日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG24] 海岸低湿地における地形・生物・人為プロセス

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.12

コンビーナ:藤本 潔(南山大学)

17:15 〜 18:30

[HCG24-P01] ミクロネシア連邦ポンペイ島におけるUAV画像および高解像度衛星データを用いたマングローブ樹種別分布図および群落区分図の作成:海面上昇に伴う表層侵食評価を目的として

*藤本 潔1、矢口 岳樹1、平田 泰雅2、渡辺 信3、羽佐田 紘大4、小野 賢二2、谷口 真吾3、古川 恵太5、Saimon Lihpai6 (1.南山大学、2.森林総合研究所、3.琉球大学、4.法政大学、5.海辺つくり研究会、6.ミクロネシア連邦ポンペイ州政府)

キーワード:マングローブ、海面上昇、UAV画像、高解像度衛星データ、樹種別分布図、群落区分図

フィリピンからミクロネシアに至る西太平洋低緯度地域では、近年10mm/年を超す海面上昇が観測されている(IPCC 2013)。一般に流入土砂量が少ないサンゴ礁型マングローブ林では、まずRhizophora属の群落が成立しマングローブ泥炭が堆積するが(Fujimoto and Miyagi 1993)、遷移が進むとその優占度が低下し泥炭堆積速度は低下すると考えられる。そのような林分は海面上昇の影響をいち早く被る可能性が高い。ポンペイ島ではRhizophora林では今のところ表層侵食はみられないものの、他の樹種へ遷移した林分では表層侵食が確認されている(藤本 2016)。本研究では、まず主要群落に設置した既存固定プロットのドローン空撮を行い、地上データから作成した植生分布図と比較しながらプロット内の樹種別樹冠投影図を作成する。次に、その樹冠投影図と高解像度衛星画像を比較することで衛星データを用いた樹種の自動判別法を検討する。さらに作成された樹種別分布図からMochida et al. (2006)に基づいた群落区分図を作成する。

ドローン画像は、樹冠の大きさ・形状・色調から樹種判別が可能である。Rhizophora apiculataは丸く比較的小面積の樹冠を持ち、緑色や茶・黄色がかった葉の色を持つ。Rhizophora stylosaは同様の特徴を持つが、やや樹冠の形状が崩れ、葉の色はより茶色に近く映る。前者は内陸側まで広く分布するのに対し、後者は海側林縁部にのみ分布するため区別が可能である。Sonneratia albaは黄緑色で、不定形の大きな樹冠を持つ。Bruguiera gymnorrhizaは青緑色で、比較的丸みのある樹冠を持つが、樹高が低く他の樹種の隙間から顔を出すように見える。Xylocarpus granatumはエメラルドグリーンに近い色を持ち、形の崩れた樹冠とB.gymnorrhiza同様に他の樹種の間に混ざる形で分布する。

衛星画像は米DigitalGlobe社のWorldView-3で撮影された、パンクロマチックオルソ画像(地上分解能40㎝)と8バンドマルチスペクトラルオルソ画像(地上分解能1.6m)を組み合わせて分析した(撮影日2018年10月17日)。5km四方の範囲内にはプロットPCとPEを含む。まずArcGIS pro上にてパンシャープンとバンド選定作業を行った後、フリーの画像編集ソフトGIMP 2.10.22を用いて樹種毎の色の違いを利用した自動判別を試みた。その結果、Rhizophora属、S. albaB. gymunorrizaまたはX. granatum の3グループの自動判別は可能であったが、R. apiculataR. stylosaB. gymunorrizaX. granatumの自動判別はできなかった。しかし、R. stylosaは目視による判別は可能であり、X. granatumは地上データおよび立木密度からその存在を推定できることから群落区分図の作成は可能となる。今後は作成された群落区分図をベースに、Rhizaophora属の立木密度や海側林縁部からの距離を考慮して、海面上昇による表層侵食実態マップを作成する予定である。

参考文献 Fujimoto and Miyagi 1993. Vegetatio 106: 137-146. 藤本潔 2016. 日本地理学会発表要旨集 90: 101. Mochida et al. 2006. In Tabuchi (Ed.) Final Report of Study Supported by Grant-In Aid for Scientific Research (A)(2), 4-10. IPCC 2013. http://www.ipcc.ch/report/ar5/wg1/