日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG04] 地球史解読:冥王代から現代まで

2021年6月4日(金) 09:00 〜 10:30 Ch.26 (Zoom会場26)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、座長:吉田 聡(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)

09:45 〜 10:00

[BCG04-04] アメリカ・カリフォルニア州北部のセノマニアン/チューロニアン境界堆積岩の植物バイオマーカー分析による陸域古植生変動の復元

*池田 雅志1、沢田 健2、高嶋 礼詩3、西 弘嗣4 (1.北海道大学理学院自然史科学専攻、2.北海道大学理学研究院地球惑星科学部門、3.東北大学学術資源研究公開センター 東北大学総合学術博物館、4.福井県立大学 恐竜学研究所)


キーワード:古植生、バイオマーカー、Great Valley Sequence、C/T境界、白亜紀

[はじめに] 白亜紀はスーパープルームの活動による温室効果ガスの上昇によって超温室期であったといわれている。その中でも、白亜紀中期には大規模火成岩岩石区(LIPs)の形成に起因する海洋無酸素事変(OAE)が複数回発生したことが知られている。海洋において全球的な環境擾乱イベントが起こったことが報告されている一方、OAE期における陸上植生の変動についての報告は少ない(e.g. Heimhofer et al., 2018)。本研究では、Cenomanian-Turonian境界期を記録した堆積岩試料から、バイオマーカー分析を行い、北アメリカ大陸西縁におけるOAE2期の陸域古植生復元を行った。
[試料と方法] 本研究では、アメリカ・カリフォルニア州北部North Fork Cottonwood Creekに分布するGreat Valley Sequence (GVS), Budden Canyon FormationのCenomanian-Turonian境界期の堆積岩に含まれる有機物から、環境変動に対する陸上植物の植生変動を調べた。Cenomanian-Turonian境界では環境擾乱イベントであるOAE2が発生したことが知られている。GVSは北アメリカ大陸縁辺域に堆積した堆積物で、本調査地域ではOAE2層準は有機物に富んだ陸源性堆積物によって構成されていた(Fernando et al., 2011: Takashima et al., 2011)。試料は数メートル間隔で泥岩のみを使用した。OAE2の各区分(1st build-up, trough, 2nd build-up, Plateau, Recovery)は木片のδ13C値から決定し、バイオマーカー分析はGC-MSを用いて分析を行った。
[結果と考察]本試料において、ステランおよびホパンの結果より、陸からの堆積物の寄与が高く、また比較的未熟成な試料(ビトリナイト反射率で約0.4%:褐炭~亜瀝青炭)であることを確認した。高等植物の植生指標として芳香族テルペノイドによる被子/裸子植生比 (ar-AGI)とレテン/カダレン比による高等植物指標(Higher plant parameter; HPP)、高等植物由来の芳香族テルぺノイドに対する菌類バイオマーカーとして知られるPeryleneの比をとることで、陸域植生に対する菌類の寄与の程度を示す指標として用いた。結果として、ar-AGIは層準を通して徐々に増大し、環境擾乱期にあたる1st build-upと2nd build-upにおいて一時的に減少傾向を示した。またRecovery以降では一転して低い値をとった。菌類指標も同時期に減衰し、HPPは逆にRecovery以降に急増した。このことから本調査地域では環境擾乱は被子植物に不利に働き裸子植物を一時的に増大させ、またRecovery以降には針葉樹の拡大によって大きく植生が移り変わったと考えられる。