日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 地球惑星科学のアウトリーチ

2021年6月6日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.03 (Zoom会場03)

コンビーナ:小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学)、塚田 健(平塚市博物館)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)、座長:長谷川 直子(お茶の水女子大学)、塚田 健(平塚市博物館)、小森 次郎(帝京平成大学)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

11:30 〜 11:45

[G02-08] 2013年淡路島付近の地震(M6.3)の地震動記録からメロディを~多地点記録を用いて地震動特性を表現する試み~

*山田 伸之1、山本 詩菜1 (1.高知大学)

キーワード:地震動記録、メロディ作成、防災教育

地震の揺れ(地震動)についてさらに理解することも,強い揺れの際に身を守るためにも重要であるといえる.そこで本研究では,地震教育や防災へのアウトリーチに向けて,かつて試みた地震動記録を時刻歴波形図以外の方法で表現することをあらためて試みることとした.特に,音で表現し聞くことで地震動の性質を「感じる」ことができ,なおかつ「楽しさ」を盛り込むことを意識したメロディとしての変換方法を模索した.地震動記録を音にする試みは,例えば,平井・福和(2011)やUSGS(2017: Listen to Earthquakes)などで示されている.一方,メロディ化する試みは,2005年福岡県北西沖の地震を対象に,山田(2010)や山田・久保山(2012)にあり,前者は,1観測地点の記録を用いて1曲のメロディの作成を,後者は,多数地点で得られた記録を用いて1曲のメロディの作成を試みたものであった.今回は,2013年淡路島付近の地震を対象に,後者の方法に対して音符の与え方などを改変して,地震波の伝わり方・広がりや地震動の地点ごとの差異を感覚的に表現することを模索したものである.

本報告では,前半で,2013年淡路島付近の地震(M6.3)の地震動記録(K-NETの加速度データ:277地点)から空間的な地震動特性を示し,後半で,それらのデータを活用して,メロディを作成した試みを紹介する.前半のデータの処理については,UD成分のS波走時(読み取りの検討を含む)から20.48秒間の速度記録のフーリエスペクトルを算出し,スペクトルのピーク値と卓越周波数を抽出した.そこからは,平野部での卓越周期の長周期化など地震動のおおよその傾向が見られた。後半については,それらを音の強弱,高低,音符の配置に利用し,楽譜を作成した.音の高低の決定には,鍵盤番号とその音の周波数の関係性を残して地震動の周波数特性に適用させ,また,音の強弱に関しては,スペクトル振幅の最大値を用いて,強弱記号の基準値と対応させ楽譜を作成した.決定した音符を楽譜上に並べる作業については,時間的特徴を残しS波到着順とし,1音あたりの時間枠1秒と0.01秒を設定した.1秒の場合は,ほぼ同時にS波が到着する(同じ時間枠内の)地点があり,1音符で多数の音符が重なる(地点毎の周波数特性が相殺されてしまう),0.01秒の場合は,空白(無音:休符)の時間枠が多くなる,などそれぞれに問題が生じ,音符の配置の仕方には工夫の余地がある。今回は,曲の速度(拍数)は一定,具体的な音の種類(楽器種)をどうするかなど,これらについても今後の課題である.なお,得られた観測記録のうち,データ数を減らした四国地域に限定した場合での作成も試みている.今後,作成したメロディと視覚的な表現方法を組み合わせることによって,また,このメロディ作りの工程そのものが,楽しみながら地震動を理解する手助けになるのではないかと考えられる.成果物についての印象や良し悪しは,聞く人の主観が入るため,判断はできないが,今回の問題点を踏まえ,今後さらなる取り組みを試みたい.

 本報告の内容は,共著者の山本詩菜氏の2020年度卒業研究によるものです.また,これらの作業には,(独)防災科学技術研究所のK-NETデータを使用させていただきました.なお,本研究では,文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C)(課題番号:19K02615)の一部を活用いたしました.記して感謝いたします.