日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.03 (Zoom会場03)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)

14:30 〜 14:45

[G03-04] 日本列島の地殻変動可視化 ~GNSSで眺める東北地方太平洋沖地震の前後10年間~

*加藤 忠義1 (1.横浜市立もえぎ野中学校)

キーワード:地殻変動、日本列島、デジタル教材

東北地方太平洋沖地震が発生して2021年3月11日でちょうど10年を迎える。日本の観測史上最大のマグニチュードを記録したこの地震は、様々な観測網や記録媒体によって記録され、GNSS連続観測システム(GEONET)でもとらえられた。GEONETは、この地震に伴う地殻変動を全国約1400点の観測網で観測した後も、日々の地殻変動を観測し続けられ、日本列島の日々の座標値データは1996年から現在まで蓄積されている。これらの観測データは国土地理院のHPで一般に公開されており、誰でも利用することができる。しかし、膨大なデータの処理や観測結果の可視化が困難なことから、小・中学校教育の場面での活用や一般の方が日本の姿をとらえることは難しい。一方で、地球や惑星を立体的に表示することができるアプリケーションやツールがダジック・アース(http://earth.dagik.org)をはじめとして、デジタル教材としてぞくぞくと登場してきており、近年重視されている「生徒に知識や情報を与えるだけでなく、生徒が課題を見つけ結論までを導き出す」能動的な学習方法(アクティブラーニング)への活用が考えられる。学校教育機関でのICTの導入も徐々に進められはじめ、データ媒体の教材活用の場が今後増加することが期待される。

GEONETのデータは1996年から現在まで日々の観測データが保存されており、任意の期間の地殻変動を、ベクトル図や基線長グラフ等で表示することができる。また、一般利用のために国土地理院が独自の手法で解析した解析座標値(F3解やF4解)も公開されている。しかし、これらのデータベースの活用や基線長グラフや地図の表現方法では、日本列島がどのように変動しているのかを感覚的にとらえることが難しく、ある程度知識のある人でないと理解できない側面がある。そこで今回は、F3解を利用して各電子基準点の変位量を求め、地殻変動を誇張して表現することによって日本列島の時間的変動をとらえることができる地図を作製した。

変位量を誇張して作成した地図(変動地形図)は、基準とする年によってその後の日本列島の形状が変わる。特に、比較的大きな地震前後を基準年とするとその変化は著しい。本研究では、GEONETが日本列島を観測し始めた1996年から2020年、東北地方太平洋沖地震が発生した2011年を境界とした1996年から2010年、2011年から2020年の3つの期間を設定しそれぞれの月毎地殻変動図を比較することで、日本列島の定常変動と巨大地震後に顕著にみられる余効変動の可視化を試みた。

地殻変動をとらえるためには、数年から数十年単位の継続観測によってとらえることができる側面が多く、小中学校教育の場では、授業時間内での観測が難しい、膨大なデータをとりあつかうのが難しい、といった側面がある。しかし、GEONETが蓄積してきた約20年の観測結果を有効活用すれば、自分たちが生活している日本列島の姿を考える助けになるに違いない。また、今回作成した地殻変動図を生徒が解析期間や誇張倍率を自由に変えることができれば、生徒の主体的な学習を助けるツールになるだろう。