日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2021年6月6日(日) 15:30 〜 17:00 Ch.02 (Zoom会場02)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、淺野 哲彦(専修大学松戸中学校・高等学校)、座長:林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、淺野 哲彦(千葉県立船橋啓明高等学校)、小森 次郎(帝京平成大学)、中井 仁(小淵沢総合研究施設)

15:45 〜 16:00

[G01-02] 自然災害碑とSfM技術を活用した防災教育

*谷川 亘1、浦本 豪一郎2、井若 和久3、管理課 チーム1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所、2.高知大学、3.徳島大学)

キーワード:自然災害碑、南海地震、水害、伝承、Structure from Motion, SfM

自然災害碑は過去に発生した自然災害記録の保存だけでなく、将来発生する恐れのある自然災害に対する心構えを促すアイコンとして活用される。しかし、自然災害碑は長年にわたる風化による破損や文字の判読の不明瞭化が問題となっており、デジタル技術を用いた解決方法が考案されている。一方、市民や学生を対象とした自然災害碑の防災教育への活用は十分とは言えない。そこで本研究では、科研費の研究成果推進費「ひらめき☆ときめきサイエンス」事業の一環として、3Dデジタル技術の活用を通じて自然災害碑が建立する背景や碑文の内容を学習し自然災害への理解を深める企画を実施した。本企画は小学生から高校生を対象に、実践と自発性の2点を念頭に企画を構築した。過去に何度も地震の被害に遭い、地震津波碑が多く建立する高知県土佐清水市で実施した。

土佐清水市にある自然災害碑を調査したところ、南海地震の被害を伝える地震津波碑だけでなく、水害被害を伝える石碑も多く存在することがわかった。南海地震碑は1707年宝永地震、1854年安政南海地震、1946年昭和南海の碑が存在し、一方、水害碑は1920年(大正9年)8月の洪水記念碑と2001年(平成13)年9月の豪雨災害碑(高知県南西豪雨災害)が建立していることがわかった。そのため、自然災害、および建立時代の違いによる石碑の特徴を考察できる。本企画は、(1)自然災害と災害碑に関する講義、(2)現場での自然災害碑の見学、および3Dモデル構築のためのデータ取得、(3)SfM多視点ステレオ写真測量技術(Structure-from-Motion Multi-View Stereo Photogrammetry、以下SfM)を活用した3Dモデルの構築と3Dプリンタによるミニチュアの製作、および(4)将来製作すべき自然災害碑の検討、を実施した。(2)(3)では、(A)日光や陰により現場で見えにくい碑文を鮮明化する方法、(B)石碑の3Dデジタルモデルを作成する方法を学習した。1グループ4~5人に分かれて実習を実施した。各グループ5~6ヶ所の自然災害碑を見学し、そのうち2つの石碑について(A)(B)を実施した。(4)は『目指せ石碑ハカセ最終試験』と題して、「今からX年後に、南海トラフ地震が発生して、みなさんの住む街が大きな被害を受けました。大きな津波が押しよせて、港・橋・小学校が大きな被害を受けました。みなさんは、地震の揺れと同時に、急いで近くの避難場所に逃げたため、助かりました。その後、みなさんは、この大地震の経験について、「石碑」を活用して、後世のひとたちに伝える役割を任命されました。さて、みなさんはどんな石碑を建てますか?」という課題を与えて、グループ毎に製作してみたい石碑を発表した。

 本企画を実施した結果、現場で碑文を読んで理解することの難しさをあらためて感じた。また、自然災害碑の見学中に、石碑を管理・保存している人と水害を経験した人から話を聞くことができた。石碑を用いた災害記録の継承だけなく、災害や石碑に直接関与した人から伝え聞くことの大切さを実感できた。製作したい石碑の発表では、カラフル、巨大、学校の近くに立てるなど、石碑が目立つ工夫が施されていた。今ある自然災害碑があまり目立っていないことの裏返しだといえる。SfM技術も一般にまだ浸透してない印象であったことから、この技術を石碑の学習以外の教育活動に活用できると感じた。

謝辞:
本研究は科研費「20HT0112,いのちをつなぐプログラム:3Dデジタル技術で地震津波災害の記録を未来へ残そう!」の助成により実施した。