日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG22] Nuclear Geoscience in Developing Countries

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.12

convener:Mohammad Rajib(Bangladesh Atomic Energy Commission)

17:15 〜 18:30

[HCG22-P01] 日本における放射性廃棄物処分-特に高レベル放射性廃棄物地層処分について-

★招待講演

*笹尾 英嗣1 (1.国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)

キーワード:放射性廃棄物、地層処分

放射性廃棄物の最終処分は原子力の平和利用にあたって重要な課題である。低中レベル放射性廃棄物については,世界各国でトレンチあるいはピット処分が行われている。一方で,高レベル放射性廃棄物については処分方法として地層処分が選択されているものの,未だ処分を開始した国は無く,処分場の建設あるいはサイト選定,基礎的な調査研究など,国によって進捗が大きく異なる。

日本では,放射性廃棄物は,「発生者責任の原則」,「放射性廃棄物最小化の原則」,「合理的な処理・処分の原則」及び「国民との相互理解に基づく実施の原則」のもとで,その影響が有意ではない水準にまで減少するには超長期を要するものも含まれるという特徴を踏まえて適切に区分を行い,それぞれの区分毎に安全に処理・処分することが重要であるとされている(原子力委員会,2015)。

日本では,原子力利用に伴って発生する放射性廃棄物は,一般に発生源および放射性物質の濃度により高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物とに区分される。高レベル放射性廃棄物は使用済み燃料の再処理により分離された核分裂生成物を含む廃液およびこれをガラス固化したものであり,他は低レベル放射性廃棄物に分類される。これらの廃棄物の処分には,放射性廃棄物の性状や放射能レベル等に応じて,浅地中トレンチ処分,浅地中ピット処分,中深度処分,地層処分の4つの処分方法が用いられる。

日本では,原子力発電所で発生した低レベル放射性廃棄物のうち,放射能が比較的低いものはピット処分が行われている。また,高レベル放射性廃棄物の地層処分のサイト選定は,文献調査,概要調査,精密調査の3段階で行われることになっている。昨年から,2地点を対象とした文献調査が開始されたところである。

地球科学的には,日本はプレート境界に位置し,火山や断層が多く,隆起・侵食も比較的激しい。このため,処分施設を設置する際には,これら天然現象への対策が必要である。低レベル放射性廃棄物の処分施設は,地震,津波,火山の影響が無い場所に設置することが法令で求められている。また,長期には隆起・侵食の影響を考慮する必要がある(瀬間,2020)。中深度については,少なくとも10 万年間は火山活動及び断層活動,侵食作用が著しい影響を及ぼすおそれのない区域に廃棄物埋設地を設置するとともに,少なくとも10 万年間は侵食作用を考慮しても離隔に必要な深度を確保することが要求されている。

高レベル放射性廃棄物は10万年オーダーで放射能が高い状態が続くため,より長期の安全を考慮する必要があり,そのためには地球科学の知見が必要である。日本では,地層処分場のサイト選定において考慮すべき科学的特性を明らかにし,日本全国の分布を示した「科学的特性マップ」が整備されている。

講演においては,日本における放射性廃棄物処分の概要とともに,高レベル放射性廃棄物地層処分に求められる地球科学特性を紹介する。



文献

原子力委員会(2015)原子力政策大綱

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/taikou/kettei/siryo1.pdf

瀬間(2020)原子力バックエンド研究,27,40-42..