日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2021年6月5日(土) 13:45 〜 15:15 Ch.16 (Zoom会場16)

コンビーナ:小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、内田 太郎(筑波大学)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、座長:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)

13:45 〜 14:00

[HDS10-01] 花崗岩の風化様式と斜面崩壊様式

*千木良 雅弘1、平田 康人2 (1.公財 深田地質研究所、2.一財 電力中央研究所)

キーワード:花崗岩、風化、斜面崩壊、球状風化、マイクロシーティング

風化花崗岩地域では,豪雨によってたびたび多数の斜面崩壊が発生してきた.たとえば,1999,2014,2018と度重なる広島の豪雨災害,2019年の台風19号による宮城県南部の災害が記憶に新しい.これらの素因となった風化の様式には2タイプあった.一つは,花崗岩が除荷に伴って薄く割れるマイクロシーティング,もう一つは球状のコアストンが形成されてゆく球状風化である.前者の場合,斜面表層部がルーズになって土層が形成され,それが崩壊する.後者の場合,コアストンの間に挟まれるマサが地中侵食され,コアストンが不安定になって崩壊する.花崗岩にこれら2タイプの風化様式があることは古くから知られていたが,なぜこのような違いが生じるのか全くわかっていなかった.また,花崗岩には,トアは岩海といった特徴的な地形が形成されることも知られていたが,その成因は明らかではなかった.我々は,UAVとSfMを使って,高角節理の発達する花崗岩体を様々な角度から観察し,花崗岩にも柱状節理が発達することを10か所で見出した.これらの多くの場所でトアが形成されており,それは柱状節理に囲まれた石柱であった.また,日本では岩海として著名な広島県久井の岩海で,丸い岩塊だけでなく,多角柱の形態を残した岩塊も数多く含まれることを見出し,それが,地中で球状風化を受けていた石柱の洗い出しによるものであることを明らかにした.さらに,岩塊上部に柱状節理が形成されており,その下位には塊状でシーティングおよびマイクロシーティングの発達する花崗岩があることをマレーシアのキナバル山などの大規模な露頭で認めた.このような配置は花崗岩の定置時にできたものと推定される.つまり,花崗岩の定置時にすでに風化と崩壊の様式が定められていたことになる.