13:45 〜 14:00
[HSC05-13] 海生生物を対象とした生物影響データベースの開発
キーワード:データベース、海底下CO2貯留、海洋調査、CO2漏出
海底から海中にCO2が漏出すると海水中のCO2濃度が増加し、pCO2を上昇させて海生生物に影響をもたらす。法令が求めている漏出CO2による潜在的環境影響評価を行う上で、pCO2と生物影響の関係データを収集し、利用できる形態に加工・整理しておくことは重要である。本研究では、CO2の生物影響に関するデータの検索や管理を目的に、生物影響データベースを構築した。システム開発に際しては、はじめに要件定義を行い、データ量や検索項目、検索時間、保守性等で過不足のない機能を持たせるとともに、ユーザーにとって使いやすいインターフェイスを作成した。また、検索した結果のグラフを描画する機能をシステムに持たせ、影響閾値を画面で確認できるようにした。システム開発と並行して、データベースのコンテンツを準備するため、生物影響に関連した種々の論文からデータを抽出・加工した。また、生物種は多様なステークホルダーを想定して選定した。その結果、致死レコード数150、亜致死レコード数661を収集した。生物影響はpCO2と曝露時間で決定される。致死に関しては、半数が死亡するΔpCO2(自然状態からのpCO2の増分)や曝露時間として、それぞれLC50およびLT50を用いた。また、亜致死については、さまざまな項目について報告があるため、本データベースでは大きく成長、生死、増殖、変態、孵化、感染、奇形、行動の8カテゴリーに分類して整理した。亜致死における影響を相互に比較できるようにするため、実験区と対照区の結果からLnRRまたはHedges' dという指標を算出した。ここで、LnRRは対照区と実験区の結果の比について対数処理をしたものであり、またHedges' dは対照区と実験区のそれぞれの平均値、サンプル数、標準偏差から求められる。環境影響評価には対象海域の生物組成を記述するステップがある。この段階で得られた結果をもとに、本データベースから対象海域に必要な情報を検索抽出できる。 漏出シナリオに基づいたCO2拡散シミュレーションから推定されるΔpCO2の範囲と持続時間の結果に、生物影響データベースから得られた結果を合わせることで、CO2漏出により生物影響が生じる範囲を予測することが可能となる。さらに、生物影響データベースから得られた結果は、監視において注意すべき生物や項目の選定にも活用できる。