09:15 〜 09:30
[HTT16-02] 弘前における冬季降水安定同位体比変動 -2019/2020年冬季事例-
キーワード:降雪、同位体、水蒸気
降水安定同位体比は、その水が経てきた相変化と循環過程の逆推定ができる指標である。このため、降水安定同位体比、とりわけ降雪安定同位体比の変動を理解することは、古気候復元の精度を高め、現在の水循環過程の理解に繋がるが、大気循環の影響を受けるため、気象学的な解析が必要である。また、既知の同位体分別過程を大気大循環モデル、領域気象モデルに組み込んだ水同位体領域スペクトルモデルIso-RSM(Yoshimura et al., 2010)により、降雪サンプリングを行った期間の降水や水蒸気の同位体比を併用することで、同位体比変動を再現できたプロセスについての理解を深め、再現できていない過程については観測した同位体比結果を、モデルの改良に活かすことが可能である。
そこで、弘前大学理工学部1号館屋上で、日単位で計測した降水の安定同位体比データを用いて、弘前の冬季降水の同位体変化をもたらす大気循環場の解析を行った結果を報告する。昨冬(2019年/2020年)は暖冬小雪のため降雪日数も少なかったが、降雨日も含め12/24から3/17にかけてほぼ正午に前日(休日を含む場合は2,3日前)からの降雪をポリバケツにて収集した。融解後フィルターでろ過した40サンプルの酸素・水素の同位体比を総合地球環境学研究所のPicarroにて分光法で計測した。δ18Oは-1.39‰から-18.87‰の間で変動し、δDは、-9.9‰から-142.2‰の間で変動する。d-excessは酸素水素同位体比が小さい時に高い傾向にあるが短時間変動ではδ値と変動傾向がずれる時がある。Iso-RSMの弘前における降水の同位体比の変動傾向は、1月中旬から3月初旬にかけて、定性的に一致がみられたが、d-excessの変動は2月の一時期を除き観測との一致は見られなかった。
弘前における観測降水安定同位体比とERA5による水蒸気輸送場から次のことが分かった。➀同位体比が小さくd-excessが高い時は、ユーラシア大陸から低温・乾燥した空気が日本海での急速な蒸発を受けて弘前に降水がもたらされる(南からの湿った空気の流入はない)、②同位体比が大きくd-excessが低い時は、南西方向からの温かく湿った空気塊により降水がもたらされる、③同位体比が高くd-excessが高い時は、北西季節風が朝鮮半島付近を通過し日本海で急速な蒸発した水蒸気と南西の湿った気流の合流がみられる。
また、数日間に次第に降水同位体比が高くなる変化が対象期間中3回確認できた。これらの変化傾向はIso-RSMにて再現されている。1/10-1/14は①に➂の水蒸気が混合しd-excessの変動は小さい。2/9-2/13は①に②の水蒸気が混合し同位体比は上昇するがd-excessは減少した。2/17-2/21は、③に➀の空気塊が合流した。この期間はさらに低気圧の北上(2/17-19)と、局地循環の影響(2/20-2/21)が考えられる。この期間(2/20-2/21)のd-excessの減少要因については、雲の鉛直方向の降水同位体比、地形による雲の発達過程などを明らかにする必要がある。
なお2020/2021年冬季は日々の降雪だけでなく1日1~2回の水蒸気の同位体も計測している。両年の比較や、水蒸気同位体変動から理解可能な降雪過程についても、報告の予定である。
そこで、弘前大学理工学部1号館屋上で、日単位で計測した降水の安定同位体比データを用いて、弘前の冬季降水の同位体変化をもたらす大気循環場の解析を行った結果を報告する。昨冬(2019年/2020年)は暖冬小雪のため降雪日数も少なかったが、降雨日も含め12/24から3/17にかけてほぼ正午に前日(休日を含む場合は2,3日前)からの降雪をポリバケツにて収集した。融解後フィルターでろ過した40サンプルの酸素・水素の同位体比を総合地球環境学研究所のPicarroにて分光法で計測した。δ18Oは-1.39‰から-18.87‰の間で変動し、δDは、-9.9‰から-142.2‰の間で変動する。d-excessは酸素水素同位体比が小さい時に高い傾向にあるが短時間変動ではδ値と変動傾向がずれる時がある。Iso-RSMの弘前における降水の同位体比の変動傾向は、1月中旬から3月初旬にかけて、定性的に一致がみられたが、d-excessの変動は2月の一時期を除き観測との一致は見られなかった。
弘前における観測降水安定同位体比とERA5による水蒸気輸送場から次のことが分かった。➀同位体比が小さくd-excessが高い時は、ユーラシア大陸から低温・乾燥した空気が日本海での急速な蒸発を受けて弘前に降水がもたらされる(南からの湿った空気の流入はない)、②同位体比が大きくd-excessが低い時は、南西方向からの温かく湿った空気塊により降水がもたらされる、③同位体比が高くd-excessが高い時は、北西季節風が朝鮮半島付近を通過し日本海で急速な蒸発した水蒸気と南西の湿った気流の合流がみられる。
また、数日間に次第に降水同位体比が高くなる変化が対象期間中3回確認できた。これらの変化傾向はIso-RSMにて再現されている。1/10-1/14は①に➂の水蒸気が混合しd-excessの変動は小さい。2/9-2/13は①に②の水蒸気が混合し同位体比は上昇するがd-excessは減少した。2/17-2/21は、③に➀の空気塊が合流した。この期間はさらに低気圧の北上(2/17-19)と、局地循環の影響(2/20-2/21)が考えられる。この期間(2/20-2/21)のd-excessの減少要因については、雲の鉛直方向の降水同位体比、地形による雲の発達過程などを明らかにする必要がある。
なお2020/2021年冬季は日々の降雪だけでなく1日1~2回の水蒸気の同位体も計測している。両年の比較や、水蒸気同位体変動から理解可能な降雪過程についても、報告の予定である。