日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 原子力と地球惑星科学

2021年6月5日(土) 09:00 〜 10:30 Ch.17 (Zoom会場17)

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所)、座長:長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所)

09:45 〜 10:00

[HCG23-04] 岡山県人形峠地域の花崗岩における割れ目の特徴と分布

*竹末 勘人1、野原 壯1 (1.日本原子力研究開発機構)

キーワード:花崗岩、割れ目、地下水流動

日本原子力研究開発機構人形峠環境技術センターは、平成28年12月に「ウランと環境研究プラットフォーム」構想を公表し、ウラン廃棄物の処理・処分の研究開発を目的として、ウランと環境をテーマとした「環境研究」及び「ウラン廃棄物工学研究」に取り組んでいる。「環境研究」では、人形峠地域における不均質な透水性や比較的大きい地形勾配などの特徴を踏まえて、広域地下水流動の解析手法の高度化に関わる調査解析を行っている。「環境研究」で得られた情報は、地形変化の解析や埋設試験の設計、評価にも反映する。

 一般に、花崗岩のような結晶質岩系における地下水流動は岩盤中の割れ目や断層の分布とその特徴に支配される (石橋ほか, 2014)。特に、東濃や幌延地区では、割れ目帯の分布とそれらの平均的な透水係数などを用いた地下水流動の解析が行われ(例えば、西本ほか, 2008; 操上ほか, 2008)、地表からのボーリング調査により主な割れ目帯を含む区間を特定する調査技術の有効性や、連続的な低透水性の構造の存在が示された (竹内ほか, 2013)。最近では、白亜紀の花崗岩に超臨界流体による高透水化の証拠がみつかり、超臨界流体による透水不均質性とその分布の概念的なモデルが提案されている (Nohara et al., 2019)。地下水流動モデルを検討するうえで、断層や超臨界流体といった不均質な構造は不確実性の要因になる。断層や超臨界流体の地質構造を対象とする地下水流動モデルのモデル化では、しばしば複雑な地質構造の把握が課題となる。そのため、シンプルな構造の調査が可能な地域を選んでモデル化を行い、その結果を踏まえて複雑な構造のモデル化にチャレンジする段階的なアプローチの仕方が、不均質性の理解や不確実性の減少に対して有効だろうと考えている。人形峠地域は、比較的シンプルな地質構造がボーリング調査により確認されており、このような段階的なアプローチの調査地域として、貴重なフィールドといえる。

 このような背景を踏まえ、本研究では人形峠地域を事例として、新たなボーリング調査を行い、透水試験データとコア観察及び岩石薄片観察による地質学的データの取得、解析により、主要な透水性割れ目の分布と特徴を把握した。

 その結果、人形峠地域には、透水性割れ目が少なく、難透水性の花崗岩と、水平割れ目が発達し相対的に透水性が高い花崗岩が層状に分布することが分かった。透水性割れ目の分布は連続しており、人形峠地域には比較的シンプルな構造が広範囲に分布する可能性がある。



引用文献

Nohara, T., Uno, M., and Tsuchiya, N., 2019, Enhancement of Permeability Activated by Supercritical Fluid Flow through Granite: Geofluids, v. 2019, p. 1–16, doi: 10.1155/2019/6053815.

西本昌司, 鵜飼恵美, 天野健治, and 吉田英一, 2008, 地下深部花崗岩の地質プロセス解析―土岐花崗岩を例にして―: 応用地質, v. 49, no. 2, p. 94–104.

石橋正祐紀, 安藤友美, 笹尾英嗣, 湯口貴史, 西本昌司, and 吉田英一, 2014, 深部結晶質岩における割れ目の形成・充填過程と透水性割れ目の地質学的特徴―土岐花崗岩を例として―: 応用地質, v. 55, no. 4, p. 156–165.

操上広志, 竹内竜史, 藪内聡, 瀬尾昭治, 戸村豪治, 柴野一則, 原稔, and 國丸貴紀, 2008, 幌延深地層研究計画の地上からの調査研究段階における地下水流動に関する調査研究: 土木学会論文集 C, v. 64, no. 3, p. 680–695.
竹内真司, 三枝博光, 天野健治, and 竹内竜史, 2013, 瑞浪超深地層研究所における地下深部の水理地質構造調査: 地質学雑誌, v. 119, no. 2, p. 75–90.