17:15 〜 18:30
[HGM03-P07] ALBとドローン空撮による、北海道東部戸蔦別川における河床低下プロセスの観測
キーワード:軟岩、河床低下、ALB、ドローン空撮、砂礫堆積
本研究は、岩盤河川で進行する河床低下プロセスを、ALB(航空レーザー測深)とドローン空撮を用いて観測した結果を報告する。対象区間は、北海道東部十勝川水系戸蔦別川の1.2 km(平均勾配0.44°)であり、2016年8月の洪水(区間上流端から2.4 km上流で流量700m3/sを記録)で大量の土砂が流入した。その後、急激な河床低下が進行中である。2020年時点では、第四紀海成層の長流枝内層に属するシルト岩と亜炭からなる互層が河床の各所に露岩している。シルト岩の一軸圧縮強度は8.1MPaであり、土木学会(1992)の定義では軟岩に属する。その一方で、砂州の発達もみられる。容積法により計測した砂礫代表粒径は2.2 mmであった。河床の露岩部表面は滑らかでポットホールも随所にみられ、Whipple et al.(2000)が示した浮遊砂の摩耗による侵食作用の特徴が顕著に現れている。
ドローン(Mavic2 Pro, Inspire2)による空撮は、2018年から2020年にかけて冬期を除き1か月に1回の頻度で、ALBは、2019年9月と2020年6月の2回行われた。2019年5月と2019年9月に岩盤からなる遷急点が確認された。前者は、2か月で6 m後退した後、岩盤が徐々に侵食されていき、9月には遷急点は消失した。後者は、1か月で河床を0.5-0.8 m低下させつつ、1.5 m後退した。この遷急点も2020年の6月には消失した。
空撮期間中に、固定砂州の発達に伴う蛇行が進行した。2018年9月から2020年10月までに、3か所の攻撃斜面では河岸がそれぞれ7.2m、4.5m、19.6m後退した。攻撃斜面際の淵の面積に大きな変化はみられず、最深部の河床は、2019年9月から2020年6月までにそれぞれ、0.12m、0.93m、0.07m低下していた。固定砂州の発達に伴い、砂州付近の流路内でも砂礫の堆積によって遷急点が発生した。これらの遷急点の直下は軟岩からなり、流水による著しい下刻が発生し淵を形成した。その後下刻が進み、落差が大きくなると、遷急点を形成していた砂礫が下流に流出した。堆積場が拡大することにより、1カ所の遷急点は3か月で5m下流に移動したが、もう1か所の遷急点は消失した。これらの遷急点直下にあった淵の河床高は、2019年9月から翌年6月までに0.17-0.37m低下していた。なお残りの1カ所は、観測期間中に砂礫の流出および場所の移動は確認されなかった。蛇行が発達していない0.3 km区間では、2019年5月に河床の岩盤の一部で下刻が進み、細い流路が形成されたことが確認されたが、この流路は2か月後には上流から流入してきた土砂により埋没した。この際、砂礫の堆積は側刻を伴ったため、結果として横断面の平均河床高は0.3m低下した。
以上の本研究で実施した観測から、砂礫の堆積による地形変化が、軟岩河川において河床低下の進行を促進させていることが明らかになった。
引用文献
土木学会(1992):軟岩評価:調査・設計・施工への適用, 丸善出版
Whipple, K.X., Hancock, G.S., and Anderson, R.S. (2000):River incision into bedrock: Mechanics and relative efficacy of plucking, abrasion, and cavitation., Geological Society of America Bulletin, 112(3), 490-503.
ドローン(Mavic2 Pro, Inspire2)による空撮は、2018年から2020年にかけて冬期を除き1か月に1回の頻度で、ALBは、2019年9月と2020年6月の2回行われた。2019年5月と2019年9月に岩盤からなる遷急点が確認された。前者は、2か月で6 m後退した後、岩盤が徐々に侵食されていき、9月には遷急点は消失した。後者は、1か月で河床を0.5-0.8 m低下させつつ、1.5 m後退した。この遷急点も2020年の6月には消失した。
空撮期間中に、固定砂州の発達に伴う蛇行が進行した。2018年9月から2020年10月までに、3か所の攻撃斜面では河岸がそれぞれ7.2m、4.5m、19.6m後退した。攻撃斜面際の淵の面積に大きな変化はみられず、最深部の河床は、2019年9月から2020年6月までにそれぞれ、0.12m、0.93m、0.07m低下していた。固定砂州の発達に伴い、砂州付近の流路内でも砂礫の堆積によって遷急点が発生した。これらの遷急点の直下は軟岩からなり、流水による著しい下刻が発生し淵を形成した。その後下刻が進み、落差が大きくなると、遷急点を形成していた砂礫が下流に流出した。堆積場が拡大することにより、1カ所の遷急点は3か月で5m下流に移動したが、もう1か所の遷急点は消失した。これらの遷急点直下にあった淵の河床高は、2019年9月から翌年6月までに0.17-0.37m低下していた。なお残りの1カ所は、観測期間中に砂礫の流出および場所の移動は確認されなかった。蛇行が発達していない0.3 km区間では、2019年5月に河床の岩盤の一部で下刻が進み、細い流路が形成されたことが確認されたが、この流路は2か月後には上流から流入してきた土砂により埋没した。この際、砂礫の堆積は側刻を伴ったため、結果として横断面の平均河床高は0.3m低下した。
以上の本研究で実施した観測から、砂礫の堆積による地形変化が、軟岩河川において河床低下の進行を促進させていることが明らかになった。
引用文献
土木学会(1992):軟岩評価:調査・設計・施工への適用, 丸善出版
Whipple, K.X., Hancock, G.S., and Anderson, R.S. (2000):River incision into bedrock: Mechanics and relative efficacy of plucking, abrasion, and cavitation., Geological Society of America Bulletin, 112(3), 490-503.