16] 全球・海盆規模海洋観測システムの現状、研究成果と将来展望

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.06

コンビーナ:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、増田 周平(海洋研究開発機構)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、藤木 徹一(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[AOS16-P05] 深海用フロート観測データに現れる圧力依存性を持つ塩分バイアスの原因について

*小林 大洋1 (1.海洋研究開発機構)

キーワード:深海アルゴ、塩分計測、CTDセンサ

深海用フロートで計測された塩分には、ほぼ例外なく、深層ほど低塩となるような負の圧力依存性を持つ(低塩)バイアスが確認される。この負の圧力依存性は、CTDセンサの電気伝導度計測セルの変形に起因する偏差をキャンセルするためのパラメータCPcorをメーカー設定値(-9.57e-8)よりも小さくすることで、(表面的には)解決できる。しかし、この値は電気伝導度計測セルの水圧下における弾性変形に基づいて(単円筒を仮定して)理論的に得られた値であるため、観測に基づく最適値(-11~-13e-8)が理論値よりも小さくなる理由、さらには根本原因がCPcorのズレに求められるのか、不明であった。

しかし、実際の深海用フロートに搭載のCTDセンサの電気伝導度計測セルは、ガラス製の計測セルの周囲をポリウレタン製の保護材が覆う、二重円筒構造を示している。そこで、実際の計測セルを模した二重円筒セルモデルを用いて、水圧下における計測セルの変形を求めた。その結果、内側のガラスセルは外側のポリウレタンセルから水圧より強い応力を受けて、単円筒を想定した場合よりも半径方向に大きく変形する。このような非等方的な変形の結果、CPcorは現行値よりも小さくなることが分かった。この他、このモデルは観測で明らかになっている塩分バイアスの特徴を説明することができる。また、このモデルは、電気伝導度の計測セルの保護ジャケットの素材を「エラストマー」に変更することにより、塩分の計測精度を大きく向上できることを示唆する。水圧下における保護ジャケットの変形がガラスセルの変形に影響しないために、ガラス製単円筒セルを仮定したCPcorの値が有効になること、また保護ジャケットの形状・品質のばらつきに伴うCPcorの変化が小さいためである。