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[HCG28-P07] 柏崎平野南東部に分布する高位段丘堆積物の年代の検討
キーワード:中部更新統、上部更新統、テフラ、新潟県
1.はじめに
柏崎平野は新潟県中西部に位置し,同平野は中央丘陵および米山山塊に囲まれた南北約15km,東西約4〜7kmの拡がりを示す。
同平野に分布する上部更新統は柏崎平野団体研究グループ(1965)および岸ほか(1996)により記載されているものの,中部更新統の研究は進んでいない。
本研究では,柏崎平野南東部において高位および中位段丘面を構成する堆積物の層序を明らかにすることを目的に,中部更新統の基盤まで達するボーリング調査を実施した。
2.調査位置
岸ほか(1996)は,柏崎平野の段丘面を低位面,中位面および高位面に区分し,中位段丘面を低位より,MⅡ面,MⅠ面およびMⅠ+面に区分し,複数段認められる高位段丘面をH面に一括している。これらのうち,MⅠ面とMⅠ+面およびH面は,柏崎平野団体研究グループ(1965)の安田面および青海川面に,それぞれ対比される。
本研究地域には中位段丘面および高位段丘面(H面)が分布する。この高位段丘面(H面)はMⅠ面よりも一段高い面である。本研究ではH面上およびMⅠ面上で,それぞれ3孔ずつボーリング孔を掘削した。
3.柏崎平野南東部の層序
ボーリング調査結果によると,本研究地域の堆積物は,上方細粒化を示す堆積サイクルに基づき3層に区分される。これら3層は,上位よりMⅠ面構成層(安田層),H面構成層およびH面構成層に覆われる地層からなる。
MⅠ面下に確認されたMⅠ面構成層は,柏崎平野団体研究グループ(1965)による安田層に相当し,上部および下部に区分される。本層の最下部には礫〜粗粒砂からなる粗粒砕屑物が認められ,その上部はシルト・粘土を主体とする。本層中に目視可能な火山灰は認められない。
H面下に確認されたH面構成層の最下部には,礫からなる粗粒砕屑物が認められ,その上部はシルト・粘土を主体とする。本層最下部付近には円磨度の良い白色礫を主体とする白色礫層が分布する。この白色礫層とその上位の腐植層の特徴的な層相の組合せは,MⅠ面構成層(安田層)下に伏在して連続することが確認された。また,本層最下部に白色細粒ガラス質火山灰が認められる。
H面構成層に覆われる地層は,本調査地域中部にのみ分布する。本層の最下部は礫からなる粗粒砕屑物が認められ,その上部はシルト・粘土を主体とする。本層中に目視可能な火山灰は認められない。
4.テフラ分析結果
H面構成層最下部に挟在する白色細粒ガラス質火山灰は,火山ガラスの主成分組成から,阿多鳥浜テフラに対比される。
MⅠ面構成層(安田層)およびH面下に確認されるH面構成層を覆うローム層について,目視可能な火山灰は認められないことから,連続試料を採取し,火山灰の存否を確認するため粒子組成分析を実施した。粒子組成分析の結果,安田層下部およびローム層の基底にカミングトン閃石の集積が確認された。この集積層準に含まれるカミングトン閃石は,その主成分組成から,飯縄上樽cテフラに対比される。
5.まとめ
ボーリング調査結果および火山灰分析結果を以下に要約する。
MⅠ面下に確認されたMⅠ面構成層(安田層)は飯縄上樽cテフラを挟在することから,MIS5eに対比される。
H面下で確認されたH面構成層を覆うローム層は,飯縄上樽cテフラを挟在することから,H面構成層はMIS5eよりも前の堆積物である。
H面下で確認されたH面構成層中の白色礫層と腐植層の特徴的な層相の組合せは,MⅠ面構成層(安田層)下に連続することから,H面構成層はMⅠ面構成層(安田層)の下位に伏在すると考えられる。また,H面構成層は最下部に阿多鳥浜テフラを挟在することから,MIS7に対比される。
なお,本研究で確認されたH面構成層およびH面構成層に覆われる地層は,いずれも平野内ではMⅠ面構成層(安田層)に覆われており,本研究では両者を合わせて「古安田層」と呼ぶ。
参考文献
柏崎平野団体研究グループ.1965.柏崎平野の第四系−新潟県の第四系・そのⅥ−.新潟大学教育学部高田分光研究紀要.1.145-185.
岸清・宮脇理一郎・宮脇明子.1996.新潟県柏崎平野における上部更新統の層序と古環境の復元.第四紀研究.35(1).1-16.
柏崎平野は新潟県中西部に位置し,同平野は中央丘陵および米山山塊に囲まれた南北約15km,東西約4〜7kmの拡がりを示す。
同平野に分布する上部更新統は柏崎平野団体研究グループ(1965)および岸ほか(1996)により記載されているものの,中部更新統の研究は進んでいない。
本研究では,柏崎平野南東部において高位および中位段丘面を構成する堆積物の層序を明らかにすることを目的に,中部更新統の基盤まで達するボーリング調査を実施した。
2.調査位置
岸ほか(1996)は,柏崎平野の段丘面を低位面,中位面および高位面に区分し,中位段丘面を低位より,MⅡ面,MⅠ面およびMⅠ+面に区分し,複数段認められる高位段丘面をH面に一括している。これらのうち,MⅠ面とMⅠ+面およびH面は,柏崎平野団体研究グループ(1965)の安田面および青海川面に,それぞれ対比される。
本研究地域には中位段丘面および高位段丘面(H面)が分布する。この高位段丘面(H面)はMⅠ面よりも一段高い面である。本研究ではH面上およびMⅠ面上で,それぞれ3孔ずつボーリング孔を掘削した。
3.柏崎平野南東部の層序
ボーリング調査結果によると,本研究地域の堆積物は,上方細粒化を示す堆積サイクルに基づき3層に区分される。これら3層は,上位よりMⅠ面構成層(安田層),H面構成層およびH面構成層に覆われる地層からなる。
MⅠ面下に確認されたMⅠ面構成層は,柏崎平野団体研究グループ(1965)による安田層に相当し,上部および下部に区分される。本層の最下部には礫〜粗粒砂からなる粗粒砕屑物が認められ,その上部はシルト・粘土を主体とする。本層中に目視可能な火山灰は認められない。
H面下に確認されたH面構成層の最下部には,礫からなる粗粒砕屑物が認められ,その上部はシルト・粘土を主体とする。本層最下部付近には円磨度の良い白色礫を主体とする白色礫層が分布する。この白色礫層とその上位の腐植層の特徴的な層相の組合せは,MⅠ面構成層(安田層)下に伏在して連続することが確認された。また,本層最下部に白色細粒ガラス質火山灰が認められる。
H面構成層に覆われる地層は,本調査地域中部にのみ分布する。本層の最下部は礫からなる粗粒砕屑物が認められ,その上部はシルト・粘土を主体とする。本層中に目視可能な火山灰は認められない。
4.テフラ分析結果
H面構成層最下部に挟在する白色細粒ガラス質火山灰は,火山ガラスの主成分組成から,阿多鳥浜テフラに対比される。
MⅠ面構成層(安田層)およびH面下に確認されるH面構成層を覆うローム層について,目視可能な火山灰は認められないことから,連続試料を採取し,火山灰の存否を確認するため粒子組成分析を実施した。粒子組成分析の結果,安田層下部およびローム層の基底にカミングトン閃石の集積が確認された。この集積層準に含まれるカミングトン閃石は,その主成分組成から,飯縄上樽cテフラに対比される。
5.まとめ
ボーリング調査結果および火山灰分析結果を以下に要約する。
MⅠ面下に確認されたMⅠ面構成層(安田層)は飯縄上樽cテフラを挟在することから,MIS5eに対比される。
H面下で確認されたH面構成層を覆うローム層は,飯縄上樽cテフラを挟在することから,H面構成層はMIS5eよりも前の堆積物である。
H面下で確認されたH面構成層中の白色礫層と腐植層の特徴的な層相の組合せは,MⅠ面構成層(安田層)下に連続することから,H面構成層はMⅠ面構成層(安田層)の下位に伏在すると考えられる。また,H面構成層は最下部に阿多鳥浜テフラを挟在することから,MIS7に対比される。
なお,本研究で確認されたH面構成層およびH面構成層に覆われる地層は,いずれも平野内ではMⅠ面構成層(安田層)に覆われており,本研究では両者を合わせて「古安田層」と呼ぶ。
参考文献
柏崎平野団体研究グループ.1965.柏崎平野の第四系−新潟県の第四系・そのⅥ−.新潟大学教育学部高田分光研究紀要.1.145-185.
岸清・宮脇理一郎・宮脇明子.1996.新潟県柏崎平野における上部更新統の層序と古環境の復元.第四紀研究.35(1).1-16.