17:15 〜 18:30
[HDS08-P07] 国公立大学における留学生への防災情報・学習の提供状況とその課題
キーワード:留学生、防災教育、防災情報、大学、アンケート調査
本研究では、国公立大学での留学生に対する防災情報の周知,防災学習の実施・支援の状況を明らかにする。全国の179大学の留学生センターなど留学生支援にあたる部署にアンケートを郵送配布した(回収数78,回収率43.6%)。
【調査結果】
●オリエンテーションでの防災情報の提供状況
オリエンテーションでの防災情報の提供は52.6%が,自治体等が発行している防災情報の配布・掲示は55.1%が「実施している」。日本語以外での防災情報の提供を「実施している」大学は44.9%で,利用言語の内訳は英語(100%)、簡体中国語(54.3%)、韓国語(37.1%)、繁体中国語(14.3%)、その他の言語(11.4%)であった。
●災害・防災に関わる学習機会の設置状況
大学-留学生間の安否確認方法やその利用訓練は,「仕組みもあり、訓練も実施している」大学は30校にとどまった。また,「大学内の避難訓練の実施」は、「実施していて、留学生も多く参加している」が34校、「実施しているが、留学生の参加率が低い」が16校であった。地域と連携した防災イベントや合同訓練等の有無は、「実施なし」が66校と多い。留学生に対する地域の防災訓練等の案内や参加の呼び掛けの実施は15校にとどまった。
日本の災害や防災を学ぶ留学生対象の授業を「設置している」のは18校で、うち「多くの留学生がそれを履修」は4校であった。「災害時に使われる語彙や表現の学習」を含む日本語教育の授業は「実施なし」が58校であった。
●大学が感じている課題
留学生への防災支援・指導上の課題として「意思疎通や日本語能力の不十分さ」(43校),「被災可能性の未認識」(30校)、「母国の文化・生活様式によるが影響」(28校)、「分かりにくい専門的用語」(28校)、「母国での災害経験や学習機会の少なさとそれに起因する災害・防災への理解・イメージ不足」(26校)が挙がった。そのほか、「留学生が自分の住む地域の自然環境の特徴や町の構造について十分理解していない」(22校)、「情報提供ルートや場の未整備」(22校)、「被災時の留学生と地域との協働の難しさ」(21校)や「留学生と地域とのつながりの希薄さ」(21校)も課題と考える大学がみられる。
なお,留学生への地域に関わる災害や防災の学習支援、指導や情報提供の必要性について各大学の見解を問うたところ、「学内の防災に関する情報周知・訓練等だけでなく、地域に関わる災害や防災の支援、情報提供を実施すべきであるが、十分実行に移せていない」が45校と最多であった。
【アンケート結果からみえる課題と改善策】
知識・経験を有する日本人学生と比して,留学生は災害や防災への知識や意識が同程度あるとは限らない.留学生が日本という高リスク地域で就学・生活を始めるにあたり,大学のオリエンテーションでの情報提供や訓練、イベントや授業などは,災害リスクを認識し,備える動機づけの重要な機会となり得る。
被災経験を有する,あるいは高リスク地域の大学や,留学生比率の高い大学では,留学生の災害・防災の知識や意識の向上を促す取り組みがみられた。一方で、情報提供や訓練を実施している大学が半数程度にとどまっている点は課題である。被災経験のある留学生の体験談に触れる,起震車の体験や備蓄品にふれる学習,ハザードマップや指定避難場所の確認活動など,遭う可能性がある災害とその特性を知り,イメージを抱くことができる支援の工夫も求められる。学内ですべての教材や活動を準備することは困難でも、行政や留学生支援団体,地域組織などとの連携で,学ぶ機会を確保できる面もある。
難しい日本語表現での防災情報の提示や日常利用しない専門的な用語は、多くの留学生が十分理解していない可能性がある。そのため、極力「やさしい日本語」に置き換えて説明を示す、配布資料や説明に用語の意味を付記するなどの配慮が必要と考えられる。また,日本語学習の時間に,自治体が配布するハザードマップや資料,TV・インターネットなどで頻出の防災用語とその意味,使用例に触れる機会を設ける工夫も考えられる。
発災時の避難等では,留学生は暮らす地域とのかかわりをもつ必要が生じる。大学が仲を取り持つことにより,スムーズな交流の実現や意思疎通,情報共有の場の構築,相互の理解を促すことも求められよう。
多くの大学の留学生担当部署では、留学生の日本語能力の問題や災害や防災学習の経験の少なさからくる防災知識・意識の低さ、生活習慣の違い、地域理解や地域との連携の不十分さなどを認識している。一方で、これら課題を改善するための環境整備や防災学習の工夫は,必要性は感じつつもその充実に苦心している。留学生支援で対応を要する事柄は様々あり,多くの時間や労,費用,人的資源を防災学習・活動の充実に割くことは難しいが,少しの工夫や配慮で状況を改善,好転できる面もあり,そこから着手することが望まれる。
【調査結果】
●オリエンテーションでの防災情報の提供状況
オリエンテーションでの防災情報の提供は52.6%が,自治体等が発行している防災情報の配布・掲示は55.1%が「実施している」。日本語以外での防災情報の提供を「実施している」大学は44.9%で,利用言語の内訳は英語(100%)、簡体中国語(54.3%)、韓国語(37.1%)、繁体中国語(14.3%)、その他の言語(11.4%)であった。
●災害・防災に関わる学習機会の設置状況
大学-留学生間の安否確認方法やその利用訓練は,「仕組みもあり、訓練も実施している」大学は30校にとどまった。また,「大学内の避難訓練の実施」は、「実施していて、留学生も多く参加している」が34校、「実施しているが、留学生の参加率が低い」が16校であった。地域と連携した防災イベントや合同訓練等の有無は、「実施なし」が66校と多い。留学生に対する地域の防災訓練等の案内や参加の呼び掛けの実施は15校にとどまった。
日本の災害や防災を学ぶ留学生対象の授業を「設置している」のは18校で、うち「多くの留学生がそれを履修」は4校であった。「災害時に使われる語彙や表現の学習」を含む日本語教育の授業は「実施なし」が58校であった。
●大学が感じている課題
留学生への防災支援・指導上の課題として「意思疎通や日本語能力の不十分さ」(43校),「被災可能性の未認識」(30校)、「母国の文化・生活様式によるが影響」(28校)、「分かりにくい専門的用語」(28校)、「母国での災害経験や学習機会の少なさとそれに起因する災害・防災への理解・イメージ不足」(26校)が挙がった。そのほか、「留学生が自分の住む地域の自然環境の特徴や町の構造について十分理解していない」(22校)、「情報提供ルートや場の未整備」(22校)、「被災時の留学生と地域との協働の難しさ」(21校)や「留学生と地域とのつながりの希薄さ」(21校)も課題と考える大学がみられる。
なお,留学生への地域に関わる災害や防災の学習支援、指導や情報提供の必要性について各大学の見解を問うたところ、「学内の防災に関する情報周知・訓練等だけでなく、地域に関わる災害や防災の支援、情報提供を実施すべきであるが、十分実行に移せていない」が45校と最多であった。
【アンケート結果からみえる課題と改善策】
知識・経験を有する日本人学生と比して,留学生は災害や防災への知識や意識が同程度あるとは限らない.留学生が日本という高リスク地域で就学・生活を始めるにあたり,大学のオリエンテーションでの情報提供や訓練、イベントや授業などは,災害リスクを認識し,備える動機づけの重要な機会となり得る。
被災経験を有する,あるいは高リスク地域の大学や,留学生比率の高い大学では,留学生の災害・防災の知識や意識の向上を促す取り組みがみられた。一方で、情報提供や訓練を実施している大学が半数程度にとどまっている点は課題である。被災経験のある留学生の体験談に触れる,起震車の体験や備蓄品にふれる学習,ハザードマップや指定避難場所の確認活動など,遭う可能性がある災害とその特性を知り,イメージを抱くことができる支援の工夫も求められる。学内ですべての教材や活動を準備することは困難でも、行政や留学生支援団体,地域組織などとの連携で,学ぶ機会を確保できる面もある。
難しい日本語表現での防災情報の提示や日常利用しない専門的な用語は、多くの留学生が十分理解していない可能性がある。そのため、極力「やさしい日本語」に置き換えて説明を示す、配布資料や説明に用語の意味を付記するなどの配慮が必要と考えられる。また,日本語学習の時間に,自治体が配布するハザードマップや資料,TV・インターネットなどで頻出の防災用語とその意味,使用例に触れる機会を設ける工夫も考えられる。
発災時の避難等では,留学生は暮らす地域とのかかわりをもつ必要が生じる。大学が仲を取り持つことにより,スムーズな交流の実現や意思疎通,情報共有の場の構築,相互の理解を促すことも求められよう。
多くの大学の留学生担当部署では、留学生の日本語能力の問題や災害や防災学習の経験の少なさからくる防災知識・意識の低さ、生活習慣の違い、地域理解や地域との連携の不十分さなどを認識している。一方で、これら課題を改善するための環境整備や防災学習の工夫は,必要性は感じつつもその充実に苦心している。留学生支援で対応を要する事柄は様々あり,多くの時間や労,費用,人的資源を防災学習・活動の充実に割くことは難しいが,少しの工夫や配慮で状況を改善,好転できる面もあり,そこから着手することが望まれる。