10:00 〜 10:15
[HCG23-05] 炭酸塩コンクリーションの水理・力学特性について
キーワード:コンクリーション、水理特性、力学特性、シーリング、地層処分
1. はじめに
近年、炭酸塩コンクリーションは海底堆積物中に埋没した生物の腐敗に伴う有機酸の拡散と海水中のカルシウムイオンとの過飽和・沈殿反応によって数年~数十年という、地質学的には極めて短期間で形成されることが明らかとされてきた(例えばYoshida et al.;2015)。この急速な沈殿反応のメカニズムを、地下空間におけるシーリング技術へ応用することなどが検討されている。炭酸塩コンクリーションの内部ではカルシウムなどの濃度が概ね一定に分布することが元素分布測定から明らかとされているが、一方、コンクリーションによるリーリング機能を評価する上で重要な固化後の透水特性や硬度特性などの水理・力学特性について検討された事例は皆無と言える。そこで、本検討ではコンクリーション内部と周辺母岩を対象に、コンクリーションの材質的性質を明らかにすることを目的に、空隙率分布や透水試験によって透水特性を明らかとするとともに、エコーチップを用いて硬度分布を測定した。
2. 実施方法
試験に用いた試料は神奈川県三浦半島に分布する新第三紀葉山層群中に産するコンクリーションである。コンクリーションは母岩付きのものと、母岩部が欠如した球状のコンクリーションを採取し検討に用いた。なお、前者のコンクリーションは黄褐色で長軸が数㎝~10数㎝の不定形を呈し、これが暗灰色の泥岩母岩中に散在する。
透水特性のうち空隙率測定は母岩付きのものを対象に、研磨面に1㎝間隔の格子線を引き、各格子内の1点で撮影した電子顕微鏡画像をImage-Jを用いて白黒で二値化し、空隙と判断される黒色部の1cm2当たりの面積を空隙率として中心部から母岩部にかけて測定した。また、コンクリーション中央部と母岩部から直径5㎝、厚さ約3㎝の試料をコアリングし、変水位透水試験により透水係数を測定した。
硬度特性は、エコーチップ(超鋼製のボールチップを岩石表面に打撃し、その落下速度と跳ね返り速度から硬度を算出する測定装置)を用い、切断研磨した岩石表面に1㎝四方の格子線を引き、各格子で5回測定を行った。エコーチップでの測定は、母岩付きコンクリーションと単体のコンクリーションの2種類で実施した。
3. 実施結果
空隙率測定の結果、コンクリーションの中心部から外縁部にかけて約2%から約7%と徐々に増加した。室内透水試験の結果、コンクリーション部は約8E-12(m/s)、母岩部は約2E-10(m/s)となり、コンクリーション内部が1~2桁低い値を示した。
エコーチップでの硬度測定の結果、球状コンクリーションでは中心部から外縁部に向けて値が低下する(軟化する)傾向を示した。また、母岩付きコンクリーションにおいても、コンクリーション中心部から外縁部、そして母岩部に向けて徐々に軟化する傾向を示した。
4. まとめ
新第三紀葉山層群中のコンクリーションを対象に、水理・力学特性について検討した。その結果、コンクリーション内部は外縁部あるいは周辺母岩と比べて透水性が低く、かつ硬質であることが定量的に示された。このことは、コンクリーションが母岩よりも硬質で風化に強く露頭に残りやすいという特徴と整合的である。一方でYoshida et al.(2015)などによれば、コンクリーション内部の元素濃度の分布は比較的均質であるという結果が示されており、今回の水理・力学特性が示す傾向とは異なっている。このことは、生物由来の有機酸の海水中のカルシウムイオンとの沈殿反応の過程における炭酸カルシウムの結晶成長の度合いの違いが影響している可能性が考えられる。今後は、さらに測定試料数を増やすことにより普遍的な傾向を確認していく予定である。
近年、炭酸塩コンクリーションは海底堆積物中に埋没した生物の腐敗に伴う有機酸の拡散と海水中のカルシウムイオンとの過飽和・沈殿反応によって数年~数十年という、地質学的には極めて短期間で形成されることが明らかとされてきた(例えばYoshida et al.;2015)。この急速な沈殿反応のメカニズムを、地下空間におけるシーリング技術へ応用することなどが検討されている。炭酸塩コンクリーションの内部ではカルシウムなどの濃度が概ね一定に分布することが元素分布測定から明らかとされているが、一方、コンクリーションによるリーリング機能を評価する上で重要な固化後の透水特性や硬度特性などの水理・力学特性について検討された事例は皆無と言える。そこで、本検討ではコンクリーション内部と周辺母岩を対象に、コンクリーションの材質的性質を明らかにすることを目的に、空隙率分布や透水試験によって透水特性を明らかとするとともに、エコーチップを用いて硬度分布を測定した。
2. 実施方法
試験に用いた試料は神奈川県三浦半島に分布する新第三紀葉山層群中に産するコンクリーションである。コンクリーションは母岩付きのものと、母岩部が欠如した球状のコンクリーションを採取し検討に用いた。なお、前者のコンクリーションは黄褐色で長軸が数㎝~10数㎝の不定形を呈し、これが暗灰色の泥岩母岩中に散在する。
透水特性のうち空隙率測定は母岩付きのものを対象に、研磨面に1㎝間隔の格子線を引き、各格子内の1点で撮影した電子顕微鏡画像をImage-Jを用いて白黒で二値化し、空隙と判断される黒色部の1cm2当たりの面積を空隙率として中心部から母岩部にかけて測定した。また、コンクリーション中央部と母岩部から直径5㎝、厚さ約3㎝の試料をコアリングし、変水位透水試験により透水係数を測定した。
硬度特性は、エコーチップ(超鋼製のボールチップを岩石表面に打撃し、その落下速度と跳ね返り速度から硬度を算出する測定装置)を用い、切断研磨した岩石表面に1㎝四方の格子線を引き、各格子で5回測定を行った。エコーチップでの測定は、母岩付きコンクリーションと単体のコンクリーションの2種類で実施した。
3. 実施結果
空隙率測定の結果、コンクリーションの中心部から外縁部にかけて約2%から約7%と徐々に増加した。室内透水試験の結果、コンクリーション部は約8E-12(m/s)、母岩部は約2E-10(m/s)となり、コンクリーション内部が1~2桁低い値を示した。
エコーチップでの硬度測定の結果、球状コンクリーションでは中心部から外縁部に向けて値が低下する(軟化する)傾向を示した。また、母岩付きコンクリーションにおいても、コンクリーション中心部から外縁部、そして母岩部に向けて徐々に軟化する傾向を示した。
4. まとめ
新第三紀葉山層群中のコンクリーションを対象に、水理・力学特性について検討した。その結果、コンクリーション内部は外縁部あるいは周辺母岩と比べて透水性が低く、かつ硬質であることが定量的に示された。このことは、コンクリーションが母岩よりも硬質で風化に強く露頭に残りやすいという特徴と整合的である。一方でYoshida et al.(2015)などによれば、コンクリーション内部の元素濃度の分布は比較的均質であるという結果が示されており、今回の水理・力学特性が示す傾向とは異なっている。このことは、生物由来の有機酸の海水中のカルシウムイオンとの沈殿反応の過程における炭酸カルシウムの結晶成長の度合いの違いが影響している可能性が考えられる。今後は、さらに測定試料数を増やすことにより普遍的な傾向を確認していく予定である。