日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG21] 堆積物重力流:流れの発生・ダイナミクスと堆積物

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.09

コンビーナ:成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、横川 美和(大阪工業大学情報科学部)、Michael Robert Dorrell(University of Hull)

17:15 〜 18:30

[HCG21-P01] Grain size segregation on cyclic steps formed by turbidity currents

*成瀬 元1 (1.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:堆積物重力流、ベッドフォーム、粒度偏析、混濁流、海底扇状地

サイクリックステップとは,射流によって形成される長波長のベッドフォームであり,下流斜面(lee side)と上流斜面(stoss side)の境界で跳水が持続的に発生することで特徴づけられる.サイクリックステップは特に深海の海底扇状地で頻繁に発見され,近年では混濁流の作る典型的なベッドフォームとみなされている.海底扇状地堆積物はしばしば石油・天然ガスの貯留岩となるため,サイクリックステップによって形成される堆積物の貯留岩特性の解明の進むことが期待されている.
しかしながら,サイクリックステップは近年になって発見されたベッドフォームであり,特にその粒度偏析プロセスについては未解明な点が多い.そこで,本研究は混合粒径を考慮した混濁流の二次元浅水方程式モデルを開発し,それによって混濁流によって形成されるサイクリックステップを構成される堆積物の粒度偏析作用を明らかにする数値実験を行った.数値モデルでは運動量・質量保存則に加えて運動エネルギーの保存則を考慮し,底面に堆積物交換層を設定することで,混合粒径の堆積物の輸送を計算することを可能にした.
数値実験の結果,混濁流によるサイクリックステップでは,上流側斜面に選択的に粗粒な堆積物が集積することが明らかになった.特に,ベッドフォームのトラフに相当する跳水地点では急激な堆積作用が進行し,淘汰の悪い堆積物が集積する.このことは,既存研究における水槽実験の結果と整合的である.また,混濁流の粒度分布によってベッドフォームの波長が変化することも明らかになった.細粒堆積物が多いほどベッドフォームの波長は長くなり,ステップの形状も浮遊堆積物の粒度分布に影響を受けることがわかった.今後は,これらの特徴を現世のサイクリックステップの堆積物と比較し,数値モデルの検証を行う.また,数値計算による地層中のサイクリックステップ堆積物の特性予測も目指す.