日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS08] 人間環境と災害リスク

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.15 (Zoom会場15)

コンビーナ:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、佐藤 浩(日本大学文理学部)、座長:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、佐藤 浩(日本大学文理学部)

14:50 〜 15:05

[HDS08-06] 地域の液状化リスク認知のための微地形分類に基づく液状化発生傾向図の作成方針

*中埜 貴元1、遠藤 涼1、井上 洋之2、山科 望2、渡邉 真悟3、高田 圭太3、藤田 琢磨3 (1.国土交通省国土地理院、2.国土交通省都市局、3.復建調査設計(株))

キーワード:液状化発生傾向図、微地形分類、液状化ハザードマップ

1.はじめに
 国土交通省では,液状化の事前防災を促し,被害を軽減することを目的として,H30~R2年度にかけて総合技術研究開発プロジェクト「リスクコミュニケーションを取るための液状化ハザードマップ作成手法の開発」を実施した.液状化による被害を軽減するためには,住民や事業者と行政とが地域の液状化発生傾向や液状化が発生することにより生じる宅地の被害リスクについて共通認識を持ち,事前の備えとして何が必要かを共に考える,すなわちリスクコミュニケーションを取ることが重要である.このリスクコミュニケーションに活用できるツールとして液状化ハザードマップを位置づけ,その作成方法を検討した.
 リスクコミュニケーションの第一歩として,住民・事業者と行政とが地域の液状化発生傾向を確認・共有するためには,“地域内のどのような場所で液状化の発生傾向が強くなるのか”を理解するための情報をハザードマップに盛り込む必要がある.その情報として,過去の地震における液状化発生地点と微地形との関係に基づき,微地形分類ごとの液状化発生傾向を評価・区分した「液状化発生傾向図」が有効と考えられる.本発表では,この「液状化発生傾向図」の作成方針について報告する.

2.「液状化発生傾向図」の基本方針と作成手順
 「液状化発生傾向図」は,対象地域において“どのような場所で液状化発生傾向が強くなるのか”を示す資料として,微地形等の情報を基に作成する.「液状化発生傾向図」では,微地形及び埋立地等の人工改変地や河道変遷,過去の地震における液状化発生履歴に基づき,対象地域の液状化発生傾向を相対的に5段階で評価・区分して示すことを標準とした.なお,「液状化発生傾向図」は液状化ハザードマップの主要な情報の一つとなるため,液状化発生傾向が強くなる場所と住宅地や主要道路等のインフラ施設との位置関係が認識しやすいように,縮尺1/25,000 程度またはそれより大きな縮尺で作成するとともに,微地形や人工改変地の形状・分布は,領域表示(ポリゴン表示)により示すことを標準とした.
 「液状化発生傾向図」の作成手順は次のとおりである.
(1)資料の収集
(2)微地形分類図等の作成・整理(①地形判読による微地形分類図の作成,②人工改変地の抽出・整理,③過去の地震における液状化発生履歴の整理)
(3)液状化発生傾向の評価・区分
(4)液状化発生傾向図の作成.

3.「液状化発生傾向図」作成時の要点
(1)資料の収集
 ・「液状化発生傾向図」の作成を効率的に行うために必要となる参考資料として,既往微地形分類図や空中写真,旧版地図,人工改変地の造成資料,過去の液状化発生履歴に関する資料,ボーリングデータ等の地盤情報等を収集.

(2)微地形分類図等の作成・整理
 ①地形判読による微地形分類図の作成
  ・後述(3)の液状化発生傾向の評価・区分に適した微地形分類図が存在しない場合は,地形図やDEM,空中写真等を用いた地形判読により微地形分類図を作成.
  ・微地形分類図の縮尺は1/25,000 程度またはそれより大きな縮尺.
  ・既往の微地形分類図が存在する時は,それらを参考にすることで微地形分類図の作成を簡略化できる場合があるが,再分類や再整理が必要.
 ②人工改変地の抽出・整理
  ・人工改変地は液状化に対して最も脆弱な地域であり,液状化発生傾向の把握に非常に重要であることから,旧版地図や空中写真,埋立地・干拓地の造成資料等を参考に,埋立地,干拓地,砂利(砂鉄)等採取後の埋戻地,低地(湿地)上の盛土造成地,浅い谷や凹地の盛土地,谷埋め盛土造成地の範囲を可能な限り抽出.
  ・縮尺は微地形分類図と同等とし,微地形分類図とは別に整理.
 ③過去の地震における液状化発生履歴の整理
  ・過去に液状化が発生した場所は,将来の地震でも再び液状化する可能性が高いため,対象地域における過去の液状化発生履歴を,図書や研究論文・資料等を基に整理.

(3)液状化発生傾向の評価・区分
 ・上記(2)で作成した微地形分類図及び人工改変地等の情報を基に,表-1に示した5 段階の評価区分を用いて,微地形及び人工改変地の種類から想定される液状化発生傾向を評価・区分.

(4)液状化発生傾向図の作成
 ・上記(3)の液状化発生傾向の評価結果を基に,地図情報としての「液状化発生傾向図」を,微地形分類図と同等の縮尺で作成.
 ・過去の液状化発生履歴情報は必要に応じて「液状化発生傾向図」に重畳表示.

4.まとめ
 本発表で報告した「液状化発生傾向図」は,液状化ハザードマップの地図情報として掲載され,その他の災害学習情報と合わせて活用されることになる.詳細は国土交通省のHPから公開される「リスクコミュニケーションを取るための液状化ハザードマップ作成の手引き」(仮題)を参照されたい.