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[HDS10-P08] 地すべり活動とその前兆:岐阜県郡上市奥田洞と静岡市口坂本の事例
キーワード:地すべり、山体重力変形地形
斜面災害の被害軽減のためには斜面変動の予知が重要である.2011年の紀伊半島豪雨災害以降,山体が重力の影響によって変形した結果形成される山体重力変形地形が,斜面変動の予知に利用できる可能性が示唆されている.演者らは,山体重力変形地形の形成過程の解明を目的に研究をすすめているが,本発表では,地すべり活動と山体重力変形の関係について2つの事例をもとに考察する.一つ目は岐阜県郡上市奥田洞の地すべりで,ここでは2018年7月の豪雨により崩壊土量約20,000m3の崩壊が発生した.2020年6月に実施した降雨後の現地調査により,2018年崩壊の滑落崖の上部に重力変形による亀裂が形成されていることがわかった.その直後,変状の全体像を把握するために,航空レーザ測量を実施した.2020年7月には,この亀裂に沿って再度崩壊が発生した.このように,地すべり発生前に滑落崖上部に亀裂が発生することは,他の地すべり現場でもしばしば観察されている.二つ目は静岡市葵区の口坂本地すべりで,ここでは,A地区,B地区,No.2地すべりと呼ばれる3つの地すべりが知られている.A地区は1960年に地すべり防止区域に指定され,その後対策工が行われた結果,現在では活動が沈静化している.B地区は,1988年から活動が活発化し対策工が行われているが,現在も大きな変動量を示している.No.2地すべりは2013年に変動が確認され,現在も活動している.これら3つの地すべりの上部には二重山稜などの山体重力変形地形が認められる.これらの地形の形成年代は明らかにされていないが,我々の山伏南方の調査結果と比較すると,数千年前に形成されたものと推定される.A, B地区の地すべりの滑落崖は,稜線近くにまで達しているが,稜線上の二重山稜地形に新たな変状は認められない.また,No.2地すべりの上部にも二重山稜地形が存在するが,そこに設置された地盤伸縮計には過去6年間,変動は認められない.以上のことから,数千年間安定して存在している山体重力変形地形は,下部斜面で地すべりが活動してもほとんど影響は受けないことがわかった.今後はこれら2つの事例に示された現象が,一般化できるかどうかを,他の事例も検討して明らかにしていきたい.なお,本研究で使用したデータの一部は岐阜県および静岡県砂防課から提供を受けた.