日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 原子力と地球惑星科学

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.12

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所)

17:15 〜 18:30

[HCG23-P03] 深部流体を対象とした微生物群集解析:スラブ起源水に微生物は生息しているのか?

*杉山 歩1,2、富岡 祐一1、平野 伸一1、栗田 宗大1 (1.一般社団法人電力中央研究所、2.アサノ大成基礎エンジニアリング)

キーワード:微生物数、次世代シーケンス解析、深部流体、スラブ起源水

微生物は様々な環境下に存在しており、地下圏におけるその分布は数キロに及ぶといわれている。また、環境中における微生物の分布は、環境条件(温度、pH、栄養条件など)を反映している。そのため、地下水中の微生物群集を理解することで、地下水の起源や流動過程の違いを推定できる可能性がある。深部流体のうち、スラブ起源水は高温、高塩分、高CO2濃度などの特徴を持つ地下水であるが、スラブ起源水中の微生物群集についてはよく知られていない。そこで本研究では、スラブ起源水の寄与が考えられる地下水中の微生物群集を解析し、微生物解析から地下水の起源や混合を推定することができるかどうか検討した。

 地下水試料として温泉や自然湧水を11ヵ所から採取した。採水時の水温は7.4~41.2oC、pHは6.26~8.14、電気伝導度は129~5050 mS/mであった。蛍光顕微鏡による直接計測の結果、地下水中の微生物数は2.2×103~9.3×105 cells/mLであった。次に、地下水中の微生物構成を把握するため、16S rRNA遺伝子を対象とした次世代シーケンス法による遺伝子解析を行った。その結果、11万から39万リードのシーケンスが得られ、それらは44から56の門に分類された。採取した地下水試料に共通する特徴として、主として極限環境下に生息するArchaeaが検出され(0.2%~17.4%)、Methanomicrobia綱、Methanobacteria綱、Methanococci綱などのメタン生成菌が優占していた。また、超好熱菌の一種であるArchaeoglobi綱も共通して検出された。一部の試料では、超好熱菌のThermococci綱や高度好塩性のHalobacteria綱が検出された。これら超好熱性や高度好塩性の微生物が検出されたことは、対象とした地下水が高温、高塩濃度の環境を経験したことを示唆しており、その地下水の起源としてスラブ起源水の寄与が考えられる。今後、事例を重ね微生物を利用した地下水の起源や混合の評価の可能性について検討を行う。

 本研究は、経済産業省資源エネルギー庁の委託事業「令和2年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の一環として実施しました。