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[HGM03-05] 山地上流において穿入蛇行河川が形成される条件ー高角な層理面が分布する東河内川の事例ー
キーワード:穿入蛇行河川、地質構造、付加体
本研究では、静岡県の大井川上流に位置する東河内川流域を対象にして、地質構造に着目して山間部を流れる河川の蛇行が始まる条件を調べた。東河内川は総延長約12 km、平均勾配0.06の急勾配河川であり、標高765 mで大井川と合流する。東河内川流域の地質は四万十帯に分類される付加体で、地質調査の結果、流路沿いの地質は、主に頁岩優勢の砂岩頁岩互層、砂岩優勢の砂岩頁岩互層、頁岩、砂岩の整然層からなる。いずれも大局的には北西方向に急傾斜する構造を示し、層理面の走向と河川の流下方向はおおむね一致している。20万分の1地質図(静岡及び御前崎、甲府)には井川大唐松山断層が東河内川の流路と対応するように記載されているものの、流路沿いではこのような断層を見つけることができなかった。大井川との合流点から2–6 km(最上流から6–10 km)の区間で蛇行が発達しており、ここでは大井川本流で見られる蛇行よりも波長が小さく、また環流丘陵も発達していない。蛇行区間の河相は、2 m以上の巨礫が集積する区間・岩盤が露出する区間・細粒な礫が河床を広く覆う区間・薄い砂礫層に覆われた比高20 m以下の侵食段丘が発達する区間と多様である。蛇行区間の川幅はほとんどの場所で30 m以下で、他の区間よりも相対的に狭い。蛇行区間の大部分の勾配は0.02–0.04であり、流域の中でも勾配の緩い区間が連続している。頁岩優勢の砂岩頁岩互層が広く分布する蛇行区間は、大局的な地質構造である北西に急傾斜する層理面を示す区間と、90°東に回転して北東方向に急傾斜する層理面をもつ区間が繰り返して出現し、他の区間とは異なる複雑な地質構造を示す。シュミットロックハンマーを用いた岩盤強度の測定結果から、蛇行区間の岩盤強度は他の区間と同様の値を示すため、高角な層理面をもつ山地上流の蛇行発達には、地質構造と勾配の組み合わせといった流域内部に存在する要因が重要であることが示唆される。
本研究は京都大学防災研究所一般共同研究(課題番号2020G-09)の助成を受けた。
本研究は京都大学防災研究所一般共同研究(課題番号2020G-09)の助成を受けた。