日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2021年6月6日(日) 15:30 〜 17:00 Ch.03 (Zoom会場03)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)

15:30 〜 15:45

[G03-07] 神戸市内中学生の自然災害の認識と学習に関する一考察

*有道 俊雄1,2、川村 教一2 (1.神戸市立井吹台中学校、2.兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科)

キーワード:アンケート調査、中学生、自然災害、地学教育、六甲山、神戸市

近年,多くの犠牲者が出る自然災害が増加している。自然災害(Natural disaster)とは,危機的な自然現象(Natural hazard)によって,人命や人間の社会的活動に被害が生じる現象のことである。自然災害による被害を最小限にするためには,自然現象を正しく理解しておくことが大切である。また,生じた犠牲や被害を後世に伝え教訓にするためにも,自然災害を教材として扱う必要性がある。自然災害を取り扱うことは,防災教育の観点だけでなく,自然と人間との関わりについて考えることができる重要な教材でもある。中学校において自然災害を取り扱う機会は,理科・社会科・保健体育科・技術家庭科・総合学習の時間の中で行われる。しかし,自然災害の元凶となった自然現象を正しく学ぶ場は理科で,特に地学分野の学習の中である。

災害時の避難などの対処方法,災害が起こった時の被害を最小限に食い止めるための防災教育は,兵庫県南部地震(1995)以降かなり進んできた。しかし,自然災害や自然災害の発生に特化した地学教育は進んでいない。また,論文も少ない。また、一般市民の自然現象の認知度は,高くないままである。「台風と熱帯低気圧の違い」「マグニチュードと震度」「海溝型地震と内陸型地震」「降水確率の意味」「ハザードマップの存在」など,自然科学の中では基本的なことがらが,一般社会では定着していない。一般市民が自然科学の基本的な知識や自然現象を正しく理解できるようになることは,理科教育及び地学教育の責務であると考える。

中学校学習指導要領理科(文部科学省,2018)では,「大地の成り立ちと変化」で自然の恵みと火山災害・地震災害,「気象とその変化」で自然の恵みと気象災害,「自然と人間」で地域の自然災害についての学習が取り上げられている。

神戸市では,兵庫県南部地震だけでなく,豪雨による風水害(土石流・山崩れ・洪水等)が頻繁に発生している。これは六甲山系の傾動地塊に関係している。六甲山系は神戸市の市街地の北側に位置する山塊である。六甲山から流れ出す川は,海までの距離が非常に短いため,いずれも急流で,一気に海まで流れる。しかも,六甲山は風化したくずれやすい花崗岩からできているため山くずれやがけくずれがおこりやすく,土石流が発生しやすい環境である。六甲山の麓では,長年の間に六甲山から河川によって運ばれてきた土砂や石が扇状地を形成し,その上に200万人の住む大都市が広がっており,土砂災害の危険性の高い地域に市街地が形成されている。しかし、中学校での理科の授業では,地域の自然災害について詳しく学習する機会は少ないと思われる。そこで,神戸市内中学生を対象として自然災害の認識に関する調査を行った。

〔調査方法〕
 神戸市の中学校(13校)の1年生(987名)・2年生(1009名)を対象に自然災害の認識に関するアンケート調査を2020年11月に行った。

 調査用紙には8項目の設問を掲載した。
 設問1では,今一番怖いと思う自然災害を回答させた。
 設問2~4では,生徒が得た自然災害についての情報源を回答させた。
 設問5~6では,地震に関する設問で、地震のきっかけとゆれについて回答させた。
 設問7~8では,洪水に関する設問で、洪水のきっかけと洪水が起こる場所について回答させた。


本発表では、中学生の自然災害の認識と自然災害の学習経験について分析した結果を提示する。