日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 地球惑星科学のアウトリーチ

2021年6月6日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.03 (Zoom会場03)

コンビーナ:小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学)、塚田 健(平塚市博物館)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)、座長:長谷川 直子(お茶の水女子大学)、塚田 健(平塚市博物館)、小森 次郎(帝京平成大学)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

11:45 〜 12:00

[G02-09] 土砂災害への意識向上のための小学校での防災教育と防災情報提供の試み

*宮田 秀介1、竹之内 健介2、嶋﨑 諒子1、鎌田 暉2、堤 大三3、市田 児太朗1、藤田 正治1 (1.京都大学、2.香川大学、3.三重大学)

キーワード:斜面崩壊、降雨、避難

斜面崩壊や土石流などで引き起こされる土砂災害は、局所性や突発性がその特徴の一つである。土砂災害は屋内での被害が80%を超えており、避難が間に合わない、もしくは避難行動をとった時点ですでに遅かったことが示唆される。そのため、自身で今いる場所のリスクを理解し、必要であれば早期に避難行動をとることが必要となる。リスクを理解するために必要な防災教育は、学校防災の一層の充実を達成するためのガイドラインにも言及されている。利用可能な土地が限られた中山間地では、学校などの公共施設が土砂災害の危険性の高い場所に立地せざるを得ないことがある。前述のガイドラインでは学校の立地に則した起こりうる災害への対策が望まれており、各学校について土砂災害に関する情報が取得できれば非常に有用となる。本発表では岐阜県高山市立栃尾小学校4年生の総合的な学習の時間において実施している降雨および土砂災害に関する授業および学校防災の取り組みを紹介する。

対象とした小学校は急傾斜の斜面に隣接しており、敷地が斜面崩壊と土石流双方の警戒区域(一部は特別警戒区域)に指定されている。1979年には近隣の渓流において土石流災害が発生しており、土砂災害の危険度が非常に高い立地にあるといえる。栃尾小学校はこのような背景から土砂災害を防ぐ砂防に関する学習を取り入れており、発表者らはその一部として年4回の授業を行っている。授業は、①土砂災害について、②雨と避難について、③ぼうさいクロスロードゲーム、④雪氷に関する災害についてである。さらに災害の要因である降雨量に対する感覚を身に着けることを目的として、学校屋上に設置した雨量計の観測データが表示されるモニタを廊下に設置し、4年生は「ぼうさい空日記」をつける活動を行っている。「ぼうさい空日記」では雨の強さ(「こわいくらいのどしゃぶり」~「雨はふらなかった」)と雨の長さ(「こわいくらいずっと」~「雨はふっていなかった」)について6段階で選択した上で実際の降雨強度と連続降雨量を記録するものである。「ぼうさい空日記」の記録から、生徒間で雨に対する感受性に大きなばらつきがあることがわかった。このことは土砂災害情報の基準と住民の雨の感覚を近づけておくことが、情報が適切に利用されるために重要であることを示している。また、「ぼうさい空日記」は親にも同様に雨の感覚を尋ねる項目を設けており、家庭でも災害と雨の感覚を話し合う契機となることを目指している。

対象の小学校に隣接する斜面の危険度についてのリアルタイムでの評価を試みている。隣接斜面にある湧水の流出量を観測し、小学校で観測する雨量を入力データとする簡易なモデルでこの湧水量を推定する。湧水量は斜面内の地下水位と正の相関があると考えられ、湧水量が多いほど斜面の土砂災害危険度が高いと考えられる。このように観測データを基に簡易モデルを用いることで、リアルタイムで特定斜面の危険度を知り学校防災に活かすことができる。