17:15 〜 18:30
[BCG04-P11] 日本海北部IODP U1422地点堆積物中の砂礫粒子から見た過去65万年間の海氷拡大史の復元
東アジア冬モンスーン(EAWM)はシベリア高気圧とアリューシャン低気圧の気圧差によって生じる季節風である。EAWM はロシア沿海州の沿岸表層水を冷やし、海氷を形成させる。そして、冷却された表層水および海氷生成に伴う高塩分水の日本海中深層への沈み込みによって日本海固有水(JSPW)を生成し、日本海の中深層を換気(ventilation)する。このように EAWM は日本海の古環境や海洋循環に影響を与えるが、その強度の変動は未だよくわかっていない。この論文では、海氷の指標となる Ice Rafted Debris (IRD)に注目して時間解像度の高い EAWM の強度の復元を試みた。海氷の変動を詳細に捉えるため、 統合海洋掘削計画(IODP) Exp. 346 において最も高緯度で採取された U1422 地点のボーリングコアを用いた。実験に際してはふるいと双眼実体顕微鏡を用いて砕屑性の粒子のみの量の変動を調べた。こうして調べた IRD 含有量の変動を、夏モンスーンの変動に応じて変化する有機物含有量で主に決まる堆積物の明るさ(RGB-G)、および海水準変動に伴う珪藻殻含有量で主に決まる湿潤かさ密度(Gamma Ray Attenuation, GRA)の変動と比較し、考察を行った。その結果、EAWM(IRD 含有量)は氷期(低海水準期)に強く間氷期(高海水準期)に弱い傾向があることが明らかになった。また、RGB-G 対 GRA プロットから、生物生産量に応じて有機物(低い RGB-G)と珪藻(低い GRA)の量が同調する場合と、GRA に関わらず RGB-G が低い(⻩鉄鉱によって暗色となるような)euxinic な場合との2つのグループが存在することを発見した。それぞれの場合について IRD 含有量とRGB-G 値との相関を検討したところ、 EAWM と有機物保存の程度(ventilation の強度)との間には、あまり関係がないということが明らかになった。