日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS19] 海洋物理学一般

2021年6月5日(土) 10:45 〜 12:15 Ch.10 (Zoom会場10)

コンビーナ:川合 義美(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門 海洋観測研究センター)、北出 裕二郎(東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科)、座長:川合 義美(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門 海洋観測研究センター)

11:15 〜 11:30

[AOS19-03] La Niña現象時の冬季大気大循環場:1年目と2年目の比較

*西平 楽1、杉本 周作1 (1.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:複数年ラニーニャ、テレコネクション、寒気質量

ENSOに伴う海面水温分布は、北太平洋中央部から北米大陸にかけてのPNAパターンのような大気テレコネクションを励起し、全球の気候に影響を及ぼすことが知られている。近年の研究によると、El NiñoとLa Niñaには時間的な非対称性があることが報告されている、すなわち、El Niñoに比べてLa Niñaの方が複数年にわたって持続する傾向がある。それゆえ、La Niñaの発生年とその翌年以降とでは異なる大気場が形成される可能性が示唆される。しかしながら、その理解は十分には得られていない。そこで本研究では、1950年以降の観測データと再解析データを用いて統計解析を行い、線形傾圧モデル(LBM)による数値実験を実施することで、La Niña期の冬季大気大循環場の特徴を明らかにすることを目指した。

まず、観測データと再解析データを用いて合成図解析を行った。その結果、La Niñaの1年目では西部赤道太平洋から南シナ海にかけて活発化した対流活動が同定され、さらに日本周辺に低気圧偏差が分布することが分かった。そして気圧分布の観点から、日本周辺からベーリング海を介して北米へ続く波列が見出された。この気圧パターンは既存の大気テレコネクションパターンとは一致しておらず、La Niñaの1年目に出現する固有のパターンであることを指摘した。この時の地上気温を解析すると、日本付近では従来の指摘通り、有意な低温偏差が得られた。そこで、寒気質量分布を調べた結果、大陸から日本への大量の寒気流入が同定され、これが日本に寒冬をもたらす要因であると指摘した。つづいて、La Niñaの2年目について同様の解析を行った。その結果、西部赤道太平洋での対流活動は1年目ほど活発ではないことが分かった。そして大規模気圧分布に着目すると、北太平洋中央部から北米大陸への大気テレコネクション、すなわち負のPNAパターンが同定された。なお、La Niñaの2年目でも日本付近で低温偏差が観察されたが、1年目と比べるとその振幅は小さく、有意な値ではなかった。

本研究では、La Niña現象は、1年目と2年目の冬で異なる大規模大気構造の形成に寄与することが分かった。そして、これらの大気構造が赤道の対流活発域の差異に起因するかを調べるために、LBMによる熱源感度実験を行った結果、再解析データに基づく合成図解析の結果を支持するような結論を得ることができた。