日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC05] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

2021年6月4日(金) 10:45 〜 12:15 Ch.15 (Zoom会場15)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(東京大学)、座長:愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

11:00 〜 11:15

[HSC05-08] VSPデータに見るヘリカル光ファイバーケーブルの優位性

*三善 孝之1、中島 崇裕1、薛 自求1 (1.二酸化炭素地中貯留技術研究組合 / 公益財団法人地球環境産業技術研究機構)

キーワード:CO2地中貯留、光ファイバー、分布型音響計測、ヘリカル光ファイバーケーブル、VSP

二酸化炭素地中貯留は、地球温暖化対策として大いに期待される技術の一つである。圧入されたCO2を長期的にモニタリングし、CO2プルームの範囲を把握することが重要である。多くのCO2地中貯留事業において、繰り返しの3次元弾性波探査を実施してCO2プルームの可視化を行っているが、調査やデータ処理にかかる費用が高いために、その実施回数は限定せざるを得ない。そこで、圧入井に光ファイバーケーブルを設置することで行うDAS/VSP計測による圧入井周辺のイメージング技術が注目されている。DAS(分布式音響計測)技術は、光ファイバーケーブル全体が受振器となることから、一度の発振によって同時に坑井全体でデータを取得することができるという特徴がある。また、光ファイバーケーブルの径が小さいことから、坑井内のケーシング背面に設置することが可能であるため、圧入設備との共存が可能であり、圧入を停止することなく計測作業を進めることができるメリットがある。しかしながら、DASでは従来型ジオフォンに比べて感度が低いこと、ファイバーと直交する方向から入射する波に対して感度がないことが課題として挙げられている。それに対応するために、側方方向からの入射波にも感度のあるヘリカル光ファイバーケーブルが近年開発され注目を浴びている。

そこで技術組合では、このヘリカル光ファイバーケーブル(HWC)の性能を評価するために、国内の光ファイバー計測サイトにおいて、オフセットVSP探査を行い、光ファイバーケーブル記録とジオフォン記録を取得した。サイトには、ケーシングを設置した深度880mの垂直井があり、ストレートタイプの光ファイバーケーブル(STC)がケーシング背面にセメント固定されている。また、坑内水で満たされたケーシング内に4連式の三成分ジオフォン(ジオフォン間隔15m)を降下してVSP記録の取得を行った。深度100m~700mを7.5m間隔でデータ取得するためには21展開を要した。同じサイト内にある深度250mの垂直井には、HWCとSTCをチュービングパイプとともに降下設置し、坑内をセメントで満たして固定した。これらの二本の坑井に設置された光ファイバーケーブルを一つに繋ぎ、DAS計測装置を用いて、オフセット発振された弾性波の記録を行った。発震作業は、サイトの傍を通る公道約2kmの測線上でP波バイブロサイス車を用いて行い、オフセット90m~1350mまでの記録を取得した。

本計測結果から、以下のことが明らかになったので報告する。(1)DAS記録はジオフォン記録よりもノイズが強いが、ジオフォンの重合数に対して概ね5~20倍の重合数をとることで、ジオフォンと同程度の品質のデータを得ることができる。(2)ヘリカル光ファイバーケーブルで取得される記録は、ストレート光ファイバー記録よりも約2倍程度のSN比がある。(3)ヘリカル光ファイバーケーブルを用いることで、大入射角における振幅減衰現象を緩和することができる。