日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS09] 津波とその予測

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.12

コンビーナ:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)

17:15 〜 18:30

[HDS09-P02] 津波の誘導磁場を利用した早期津波検知の試み
---沿岸施設の津波防災を目指して---

*舘畑 秀衛1、大久 保寛2、横州 弘武3 (1.日本気象協会、2.東京都立大学、3.中部電力㈱ 原子力安全技術研究所)

キーワード:津波防災、誘導磁場、原子力発電所

津波と地球磁場とのファラデー効果によって海水中に誘導電流が流れ,それによって2次的に発生する誘導磁場が観測されることが知られており,陸上からの観測例も報告されている.
 我々は,静岡県に位置する中部電力㈱浜岡原子力発電所の津波防災・減災に資する地球磁場計測を用いた津波の早期検知の研究に取組んでおり,敷地内に磁力計を設置して2020年に約1年間の試験観測を行った.この観測方法の長所は,①当該地点であれば,海岸への津波到達時刻より10分ほど早期に津波が検知できること,②安価でコンパクトな磁力観測装置1基で十分観測可能であるため,対費用効果が大きいこと等である.また,同時に理学的な興味深さも持っている.
 試験観測に先立ち,観測され得る津波誘導磁場の規模を見積もるため,2011年の東北地方太平洋沖地震による津波と南海トラフ巨大地震の想定モデルの一つをケースとした津波を対象にシミュレーションを行った.シミュレーションによると,当該地点において津波到達の10分程前に,約8nT程度の津波誘導磁場が観測可能との結果が得られた.試験観測期間の2019年12月~2020年12月の間には,近傍で津波発生が無かったため,津波誘導磁場は観測できなかったものの,観測点付近での大きなノイズ源と考えられる東海道線(直流電車)からの影響が確認された.検討結果より,幾つかの簡単なノイズリダクションを行うことで,当該地点における津波検知の可能性が確認できたことから,本発表では,シミュレーション結果,得られた磁場観測結果,実用を目指した観測点の配置等について紹介させて頂く.
 なお,本研究の一部は,中部電力(株)2018年度公募研究「極超低周波音波観測と地球磁場観測を組合せた巨大津波検知技術の新展開」の支援を受け実施している.