10:45 〜 11:00
[HCG23-07] 単一割れ目を模擬した室内トレーサー試験による割れ目内流速と収着による遅延効果の関係性の検討
キーワード:割れ目系岩盤、物質移行、トレーサー試験、破過曲線、収着
【背景・目的】
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、地下水に溶解した物質が地下水とともに移行する過程での遅延効果を評価することが重要である。割れ目系岩盤内の地下水に溶存した物質は、割れ目表面への収着、岩石マトリクスへの拡散および収着によって、物質移行が遅延される。原位置岩盤の物質移行特性を評価する方法の一つにトレーサー試験があり、これまで多くの事例が報告されている。物質移行パラメータを一意に推定することを目的に、流量の異なる試験を繰り返し実施するマルチ流量試験が提案されている。しかし、トレーサー試験時の揚水流量の違いによって、収着分配係数の推定値が影響を受けることが報告されている。このことから、割れ目内流速と破過曲線で推定される収着分配係数の関係について情報を取得することは、トレーサー試験から得られる収着分配係数の精度向上に有用である。本研究では、蛭川花崗岩を対象に室内トレーサー試験を実施し、破過曲線と数値解析によるフィッティングから、割れ目内流速と収着に関わる遅延効果の関係について検討した。
【実験方法】
柱状に加工した岩石試料をステンレス容器に入れ、スペーサーとオーリングを介してアクリル板を押し付けて単一割れ目試験系を構築し、トレーサー試験に使用した。割れ目幅は0.5 mmに設定した。非収着性トレーサーには、ナフチオン酸ナトリウム(以下、NAP)を、収着性トレーサーにはRb+を使用した。送液流量を変えて室内トレーサー試験を実施し、NAP・Rb+それぞれの破過曲線を取得した。NAPの破過曲線について数値解析によるフィッティングを行い、割れ目幅と分散長を推定した。また、Rb+の破過曲線から割れ目表面の収着分配係数、マトリクス部の収着分配係数を推定した。
【結果と考察】
Rb+の破過曲線のフィッティングでは、割れ目内流速が5.33×10-4 m/sのとき、表面収着係数は7.81×10-5 mで、マトリクス部の収着分配係数は4.50×10-3 m3/kgであった。一方、割れ目内流速が5.95×10-5 m/sのとき、数値解析によるフィッティングが著しく悪くなり、収着分配係数を推定することが困難であった。割れ目内流速の値によっては、Rb+のフィッティングができなくなる場合が確認されたことから、フィッティング方法の再検討や、非平衡収着を適用したモデリングの検討が必要であると考えられた。
本研究の内容は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託研究「平成31年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(岩盤中地下水流動評価技術高度化開発)」の成果の一部である。ここに記して謝意を表します。
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、地下水に溶解した物質が地下水とともに移行する過程での遅延効果を評価することが重要である。割れ目系岩盤内の地下水に溶存した物質は、割れ目表面への収着、岩石マトリクスへの拡散および収着によって、物質移行が遅延される。原位置岩盤の物質移行特性を評価する方法の一つにトレーサー試験があり、これまで多くの事例が報告されている。物質移行パラメータを一意に推定することを目的に、流量の異なる試験を繰り返し実施するマルチ流量試験が提案されている。しかし、トレーサー試験時の揚水流量の違いによって、収着分配係数の推定値が影響を受けることが報告されている。このことから、割れ目内流速と破過曲線で推定される収着分配係数の関係について情報を取得することは、トレーサー試験から得られる収着分配係数の精度向上に有用である。本研究では、蛭川花崗岩を対象に室内トレーサー試験を実施し、破過曲線と数値解析によるフィッティングから、割れ目内流速と収着に関わる遅延効果の関係について検討した。
【実験方法】
柱状に加工した岩石試料をステンレス容器に入れ、スペーサーとオーリングを介してアクリル板を押し付けて単一割れ目試験系を構築し、トレーサー試験に使用した。割れ目幅は0.5 mmに設定した。非収着性トレーサーには、ナフチオン酸ナトリウム(以下、NAP)を、収着性トレーサーにはRb+を使用した。送液流量を変えて室内トレーサー試験を実施し、NAP・Rb+それぞれの破過曲線を取得した。NAPの破過曲線について数値解析によるフィッティングを行い、割れ目幅と分散長を推定した。また、Rb+の破過曲線から割れ目表面の収着分配係数、マトリクス部の収着分配係数を推定した。
【結果と考察】
Rb+の破過曲線のフィッティングでは、割れ目内流速が5.33×10-4 m/sのとき、表面収着係数は7.81×10-5 mで、マトリクス部の収着分配係数は4.50×10-3 m3/kgであった。一方、割れ目内流速が5.95×10-5 m/sのとき、数値解析によるフィッティングが著しく悪くなり、収着分配係数を推定することが困難であった。割れ目内流速の値によっては、Rb+のフィッティングができなくなる場合が確認されたことから、フィッティング方法の再検討や、非平衡収着を適用したモデリングの検討が必要であると考えられた。
本研究の内容は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託研究「平成31年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(岩盤中地下水流動評価技術高度化開発)」の成果の一部である。ここに記して謝意を表します。