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[AOS19-P01] 熱帯北西太平洋における夏季対流活動の長期変動と大気大循環への影響
キーワード:PJパターン、南シナ海
北半球夏季における熱帯北西太平洋の対流活動は東アジア周辺の大気循環に影響を及ぼすことが知られている。Nitta(1987)はフィリピン海周辺の対流活動が日本周辺の気圧場に影響することを示した。このテレコネクションパターンはPacific-Japan pattern (以下、PJ pattern)と呼ばれている。一方で、南シナ海における対流活動の、テレコネクションを含めた大気循環場への影響に関する研究は少ない。そこで本研究は、南シナ海における対流場に着目することで、日本周辺の大気循環場変動についての新たな知見を得ることを目的とする。使用した主なデータは、NOAA Interpolated OLR、ERA5 850hPaジオポテンシャル、AMeDAS地上気温である。いずれも1979年から2018年の月平均値を解析に用いた。本研究では、南シナ海(110°E-120°E、7.5°N-22.5°N)での領域平均OLRの変動が、1標準偏差以上の年を南シナ海対流不活発年、-1標準偏差以下の年を対流活発年と分類し、合成図解析を行った。また、PJ index をWakabayashi and Kawamura (2004)に基づいて算出し、南シナ海OLR変動と同様の合成図解析を行った。はじめに、OLRの分散の空間分布および変動の様子を調べた。その結果、特に7月の南シナ海周辺で、対流活動および変動の振幅の双方が近年ほど強まる傾向にあることが示された。そこで、以降の解析では7月を対象とした。相関解析の結果、7月の南シナ海OLR変動とPJ indexの相関係数は0.44であり、必ずしも一致することを示す数値ではなかった。つづいて、対流活発年・不活発年でのOLRの合成図解析を行った結果、南シナ海OLRの活動中心は南シナ海上に存在し、フィリピン海上での信号は抽出されなかった。これらの結果から、南シナ海の対流活動は局所的に変動することが示唆される。本研究では、南シナ海における対流活動の、大気循環場との関係およびその特徴をPJ patternと比較した。合成図解析の結果、南シナ海の対流活動に伴い、対流圏下層には日本上空を覆う南北双極子型の気圧偏差が現れた。これはPJ patternと比べて大気大循環パターンが西方に偏位していることを示す。また、PJ patternでは南西日本を境とした気温偏差を形成する一方、南シナ海OLR変動は、南西日本を含めた日本の広範囲に影響することが示された。以上の統計解析は、南シナ海における対流活動が既存のPJ patternとは異なる影響を与える可能性を示唆するものである。本講演では、南シナ海対流活動を模したLBM実験の結果とともに、CMIP6データの解析を通じた将来気候下での南シナ海対流活動についても紹介する。