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[HSC05-P08] 大阪湾のpCO2の変動特性2:pCO2変動をもたらす要因
キーワード:CO2漏出、海域CO2貯留、pCO2
海底下CO2地中貯留において、万が一のCO2漏出が生じた場合の海水中のCO2増加の指標としてCO2分圧(pCO2)と溶存酸素飽和度(DO%)の相関関係が提案されている。このpCO2とDO%の相関関係は、水温や全アルカリ度などさまざまな要因により影響を受ける。この指標の特性を把握するために、2018年7月から2019年10月にかけて大阪湾の2点(神戸港沖と関空沖)におけるpCO2とDOなどの連続観測を実施した。pCO2-DO%の季節変動の特性については、その1にて発表する。その2(本発表)では、pCO2とDO%の相関関係においてpCO2を上昇させる要因について解析した。連続観測では、pCO2が上方に偏る現象がそれぞれの測点でみられた。一つは、夏季から秋季にかけてであり、神戸港沖と関空沖の両測点でみられた。また、神戸港沖では夏季にpCO2が高くなった。夏から秋にかけて成層期から混合期へ移行すると、pCO2が高くDO%が低い底層水が鉛直混合により表層水と混合されるようになる。混合により大気と海面間のガス交換の影響が水柱全体に及ぶようになると、底層のDO%は上昇しpCO2は減少して、大気と平衡状態に向かう。ところが、CO2の大気海面間のガス交換速度はO2の1/20と遅いため、DO%が大気と平衡に達して飽和した(DO% = 100)時点では、CO2はまだ大気と平衡に達しない。その結果、一時的に海水中のpCO2が高い状態で残されたと考えられる。また、富栄養化海域の神戸沖では夏季に底層で無酸素状態になる場合がある。無酸素層で嫌気呼吸により産生されたCO2が上方に拡散して、観測層のpCO2を上昇させた可能性が考えられる。さらに、神戸港沖では2018年夏季のpCO2は2019年に比べて高かった。2018年初夏には淀川からの大量の流入があり、神戸港沖では底層でも塩分の低下がみられた。塩分が低下すると、全炭酸濃度(DIC)に変化がなくてもpCO2が上昇する。2018年夏季は例年よりも塩分が低い状態で貧酸素化が生じたため、2019年に比べて2018年夏季にpCO2がより大きく上昇したと考えられる。このように、pCO2は塩分や水温などの多様な要因により変動するため、高いpCO2が得られたとしても必ずしもCO2漏出に起因しているとはいえない。仮に高いpCO2が得られた場合には、海域における物理的、化学的および生物学的な状況をもとに検討することが重要である。
謝辞:この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP18006)の結果得られたものである。
謝辞:この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP18006)の結果得られたものである。