17:15 〜 18:30
[HDS08-P01] 豪雨災害からの復興プロセスにおけるレジリエンス力の役割
キーワード:災害リスクマネジメント、復興カレンダー、レジリエンス、豪雨
国連防災機関(UN Office for Disaster Risk Reduction, 2020)によれば、ここ20年間で自然災害の発生が劇的に増加している。大規模な災害が頻発して発生するような状況では、従来のような災害の影響を抑制する防災や減災の枠組みだけでは限界がある。最近では、災害からの復興プロセスを強化するためのレジリエントなコミュニティを促進するための新たな災害リスクマネジメントのあり方が注目されている。そこで、本研究では、西日本豪雨災害における復興プロセスと住民のレジリエンスの関連について検討を加える。
西日本豪雨災害では、広島県と岡山県に物的被害や人的被害が多く生じた。そこで、本研究では、2019年1月下旬から2月上旬にかけて、西日本豪雨災害で大きな被害を受けた広島県の13地区と岡山県の6地区の住民を対象に、合計1000名にweb調査を行った。復興カレンダー(Kimura, 2007)によるプロセスの分析の結果(Figure1)、災害ユートピア期(災害から1~2ヶ月後)、現実への帰還期(災害から6~12ケ月後)に多くの側面で復興していることが示唆された。そこで、ユートピア期までと現実への帰還期までの復興感の進捗の違いを検討するため、それぞれの時期の復興カレンダーのカウントデータを従属変数にした一般化線形モデルの分析を行った。まず、災害ユートピア期までの復興感のカウントデータを従属変数、性別、年齢、心理的レジリエンス、浸水被害、人的被害、レジリエンスとの交互作用項を独立変数として、ポワソン分布による一般化線形モデルをベイズ推定により分析を行った。その結果、性別(b = -.08, 95%CI = -.15 ~ -.01)、浸水被害のダミー変数(床上被害vsその他; b = -.94, 95%CI = -1.26 ~ -.64)、人的被害(b = -.41, 95%CI = -.70 ~ -.14)、年齢×レジリエンスの交互作用(b = .003, 95%CI = .0003 ~ .01)が確認された。ベイズ推定の事後分布のプロットを確認したところ、男性よりも女性の復興感が低かった(Figure2_a)。また、床上被害を受けた住民は、それ以外の住民よりも復興感が低かった(Figure2_b)。人的被害が大きくなると、復興感は低くなっていた(Figure2_c)。年配の住民でレジリエンスが低いと復興感は低いが、年配の住民でもレジリエンスが高いと復興感が高くなっていた(Figure2_c)。次に、現実への帰還期までの復興感の変化を検討するため、現実への帰還期ユートピア期のカウントデータの差分を算出した。この差分のカウントデータを従属変数に同様のポワソン分布による一般化線形モデルをベイズ推定により分析を行った。性別(b = .28, 95%CI = .16 ~ .41)、浸水被害ダミー(床上被害vsその他; b = .49, 95%CI= .19 ~ .78)、レジリエンス×浸水被害(床上被害vsその他)の交互作用(b = -.41, 95%CI = -.75 ~ -.08)が確認された。ベイズ推定の事後分布のプロットを確認したところ、女性の方が男性よりも復興感が高かった(Figure3_a)。また、床上被害を受けた住民の方が、それ以外の住民よりも復興感が高かった(Figure3_b)。さらに、床上浸水の住民は、レジリエンスが低い方が、復興感が高くなる傾向がみられた(Figure3_c)。
以上、豪雨災害からの復興における人々の様相は、被害の程度と時間経過によって異なると考えられる。災害から2ヶ月迄のユートピア期は、被害が小さい人が復興に向かう段階である。年齢が高い人や大きな被害を受けた人でも、レジリエンスが高い人は、困難な状況に打ち勝つことができるため復興が早くなる。災害から半年後迄の現実への帰還期は、被害が大きい人が復興に向かう段階である。とくに、レジリエンスが低かった人は、この段階から復興に向けての活動するようになると考えられる。このように、住民のレジリエンスは、復興そのものに直接的な影響を及ぼすのではなく、復興のスピードを促進する要因として作用としている。本研究では、新たな災害リスクマネジメントとして、被害の程度、災害からの時間経過に加え、住民のレジリエンスといったコミュニティの資源で復興プロセスをとらえる重要性を示唆している。
西日本豪雨災害では、広島県と岡山県に物的被害や人的被害が多く生じた。そこで、本研究では、2019年1月下旬から2月上旬にかけて、西日本豪雨災害で大きな被害を受けた広島県の13地区と岡山県の6地区の住民を対象に、合計1000名にweb調査を行った。復興カレンダー(Kimura, 2007)によるプロセスの分析の結果(Figure1)、災害ユートピア期(災害から1~2ヶ月後)、現実への帰還期(災害から6~12ケ月後)に多くの側面で復興していることが示唆された。そこで、ユートピア期までと現実への帰還期までの復興感の進捗の違いを検討するため、それぞれの時期の復興カレンダーのカウントデータを従属変数にした一般化線形モデルの分析を行った。まず、災害ユートピア期までの復興感のカウントデータを従属変数、性別、年齢、心理的レジリエンス、浸水被害、人的被害、レジリエンスとの交互作用項を独立変数として、ポワソン分布による一般化線形モデルをベイズ推定により分析を行った。その結果、性別(b = -.08, 95%CI = -.15 ~ -.01)、浸水被害のダミー変数(床上被害vsその他; b = -.94, 95%CI = -1.26 ~ -.64)、人的被害(b = -.41, 95%CI = -.70 ~ -.14)、年齢×レジリエンスの交互作用(b = .003, 95%CI = .0003 ~ .01)が確認された。ベイズ推定の事後分布のプロットを確認したところ、男性よりも女性の復興感が低かった(Figure2_a)。また、床上被害を受けた住民は、それ以外の住民よりも復興感が低かった(Figure2_b)。人的被害が大きくなると、復興感は低くなっていた(Figure2_c)。年配の住民でレジリエンスが低いと復興感は低いが、年配の住民でもレジリエンスが高いと復興感が高くなっていた(Figure2_c)。次に、現実への帰還期までの復興感の変化を検討するため、現実への帰還期ユートピア期のカウントデータの差分を算出した。この差分のカウントデータを従属変数に同様のポワソン分布による一般化線形モデルをベイズ推定により分析を行った。性別(b = .28, 95%CI = .16 ~ .41)、浸水被害ダミー(床上被害vsその他; b = .49, 95%CI= .19 ~ .78)、レジリエンス×浸水被害(床上被害vsその他)の交互作用(b = -.41, 95%CI = -.75 ~ -.08)が確認された。ベイズ推定の事後分布のプロットを確認したところ、女性の方が男性よりも復興感が高かった(Figure3_a)。また、床上被害を受けた住民の方が、それ以外の住民よりも復興感が高かった(Figure3_b)。さらに、床上浸水の住民は、レジリエンスが低い方が、復興感が高くなる傾向がみられた(Figure3_c)。
以上、豪雨災害からの復興における人々の様相は、被害の程度と時間経過によって異なると考えられる。災害から2ヶ月迄のユートピア期は、被害が小さい人が復興に向かう段階である。年齢が高い人や大きな被害を受けた人でも、レジリエンスが高い人は、困難な状況に打ち勝つことができるため復興が早くなる。災害から半年後迄の現実への帰還期は、被害が大きい人が復興に向かう段階である。とくに、レジリエンスが低かった人は、この段階から復興に向けての活動するようになると考えられる。このように、住民のレジリエンスは、復興そのものに直接的な影響を及ぼすのではなく、復興のスピードを促進する要因として作用としている。本研究では、新たな災害リスクマネジメントとして、被害の程度、災害からの時間経過に加え、住民のレジリエンスといったコミュニティの資源で復興プロセスをとらえる重要性を示唆している。