日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.03 (Zoom会場03)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)

14:15 〜 14:30

[G03-03] オンラインツールを用いた官民連携STEAM教育(宇宙分野)の推進

*沼 倫加1,3、寺本 佳生2、庄田 佳保里2、横山 明日希3 (1.東京大学大学院理学系研究科、2.NPO法人いけだエコスタッフ、3.株式会社math channel)

キーワード:STEAM教育、官民連携、初等教育、オンライン

STEAM教育とは、科学・技術・工学・芸術(リベラルアーツ)・数学の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念のことで、Yakmanが2006年に提唱した。知る(探究)とつくる(創造)のサイクルを生み出す分野横断的な学びは、近年教育業界で注目されている。背景の1つとして、テクノロジーの進展が挙げられる。テクノロジーの進展により、急速な社会変化が起き、社会で必要とされる人材が変化している。社会の変容に対応するためには、科学技術をただ用いるだけでなく、新しいものを生み出すことが必要である。
学校現場でSTEAM教育に取り組む事例として、芝浦工業大学附属中学校の取り組みを挙げる。芝浦工業大学附属中学校では、中学2年生対象に、「ビートル」型ロボットを全員が1日で製作する取り組みを行っている。この取り組みにより、問題が解決したときの達成感や自己肯定感を得ることができ、また、課題解決力を向上することができる。しかし、学校現場では、STEAM教育を実施するための人材や準備時間、場所が不足しており、STEAM教育の推進には時間を要している。また、昨今の新型コロナウイルスにより、学びが一時期止まってしまった時期もあった。そこで、学校現場ではなく、別の機会としてSTEAM教育に取り組む場をオンラインで設けることで、学校現場での負担を抑えながら、STEAM教育の推進を図ることができると考えた。
そこで今回、大阪府池田市主催、大阪府池田市教育委員会ご協力のもと、特定非営利活動法人いけだエコスタッフにより企画・運営をしていただき、池田市環境学習推進事業として、STEAM教育の推進に取り組んだ。大阪府池田市では、環境学習を通じてSTEAM教育の推進を行っている。自分の周りの身近な事を「環境」と扱い、身の周りの身近な事象と自分自身との関わりに気が付くことが「環境学習の目的」としている。その気づきから、どのような行動、判断をすればよいのか自ら考えることを大切にしている。その中でも特に、特定非営利活動法人いけだエコスタッフは、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」をきっかけとし、宇宙を通じたSTEAM教育に関心を持っていた。一方、私自身は、株式会社math channel内で実施する講座および、個人活動として宇宙と算数に関するSTEAM教育推進活動に取り組んでいたことから、三者の連携により、宇宙を通じたSTEAM教育の機会を設けることができると考え、実施に至った。
今回の取り組みは、「おうちで楽しく『さんすう×宇宙』」というタイトルで実施をした。参加者は小学1年生~4年生の約52名である。参加者は各家庭より参加し、各参加者とはオンラインツールZoomにて接続した。実施内容としては、まず、家庭にある身近なものを用いて、惑星の大きさを比較した。惑星の大きさは手に取って測れないため、数値のみの大きさの表現では、想像が難しい。そこで、惑星の大きさを身近なものに置き換えることで、惑星の大きさを想像できるようにし、宇宙を身近に感じてもらった。その後、私自身が宇宙にまつわる研究をしていることから、実際に行っている研究例を紹介し、質問を通じて子供たちと講師のやりとりを行うことで、宇宙への関心を引き出した。また、やりとりを通じて、宇宙に関する疑問をもち、自分で取り組めそうな内容を考えてもらった。最後には、Zoomのブレイクアウトルームを用いて1グループ4,5人にわかれて参加者同士の交流時間を設けた。
惑星の大きさの比較では、身近なものを用いて相対的な大きさの比較を行い、また、実際の数値も、身近でたとえたものの何倍の大きさなのかも示すことでより実感を持って理解できた。また、質問コーナーでは、Zoomのチャットも使用しながら多数の質問があったことから、宇宙への関心が引き出せていることがわかった。実施後のアンケートでも、楽しかったと回答した方が多かった。参加者同士の交流時間では、面識のない生徒たちが宇宙について理解を深め、「講座実施後の夜に星空をみようと思う」などの今後の取り組み方を各自考えることができた。以上より、学校現場以外でも、官民連携によりSTEAM教育の推進が可能であることがわかった。本発表では、STEA教育の取り組み内容と今後の官民連携のSTEAM教育のあり方について紹介する。