17:15 〜 18:30
[BCG04-P04] 西オーストラリア,ピルバラクラトン,クリバービル層における縞状鉄鉱層の観察・分析結果
★招待講演
キーワード:縞状鉄鉱層、太古代
【研究背景】32-30億年前の地層が分布する西オーストラリア,ピルバラ海岸グリーンストーン帯のうち,クリバービル地域は広域左横ずれ運動によるプルアパート構造により,周囲よりも変成度が低く(下部緑色片岩相),グリーンストーン帯形成当時の地層がよく保存されている(Kiyokawa et al., 2002,Kiyokawa et al. 2012, Kiyokawa et al., 2019).ここでは,下位からリーガル層,デキソンアイランド(DX)層,クリバービル(CL)層の順に整合的に堆積している(Kiyokawa et al.2012,2014).その中でも,クリバービル層は31億年前に堆積した中太古代を代表する縞状鉄鉱層(BIF)を含む地層である.
太古代縞状鉄鉱層は,大酸化事変以前に形成しており,酸素のない時代にどのように酸化した鉄が沈殿して地層に残されてきたか様々な議論があり,当時の環境推定するための鍵となる地層の一つである(eg. Holland 2006).DX、CL層では2006年と2011年に陸上掘削が行われており,新鮮なコア試料(DX, CL1, CL2, CL3)を取得している.本研究では,特にBIFを含むCL3コアについて,詳細な記載および偏光顕微鏡やFE-SEMによる観察により,BIFと上下の地層との岩相/層序を明らかにし,SEM-EDSやXRF,ICP-MS分析から,それぞれの岩石が持つ鉱物や粒子組織・岩相変化を観察し,化学成分の変化を明らかにすることより,BIF堆積当時の海底環境に関する考察を行っている.
【手法】半割コアについて観察・記載を行い,岩相層序・変化に着目した柱状図を作成した.197サンプルの薄片について偏光顕微鏡による観察,18サンプルに関して,SEM観察とEDS分析を行った.また,15サンプルについて,XRFとICP-MSを行い,主要元素・微量元素の含有量を測定し,Al/(Al+Fe+Mn+Na+K+Ca)-Fe/TiとREEパターンのグラフを作成した
【岩相/層序】CL層を取得しているCL3コアは,黒色頁岩部層上部とBIF部層下部が識別できた.黒色頁岩部層は,均質な黒色頁岩層と斜交葉理を含む黒色シルト岩層からなる.黒色頁岩層は,石英,緑泥石,白雲母からなり,細粒の黄鉄鉱により構成される.黒色シルト岩層は50~100μm細粒石英・長石粒子が含まれる.BIF部層は下記の5つの岩相;1) 灰色粘土層,2)白色チャート,3)緑色頁岩,4)マグネタイト層,5)黒色頁岩層,を識別した.これらの岩相分布から層状チャート・粘土/緑色頁岩ユニット(SG unit),層状チャート・マグネタイト/緑色頁岩ユニット(MG unit),層状チャート・粘土層/黒色頁岩ユニット(SB unit)の三つに分類した.下位からSG1,MG1,SG2,MG2,SG3,SB unitの順に重なる.
SG unitは10cm程の層状チャート・粘土層と緑色頁岩層が互層している.また,層状チャート・粘土層は,灰色の粘土質ラミナと白色の石英質ラミナの1mm~1cmの互層になっている.細粒シデライトラミナは石英粒を核に持つものもあるが,ほとんどが続成作用により堆積当時の構造を失っている.一方,石英質ラミナ中では,自形の結晶を持つシデライトが発達している.緑色頁岩層は,緑泥石や石英,シデライトによって構成されるが,石英粒は見られない.
MG unitは自形のマグネタイト層が顕著に見られ,白色チャート層と約10cmの互層を形成する.特にマグネタイト層は,SG unitの灰色粘土層中にマグネタイト結晶が発達した組織を持つ.チャートはのちに形成したシデライト結晶が顕著に見られる.
SBユニットの層状チャート・粘土層は白色の石英質ラミナと灰色粘土質ラミナが互層している.特に薄いラミナ(0.1~1mm)が顕著に見られ,一部バイオマットのような波打ったラミナが見られる. 黒色頁岩中には石英粒が見られる.
【化学分析】堆積物の熱水の寄与について調べた.Al/(Al+Fe+Mn+Na+K+Ca)-Fe/Tiグラフは,負の相関を示した.そして,黒色頁岩,層状チャート・粘土層(SGユニット)と緑色頁岩,層状チャート・粘土層(SBユニット),層状チャート・マグネタイト層の順に多くなる.PAASの存在比で規格化したREEパターンからは,すべての岩石でEuが正異常を示し,HREEが多く含まれる傾向にある.
【まとめ】1)岩相は有機物に富む黒色頁岩層から,有機物を含まない層状チャート・緑色頁岩層に変化して,シデライトを多く含む鉄鉱層に移り変わる.特にマグネタイトを含む層は,下位の灰色粘土層中にマグネタイト結晶が成長し,形成したものであると思われる.
2)全ての地層でEuの正異常があり,基本的に熱水起源物質が含まれており,特にマグネタイト層はその寄与が大きい可能性が高いと考えられる.
3)本層は,陸源物質が届かない遠洋域の堆積場で,太古代における海洋中へのFeを含む熱水噴出法の記録が残っている可能性がある.
太古代縞状鉄鉱層は,大酸化事変以前に形成しており,酸素のない時代にどのように酸化した鉄が沈殿して地層に残されてきたか様々な議論があり,当時の環境推定するための鍵となる地層の一つである(eg. Holland 2006).DX、CL層では2006年と2011年に陸上掘削が行われており,新鮮なコア試料(DX, CL1, CL2, CL3)を取得している.本研究では,特にBIFを含むCL3コアについて,詳細な記載および偏光顕微鏡やFE-SEMによる観察により,BIFと上下の地層との岩相/層序を明らかにし,SEM-EDSやXRF,ICP-MS分析から,それぞれの岩石が持つ鉱物や粒子組織・岩相変化を観察し,化学成分の変化を明らかにすることより,BIF堆積当時の海底環境に関する考察を行っている.
【手法】半割コアについて観察・記載を行い,岩相層序・変化に着目した柱状図を作成した.197サンプルの薄片について偏光顕微鏡による観察,18サンプルに関して,SEM観察とEDS分析を行った.また,15サンプルについて,XRFとICP-MSを行い,主要元素・微量元素の含有量を測定し,Al/(Al+Fe+Mn+Na+K+Ca)-Fe/TiとREEパターンのグラフを作成した
【岩相/層序】CL層を取得しているCL3コアは,黒色頁岩部層上部とBIF部層下部が識別できた.黒色頁岩部層は,均質な黒色頁岩層と斜交葉理を含む黒色シルト岩層からなる.黒色頁岩層は,石英,緑泥石,白雲母からなり,細粒の黄鉄鉱により構成される.黒色シルト岩層は50~100μm細粒石英・長石粒子が含まれる.BIF部層は下記の5つの岩相;1) 灰色粘土層,2)白色チャート,3)緑色頁岩,4)マグネタイト層,5)黒色頁岩層,を識別した.これらの岩相分布から層状チャート・粘土/緑色頁岩ユニット(SG unit),層状チャート・マグネタイト/緑色頁岩ユニット(MG unit),層状チャート・粘土層/黒色頁岩ユニット(SB unit)の三つに分類した.下位からSG1,MG1,SG2,MG2,SG3,SB unitの順に重なる.
SG unitは10cm程の層状チャート・粘土層と緑色頁岩層が互層している.また,層状チャート・粘土層は,灰色の粘土質ラミナと白色の石英質ラミナの1mm~1cmの互層になっている.細粒シデライトラミナは石英粒を核に持つものもあるが,ほとんどが続成作用により堆積当時の構造を失っている.一方,石英質ラミナ中では,自形の結晶を持つシデライトが発達している.緑色頁岩層は,緑泥石や石英,シデライトによって構成されるが,石英粒は見られない.
MG unitは自形のマグネタイト層が顕著に見られ,白色チャート層と約10cmの互層を形成する.特にマグネタイト層は,SG unitの灰色粘土層中にマグネタイト結晶が発達した組織を持つ.チャートはのちに形成したシデライト結晶が顕著に見られる.
SBユニットの層状チャート・粘土層は白色の石英質ラミナと灰色粘土質ラミナが互層している.特に薄いラミナ(0.1~1mm)が顕著に見られ,一部バイオマットのような波打ったラミナが見られる. 黒色頁岩中には石英粒が見られる.
【化学分析】堆積物の熱水の寄与について調べた.Al/(Al+Fe+Mn+Na+K+Ca)-Fe/Tiグラフは,負の相関を示した.そして,黒色頁岩,層状チャート・粘土層(SGユニット)と緑色頁岩,層状チャート・粘土層(SBユニット),層状チャート・マグネタイト層の順に多くなる.PAASの存在比で規格化したREEパターンからは,すべての岩石でEuが正異常を示し,HREEが多く含まれる傾向にある.
【まとめ】1)岩相は有機物に富む黒色頁岩層から,有機物を含まない層状チャート・緑色頁岩層に変化して,シデライトを多く含む鉄鉱層に移り変わる.特にマグネタイトを含む層は,下位の灰色粘土層中にマグネタイト結晶が成長し,形成したものであると思われる.
2)全ての地層でEuの正異常があり,基本的に熱水起源物質が含まれており,特にマグネタイト層はその寄与が大きい可能性が高いと考えられる.
3)本層は,陸源物質が届かない遠洋域の堆積場で,太古代における海洋中へのFeを含む熱水噴出法の記録が残っている可能性がある.