日本地球惑星科学連合2021年大会

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[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.03

17:15 〜 18:30

[G03-P01] 高等学校における地球科学を基礎にした探究活動の実践―SSH指定の1年目―

*川勝 和哉1 (1.兵庫県立姫路東高等学校)

キーワード:SSH、探究、課題研究、科学倫理

1 はじめに
 探究を活性化するために現任校に招聘された1年目(令和元年度)に、1年次生徒280名全員に課題研究を導入した。この成果と、新しい教育目標への期待から、令和2年度に文部科学省の事業として実施されているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に令和2年度~令和6年度までの5年間の指定を受けた。これにより、本校が掲げた教育テーマの研究開発を行い、その成果を全国に発信し普及させる。

2 探究活動の目標
 本校のSSHの研究開発課題の具体的な目標は、次の3つである。

(1)地球科学を中心にした国際的な活動への挑戦と、国際的に活動できる理系女子の育成
・阪神淡路大震災の教訓を引き継ぐためには、防災教育と自然科学的理解とが両輪となる必要がある。現在の高校教育では、防災教育は行われているが、災害を総体的に理解する教育が効果的に行われていない。そこで、地球科学分野を軸にして理科4分野を分野横断的に学ぶ「自然科学探究基礎」を開講する。
・1年次生徒全員が課題研究を行い、探究の力を身に付ける「理数探究基礎」を開講する。すべての教科・科目の教員が課題研究を担当し、指導・助言にあたる。担当教員は、スケジューリングや安全確保のほか、議論に参加して助言することによって、生徒の新しい発想や工夫を引き出す。
・この過程で見出された優れた生徒は、令和3年度以降理系に進み、2年~3年の2年間をかけて本格的な課題研究を行う。希望する生徒はシドニー大学の協力を得ながらオーストラリア南東部の野外調査を行い、成果を国際学会で発表する。
・理系を志す女子生徒の活動を支援する。来年度には、女性研究者や女子生徒を中心にした「Girl’s Expo with Science Ethics」を開催する。

(2)科学研究のために身に付けておくべき科学倫理観の育成
・研究倫理の学び。
・科学者の社会に対する責任ある行動や、社会人として身に付けておくべき科学倫理観を育成するために、生徒自らが行う自然科学に関する研究に関連する、科学倫理問題の課題研究を行い、主催開催する「Girl’s Expo with Science Ethics」で発表する。
・この活動を通じて科学倫理観育成教育のロールモデルを作り、全国に普及させる。
・国際的な舞台に挑戦する意欲的な生徒は、ジョージタウン大学等の国内外の大学で、研究と国際学会での発表に挑戦する。

(3)科学部の先端的な研究と国際的な活動への挑戦の支援
・安易に高度な分析機器に頼らずに、高校生らしい柔軟な発想と工夫で研究を行い、本校生徒の課題研究をリードするような先端的な成果を上げる。
・地域への普及活動を積極的に行う。

3 探究活動の具体的事例

(1)1年生280名全員が64のグループに分かれて課題研究を実施した。目的は、生徒全員にテーマの設定から仮説の設定、実験観察、結果のまとめ、考察、発表までの研究の流れを体験させることと、その中で科学的思考の訓練をすることとした。生徒研究中間発表会、生徒研究発表会を実施するほか、研究論文を執筆して公開した。

(2)大学の教員や企業研究所の研究員らから、課題研究の指導・助言を定期的に得る「アラカルト講座」や「サイエンス・カフェ」を実施した。また、大学の専門家から「研究倫理」を学んだ。さらに、「科学倫理」のワークショップを複数の大学と連携して、本校生徒と大学生、大学院生で実施したり、国際的科学技術人材育成挑戦プログラム(神戸大学等のROOTや大阪大学のSEEDS、京都大学のELCASなど)に挑戦して3名が合格したりした。

(3)科学倫理教育研修会で生徒のモデルクラスを構成して模擬授業を実施した。また、JST RISTEX倫理的法的社会的課題の研究課題ELSI「遺伝子差別に対する法整備に向けての法政策の現状分析と考察」で、本校生徒と複数の大学の大学生と大学院生とで、科学倫理に関するワークショップを実施した。

(4)科学部が多くの全国上位レベルの成果を上げ、一般生徒の探究活動をリードした。

(5)シドニー大学とオンラインで結び、オーストラリア南東部の地質等についてや、調査方法について、科学部の生徒と協議した。また、ジョージタウン大学とオンラインで結び、科学倫理の課題研究について、生徒代表が議論した。