日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE12] 資源地質学

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.08

コンビーナ:大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、実松 健造(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループ)、高橋 亮平(秋田大学大学院国際資源学研究科)、野崎 達生(国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋機能利用部門 海底資源センター)

17:15 〜 18:30

[HRE12-P01] 秋田県湯沢南部地域における多重地熱資源の探査

*佐藤 颯太1、布原 啓史1、山田 亮一1、平野 伸夫1、土屋 範芳1 (1.東北大学)


キーワード:地熱資源

秋田県湯沢市南部地域を対象に多重地熱資源の探査を行った。

本地域周辺には三途川カルデラが分布し、このカルデラ内には、下位より、先第三紀の花崗岩類、変成岩類の基盤岩があり、その上位には泥湯層、虎毛山層が分布する。特に虎毛山層は一部溶結した凝灰岩で構成され、本地域で広く分布している。今回は虎毛山層を中心にサンプリングを行った。さらにその上位には三途川層、兜山層、高松岳火山岩類が分布する。本研究においては、熱発光測定、変質鉱物の同定を行った。

熱発光地熱探査法は火成岩中の石英粒子を加熱、生じた発光を分析する手法で、その岩石の熱的影響を評価するときに用いられる。

変質鉱物は酸性、中性、アルカリ性の変質鉱物に大別することができる。本地域西部の湯ノ又沢ではアルカリ性変質帯が見られた。また、皆瀬川中流ではパイロフィライトが確認され、この周辺は強い酸性変質作用があったと推測できる。さらに、酸性、アルカリ性変質鉱物は局所的に分布している一方で、中性変質鉱物は広域的に分布しているのが特徴である。

TL測定の結果、皆瀬川下流付近で低いTL値が検出され、周辺の沢も低い値をとることがわかった。さらに虎毛山から皆瀬川にかけて標高の低下に伴い、TL値も低下することがわかった。このことは虎毛山から皆瀬川にかけて熱的影響が強いということを示している。
虎毛沢から皆瀬川において標高とTL値に正の相関があることから、広域的に熱源からの熱伝導による温度構造の影響があると考えられ、この地域の地下の熱構造モデルを構築した。TLの温度による減衰速度式を求め、これと非定常熱伝導モデルを連立させて、熱源の位置を推定した。熱源モデルは一様平板上の熱源とし、熱源温度を700℃、地表および地下の初期温度を15℃とした。虎毛沢から皆瀬川にかけて熱源深度が虎毛沢付近では地表下5000ⅿ、皆瀬川下流では同4000ⅿに熱源を配置した場合、地表のTL値を最もよく説明することができた。また、虎毛沢中流においては、熱源を地表下4500ⅿに配置した場合に一致することがわかった。以上のことから対象地区における地下の熱構造は一様な熱源ではなく、部分的に熱源が浅くなっていると推定される。