09:45 〜 10:00
[HSC05-04] 泥岩中の化学的浸透現象と岩石の変形:数値モデルによる検討と室内実験との比較
キーワード:化学的浸透、多孔質弾性体理論、泥岩、遮蔽層
泥岩中の地下水流動や物質移動の速度は非常に遅く,そのため泥岩層が二酸化炭素回収貯留(CCS)において遮蔽層としての役割を果たすことが期待されている。一方で低透水性の領域では化学的浸透や多孔質弾性体的振る舞いといった連成現象が地下水流れ,溶質の移行,岩石の変形に大きな影響を与えることが知られている.泥岩は半透膜的な性質を持ちうることが知られており,この性質は泥岩中の粘土鉱物の持つ負の電荷が間隙中に電気ポテンシャルを発生させ,その影響を強く受ける小さな間隙をイオンのような電荷をもつ物質が通過できなくなることに起因しているとされている。半透膜的振る舞いを示す泥岩内部に間隙水の濃度差が存在する場合,間隙水の浸透圧差によって低濃度側から高濃度側に向かって化学的浸透流による溶液の流れが生じる(例えばMarine and Fritz, 1981)。このとき,間隙水圧の変化が生じ,その大きさは最大で20MPaにも達することが報告されている(Neuzil, 2000)。また,間隙水圧の変化は多孔質媒体の変形を引き起こしうる。本研究の目的は化学的浸透が岩石の変形や間隙水圧挙動に与える影響を評価することであり,室内実験と数値計算に基づいて議論を行う。
室内実験は埼玉県秩父盆地に分布する新第三系小鹿野町層から採取した岩石から作成した,直径50㎜高さ30㎜のコア試料を用いて行った。コア試料を間隙水と同程度のNaCl濃度(0.1g/L以下)の中に固定し,実験開始時,試料内部の圧力分布は静水圧になるようにした。また,コア試料の側面及び上側底面は外部の溶液と接しないようにシリコン樹脂を塗布した。実験時に下側底面を10g/LのNaCl溶液と接させることで泥岩内部から外側への化学的浸透流を発生させ,それによって生じる岩石の変形を試料側面にらせん状に貼り付けられた光ファイバーセンサーによって計測した。計測は200時間にわたり継続して行われ,その間実験系の温度はほぼ一定に保たれていた。
化学的浸透と多孔質弾性体的挙動を連成した数理モデルを作成し,計算結果と室内実験の結果の比較を行った。数理モデルに用いる支配方程式は化学的浸透を含む圧力・濃度挙動についての支配方程式(Malusis et al., 2012)と多孔質弾性体理論についての支配方程式(例えばWang, 2000)を組み合わせて作成し,間隙水圧,間隙水濃度および岩石の変形を計算した。計算領域,初期条件,境界条件は室内実験を模しており,計算領域は直径50㎜高さ30㎜の円柱状領域,円柱の上側底面及び側面は圧力・濃度について流れなし境界,また円柱の下側底面は圧力・濃度一定(それぞれ0kPaおよび10g/L)の境界条件となっている。変位については,円柱表面はすべて応力0の境界となっている。
室内実験の結果から,200時間の計測期間において試料全体が収縮し続ける様子が観測された。これは外部の溶液濃度が間隙水濃度より高いため泥岩内部から外部へ化学的浸透流が生じたことが原因だと考えられる。また,下側底面付近のほうが上側底面付近よりも大きな収縮が生じており,下側底面付近では最大で約130μεの収縮が生じていた。
発表では,数値計算によってそれぞれのパラメータの変化が岩石の変形挙動にどのように影響を与えるのかについて評価するとともに,数値計算による室内実験の結果の再現を試み,その結果について比較し,モデルの妥当性について議論を行う。
室内実験は埼玉県秩父盆地に分布する新第三系小鹿野町層から採取した岩石から作成した,直径50㎜高さ30㎜のコア試料を用いて行った。コア試料を間隙水と同程度のNaCl濃度(0.1g/L以下)の中に固定し,実験開始時,試料内部の圧力分布は静水圧になるようにした。また,コア試料の側面及び上側底面は外部の溶液と接しないようにシリコン樹脂を塗布した。実験時に下側底面を10g/LのNaCl溶液と接させることで泥岩内部から外側への化学的浸透流を発生させ,それによって生じる岩石の変形を試料側面にらせん状に貼り付けられた光ファイバーセンサーによって計測した。計測は200時間にわたり継続して行われ,その間実験系の温度はほぼ一定に保たれていた。
化学的浸透と多孔質弾性体的挙動を連成した数理モデルを作成し,計算結果と室内実験の結果の比較を行った。数理モデルに用いる支配方程式は化学的浸透を含む圧力・濃度挙動についての支配方程式(Malusis et al., 2012)と多孔質弾性体理論についての支配方程式(例えばWang, 2000)を組み合わせて作成し,間隙水圧,間隙水濃度および岩石の変形を計算した。計算領域,初期条件,境界条件は室内実験を模しており,計算領域は直径50㎜高さ30㎜の円柱状領域,円柱の上側底面及び側面は圧力・濃度について流れなし境界,また円柱の下側底面は圧力・濃度一定(それぞれ0kPaおよび10g/L)の境界条件となっている。変位については,円柱表面はすべて応力0の境界となっている。
室内実験の結果から,200時間の計測期間において試料全体が収縮し続ける様子が観測された。これは外部の溶液濃度が間隙水濃度より高いため泥岩内部から外部へ化学的浸透流が生じたことが原因だと考えられる。また,下側底面付近のほうが上側底面付近よりも大きな収縮が生じており,下側底面付近では最大で約130μεの収縮が生じていた。
発表では,数値計算によってそれぞれのパラメータの変化が岩石の変形挙動にどのように影響を与えるのかについて評価するとともに,数値計算による室内実験の結果の再現を試み,その結果について比較し,モデルの妥当性について議論を行う。