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[HSC05-P07] 大阪湾のpCO2変動特性1:pCO2とDOの相関関係の季節変動
キーワード:CO2漏出、CCS、海域CO2貯留
海底下CO2貯留に関して一般市民が持つ懸念の一つが海へのCO2漏出である。浅海域の場合、CO2は気泡として漏出すると考えられる。しかし、CO2気泡は海水に溶けやすいため、万が一CO2漏出が起きるとCO2濃度が上昇すると考えられる。そのため、CO2分圧(pCO2)、全炭酸、pHなどCO2濃度に関する変数を用いたCO2漏出検出手法がいくつも提案されている。pCO2-DO%法もその一つである。pCO2-DO%法は、pCO2のDO%(溶存酸素飽和率)に対する線形回帰曲線の予測範囲上限を超えたpCO2を異常値、すなわちCO2漏出のおそれがあるとみなす方法である。pCO2とDO%の関係についての知見を得て、pCO2-DO%法をより良くするために、大阪湾の2点(神戸港、関空沖)で約1年間、pCO2やDOなどの連続観測を行った。本研究では、神戸港の測点で得られたデータの解析を行った。神戸港では、pCO2とDO%の間に負の相関が見られた。DO%-pCO2平面においては、2つのエンドメンバーが存在する。夏季の貧酸素水による極端にDO%が低くpCO2が高い点と冬季の高酸素水によるDO%が100%を超えpCO2が大気pCO2値を超える点である。この測点海域の底層は、鉛直混合と大阪湾西部からの高酸素水の移流によって通気されている。夏季は、この2つの通気メカニズムが停止するため、呼吸により酸素が枯渇しCO2が増加する。一方、冬季は通気に加え光合成により、pCO2が低くなり、DO%が高くなる。興味深いことに、DO%-pCO2平面上で、pCO2とDO%はこの2つのエンドメンバーを単純に振動するのではなく、時計回りに回る。すなわち、DO%の値が同じであれば、pCO2の値は春よりも秋の方が高くなる。秋と春とでpCO2の値が異なるのは、CO2とO2のガス交換平衡時間の違いと水温の違いによるものと推測される。この秋と春の非対称により、pCO2-DO%法を使う場合には、秋にfalse-positiveが生じやすい。
謝辞:この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP18006)の結果得られたものである。
謝辞:この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP18006)の結果得られたものである。