17:15 〜 18:30
[HGM03-P02] 山地小流域における土層厚分布推定に適した地点選択手法の探索
キーワード:土層厚、空間変動モデル、デジタルソイルマッピング、最適化サンプリング
日本の山地・丘陵地における土層厚分布には不明な点が多く、特に複雑な地形上でその空間変動が極めて大きいことが知られている。このことは、水文モデル等における大きな不確実性要因の一つであり、これを明らかにするための調査コストは防災リスクの精緻な広域評価のための律速要因となっている。一方、土層厚は地形等の環境因子と非常に強い相関をもつため、近年、これを利用したマッピング(空間推定)技術が、(1)機械学習手法の発展によって生成要因が複雑かつ非線形な土壌特性値の推定精度が飛躍的に高まったこと、(2)衛星リモートセンシング技術の発展に伴って環境因子としての高精細な地形・植生データが容易に入手できるようになったこと、によって急速に進展した。この技術を活用することで土層厚の効率的な空間推定が期待できる。
一方、機械学習マッピングは、説明変数の利用を前提とする点でクリギング等による従来のマッピングと大きく異なっている。クリギングでは適切な間隔を持つ格子点サンプリングが望ましいが、機械学習(回帰木による手法)ではよりバラエティに富んだ説明変数と目的変数の組み合わせが重要である。これに応えるため、条件付きラテン超方角法(Conditioned Latin Hypercube Sampling: cLHS)や、ファジーk平均法(Fuzzy k-means)による最適化サンプリングが提案されてきた。機械学習を前提とした最適化サンプリングは、地形が複雑であるがゆえに地形因子と土壌特性値の相関が強固である日本の山地における優れたアプローチであり、従来法と比べて土壌のマッピング精度が大きく改善される可能性が高い。本研究では、従来のランダム法、格子点法との比較を通じて土層厚空間推定のための最適化サンプリングの有効性を検証することを目的とした。
北関東の山地小流域における544地点の土層厚測定データ(Nc値5以下)の20%を検証用に用い、残りを模擬的なサンプリングに用いた。3つの最適化サンプリング手法(k平均法、Fuzzy-k平均法、cLHS法)に加え、ランダム法と(疑似)格子点法を比較対象として異なるサンプリング数(N=50, 100….400)による模擬サンプリング実験をおこなった。得られたサンプルセットを用いて機械学習マッピング(空間推定)を実施し、検証用データを用いてR2とRMSEを算出して各手法・回数の精度を評価した。これらの一つの条件に付き100回の繰り返し実験をおこない、その平均値を最終的な精度評価に用いた。また、最適な地点選択と機械学習マップの説明変数として、AW3D-DTM(1m)からリサンプリングされた2m-DEMより算出された地形因子(傾斜、曲率、TWI等)を用いた。
その結果、最適化サンプリング手法によるマップ推定精度はサンプル数が少ないほど従来のランダム法、格子点法よりも高く、最適化サンプリングの有効性が示された。一方、サンプル数が多くなると、手法の差よりもサンプル数の増加による精度の向上が卓越した。また、ランダム法は確率による精度の変動幅が非常に大きく、格子法も基準点の設置位置で精度が変わる可能性があった。実際に作成されたマップを見ると、最適化サンプリングでは100-200程度のサンプリング数であっても空間的なパターンの見た目の再現性は良好であった。こうした空間パターンはクリギングでは困難であり、最適化サンプリングを組み合わせた機械学習マッピングが効果的な空間推定手法であることが示唆された。このことは、日本の山地の複雑地形で従来のランダム・格子点サンプリングが抱えていた課題を克服できる可能性を示していた。最適化サンプリングは、地形等による土層厚への影響を最適化した測定地点あらかじめ選択し、コストを最小限に抑えながら土層厚分布を推定するための有望なツールと考えられる。
一方、機械学習マッピングは、説明変数の利用を前提とする点でクリギング等による従来のマッピングと大きく異なっている。クリギングでは適切な間隔を持つ格子点サンプリングが望ましいが、機械学習(回帰木による手法)ではよりバラエティに富んだ説明変数と目的変数の組み合わせが重要である。これに応えるため、条件付きラテン超方角法(Conditioned Latin Hypercube Sampling: cLHS)や、ファジーk平均法(Fuzzy k-means)による最適化サンプリングが提案されてきた。機械学習を前提とした最適化サンプリングは、地形が複雑であるがゆえに地形因子と土壌特性値の相関が強固である日本の山地における優れたアプローチであり、従来法と比べて土壌のマッピング精度が大きく改善される可能性が高い。本研究では、従来のランダム法、格子点法との比較を通じて土層厚空間推定のための最適化サンプリングの有効性を検証することを目的とした。
北関東の山地小流域における544地点の土層厚測定データ(Nc値5以下)の20%を検証用に用い、残りを模擬的なサンプリングに用いた。3つの最適化サンプリング手法(k平均法、Fuzzy-k平均法、cLHS法)に加え、ランダム法と(疑似)格子点法を比較対象として異なるサンプリング数(N=50, 100….400)による模擬サンプリング実験をおこなった。得られたサンプルセットを用いて機械学習マッピング(空間推定)を実施し、検証用データを用いてR2とRMSEを算出して各手法・回数の精度を評価した。これらの一つの条件に付き100回の繰り返し実験をおこない、その平均値を最終的な精度評価に用いた。また、最適な地点選択と機械学習マップの説明変数として、AW3D-DTM(1m)からリサンプリングされた2m-DEMより算出された地形因子(傾斜、曲率、TWI等)を用いた。
その結果、最適化サンプリング手法によるマップ推定精度はサンプル数が少ないほど従来のランダム法、格子点法よりも高く、最適化サンプリングの有効性が示された。一方、サンプル数が多くなると、手法の差よりもサンプル数の増加による精度の向上が卓越した。また、ランダム法は確率による精度の変動幅が非常に大きく、格子法も基準点の設置位置で精度が変わる可能性があった。実際に作成されたマップを見ると、最適化サンプリングでは100-200程度のサンプリング数であっても空間的なパターンの見た目の再現性は良好であった。こうした空間パターンはクリギングでは困難であり、最適化サンプリングを組み合わせた機械学習マッピングが効果的な空間推定手法であることが示唆された。このことは、日本の山地の複雑地形で従来のランダム・格子点サンプリングが抱えていた課題を克服できる可能性を示していた。最適化サンプリングは、地形等による土層厚への影響を最適化した測定地点あらかじめ選択し、コストを最小限に抑えながら土層厚分布を推定するための有望なツールと考えられる。