17:15 〜 18:30
[HDS07-P01] 屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯(恵那山-猿投山北断層帯)の長期評価の課題
キーワード:活断層、地震、長期評価
はじめに
地震調査研究推進本部は、「屏風山・恵那山断層帯および猿投山断層帯」の北部を2020~2022年度の重点調査対象に選んだ。重点調査の目的は活断層評価および強震動評価の改善である。この事業を受託した名古屋大学を中心とする調査グループは、従来の評価の問題点を纏め、これを改善するための調査計画を立案した。本発表は事業全体の方向性を示すとともに、2020年度調査結果の一部を速報する。
課題と調査目的
「屏風山・恵那山断層帯および猿投山断層帯」は、恵那山地から岡崎平野および知多半島に至る総延長100kmを超える長大な活断層帯である。これを構成する各断層は互いに近接し、その震源断層シナリオを描くことが難しい。断層周辺には名古屋市を初めとする人口集中地域や、豊田市を初めとする産業集中地域もある。注目が集まる南海トラフ地震の直前・直後に起きやすいとも言われる内陸直下地震への備えは、社会的重要度も高い。
本断層帯に関する調査は1995~2000年頃に集中的に実施されたが、活動履歴や断層構造に関するデータは乏しい。そのデータに基づいて、従前の長期評価において、恵那山-猿投山北断層帯はランクA*、屏風山断層および加木屋断層はランクA、猿投-高浜断層はランクZ、赤河断層はランクX、「名古屋市付近の断層」は不明とされている。
従来の活断層評価には以下の問題がある。
1) 国土地理院の活断層図(1996~2016)、活断層詳細デジタルマップ(2002)、岐阜県活断層図(2010)を比較すると、トレース認定に違いがあり、活断層相互の連続性が不明である。
2) 特性の異なる恵那山断層と猿投山北断層が同時に活動する(一括活動モデル)として想定している。
3) 屏風山断層については具体的な活動履歴がない。地震発生確率をポアソン過程で求めているため、更新過程を用いた他の断層の活動確率と比較できない。
4) 猿投-高浜断層帯北部については1地点で確認された活動時期を最新活動と見なし、全長51kmが一括で活動した場合のずれ量を4mと仮定して、計算によりZランクと評価している。
以上の評価は十分な調査データにより見直す必要があり、また複数のケースを想定せざるを得ない場合には、それに応じた適切な情報提供が求められる。
調査計画
我々は以下の5項目を検討する。1)断層の詳細な位置・形状、活動性に関する変動地形調査、2)トレンチによる活動履歴調査、3)地下構造探査を実施し、震源断層シナリオ(とくに活動区間)を再検討し、公開型の活断層データベースを構築する。さらに4)地盤構造モデルを詳細化し、断層近傍の強震動にも注目した最新手法による強震動予測を行う。また、5)予測情報が不確実性を有することに配慮した、適切な情報発信・リスクコミュニケーションのあり方を地域社会と協働して取り纏める。
以上により、断層分布が複雑で活動区間の想定が容易でない地域における活断層評価手法・強震動予測の提案を目指す。
実施にあたっては、名古屋大学減災連携研究センター、清流の国ぎふ防災・減災センターをベースに自治体や市民との連携を深める。
(サブテーマ1)震源断層シナリオ評価のための詳細位置形状・変位量調査および総合解析
(名古屋大学減災連携研究センター)
(サブテーマ2)地震発生予測のための活動履歴調査
(産業技術総合研究所)
(サブテーマ3)断層の三次元地下形状把握のための調査観測
(名古屋大学地震火山研究センター)
(サブテーマ4)断層近傍および都市域における強震動予測向上のための調査
(防災科学技術研究所)
(サブテーマ5)不確定性を有する地震予測情報に関する情報発信のあり方に関する調査研究
(名古屋大学減災連携研究センター)(岐阜大学)
*参加機関:国立研究開発法人 産業技術総合研究所、国立研究開発法人 防災科学技術研究所、国立大学法人 東海国立大学機構 岐阜大学
協力機関:国立大学法人 東京大学地震研究所、国立大学法人 岡山大学、学校法人 法政大学、国立大学法人 広島大学、国立大学法人 信州大学、国立大学法人 富山大学、学校法人 東洋大学、学校法人 関西大学、(公財)地震予知総合研究振興会 東濃地震科学研究所
地震調査研究推進本部は、「屏風山・恵那山断層帯および猿投山断層帯」の北部を2020~2022年度の重点調査対象に選んだ。重点調査の目的は活断層評価および強震動評価の改善である。この事業を受託した名古屋大学を中心とする調査グループは、従来の評価の問題点を纏め、これを改善するための調査計画を立案した。本発表は事業全体の方向性を示すとともに、2020年度調査結果の一部を速報する。
課題と調査目的
「屏風山・恵那山断層帯および猿投山断層帯」は、恵那山地から岡崎平野および知多半島に至る総延長100kmを超える長大な活断層帯である。これを構成する各断層は互いに近接し、その震源断層シナリオを描くことが難しい。断層周辺には名古屋市を初めとする人口集中地域や、豊田市を初めとする産業集中地域もある。注目が集まる南海トラフ地震の直前・直後に起きやすいとも言われる内陸直下地震への備えは、社会的重要度も高い。
本断層帯に関する調査は1995~2000年頃に集中的に実施されたが、活動履歴や断層構造に関するデータは乏しい。そのデータに基づいて、従前の長期評価において、恵那山-猿投山北断層帯はランクA*、屏風山断層および加木屋断層はランクA、猿投-高浜断層はランクZ、赤河断層はランクX、「名古屋市付近の断層」は不明とされている。
従来の活断層評価には以下の問題がある。
1) 国土地理院の活断層図(1996~2016)、活断層詳細デジタルマップ(2002)、岐阜県活断層図(2010)を比較すると、トレース認定に違いがあり、活断層相互の連続性が不明である。
2) 特性の異なる恵那山断層と猿投山北断層が同時に活動する(一括活動モデル)として想定している。
3) 屏風山断層については具体的な活動履歴がない。地震発生確率をポアソン過程で求めているため、更新過程を用いた他の断層の活動確率と比較できない。
4) 猿投-高浜断層帯北部については1地点で確認された活動時期を最新活動と見なし、全長51kmが一括で活動した場合のずれ量を4mと仮定して、計算によりZランクと評価している。
以上の評価は十分な調査データにより見直す必要があり、また複数のケースを想定せざるを得ない場合には、それに応じた適切な情報提供が求められる。
調査計画
我々は以下の5項目を検討する。1)断層の詳細な位置・形状、活動性に関する変動地形調査、2)トレンチによる活動履歴調査、3)地下構造探査を実施し、震源断層シナリオ(とくに活動区間)を再検討し、公開型の活断層データベースを構築する。さらに4)地盤構造モデルを詳細化し、断層近傍の強震動にも注目した最新手法による強震動予測を行う。また、5)予測情報が不確実性を有することに配慮した、適切な情報発信・リスクコミュニケーションのあり方を地域社会と協働して取り纏める。
以上により、断層分布が複雑で活動区間の想定が容易でない地域における活断層評価手法・強震動予測の提案を目指す。
実施にあたっては、名古屋大学減災連携研究センター、清流の国ぎふ防災・減災センターをベースに自治体や市民との連携を深める。
(サブテーマ1)震源断層シナリオ評価のための詳細位置形状・変位量調査および総合解析
(名古屋大学減災連携研究センター)
(サブテーマ2)地震発生予測のための活動履歴調査
(産業技術総合研究所)
(サブテーマ3)断層の三次元地下形状把握のための調査観測
(名古屋大学地震火山研究センター)
(サブテーマ4)断層近傍および都市域における強震動予測向上のための調査
(防災科学技術研究所)
(サブテーマ5)不確定性を有する地震予測情報に関する情報発信のあり方に関する調査研究
(名古屋大学減災連携研究センター)(岐阜大学)
*参加機関:国立研究開発法人 産業技術総合研究所、国立研究開発法人 防災科学技術研究所、国立大学法人 東海国立大学機構 岐阜大学
協力機関:国立大学法人 東京大学地震研究所、国立大学法人 岡山大学、学校法人 法政大学、国立大学法人 広島大学、国立大学法人 信州大学、国立大学法人 富山大学、学校法人 東洋大学、学校法人 関西大学、(公財)地震予知総合研究振興会 東濃地震科学研究所