日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT02] 地球生命史

2021年6月6日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.26 (Zoom会場26)

コンビーナ:本山 功(山形大学理学部)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)、座長:本山 功(山形大学理学部)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)

10:45 〜 11:00

[BPT02-01] 北海道古丹別地域における上部白亜系堆積岩の花粉およびパリノモルフ、ケロジェン分析による古植生変動の復元

*早川 万穂1、沢田 健2、池田 雅志1、高嶋 礼詩3、西 弘嗣4 (1.北海道大学理学院自然史科学専攻、2.北海道大学理学研究院地球惑星科学部門、3.東北大学学術資源研究公開センター 東北大学総合学術博物館、4.福井県立大学 恐竜学研究所)


キーワード:古植生、蝦夷層群、花粉、パリノモルフ、白亜紀

[はじめに]後期白亜紀は、その初期(~Turonian)は最も温暖な気候を示す時代の1つとして特徴づけられるが、その後(Coniacian–Maastrichtian)大気CO2濃度の低下を起因とするグローバルに冷涼化する時代を迎えたと考えられている(e.g. Tabor et al., 2016)。その中で被子植物を加えた白亜紀古植生の年代変動・進化の解明は当時の陸上環境を理解する上で重要であるが、長時間スケールの古植生変動を復元した研究は極めて少ない。そこで本研究では、上部白亜系蝦夷層群の堆積岩試料から花粉を主とした有機質微化石(パリノモルフ)分析と、ビジュアルケロジェン(パリノファシス)分析を行い、主に後期白亜紀における長時間スケールでの古植生変動を復元した。

[試料と方法]本研究では、北海道苫前地域古丹別川に分布する上部白亜系蝦夷層群・羽幌川層の Turonian–Santonian 堆積岩を用いた。花粉処理法は、第四紀試料などで用いられる手法と、堆積岩試料からのケロジェン分離方法の2つの方法を行い比較した。花粉、パリノモルフ、ケロジェンの観察・カウントは蛍光・透過光顕微鏡を用いて実施した。

[結果と考察]パリノモルフ分析の結果、Coniacian–Santonian試料からはシダ植物胞子として三条型胞子(trilete)、裸子植物花粉としてマツ科由来と考えられる二翼型花粉(bisaccate)、ヒノキ科・コウヤマキ科・ナンヨウスギ科などが由来と考えられる花粉(non-saccate gymnosperm pollen)、マオウ科由来と考えられる花粉(polyplicate)、被子植物花粉として、前期白亜紀から出現が報告されている三溝型花粉(tricolpate)、三孔型花粉(triporate)、三溝孔型花粉(tricolporate)、後期白亜紀以降主にアジア・北米で顕著に見られる三突出型花粉(triprojectate)を鑑定した。Coniacian–Santonian試料では、被子植物花粉/bisaccate値はConiacianからSantonianにかけて減少し、その後増加する傾向を示した。bisaccateは最も豊富に産出し、その大きさ別の個数比に変動が見られた。これはマツ科内での植生変動を反映していると考えられ、より詳細な分類群についての古植生復元が可能であることを示唆した。また、渦鞭毛藻の休眠期胞子(Dinocyst)も普遍的に見られた。パリノファシス分析では、その蛍光特性の差からクチクラ(Cuticle)、クチクラが破砕されてできたFA、木片(Wood)、木片が破砕されてできたNFAを主な陸起源有機物として鑑定し、(Cuticle+FA)/(Wood+NFA)値を草本/木本比指標とした。その値はSantonian初頭から中頃にかけて減少し、その後やや増加するような傾向を見せた。しかし、パリノファシスは運搬過程などの堆積学的な要因によって大きく変化することが考えられ、その影響を十分に考慮する必要があると考えられる。