17:15 〜 18:30
[HTT16-P02] 元素成分をトレーサーとした流域の地域性特徴の同定
キーワード:元素成分、トレーサー、地域性特徴、土地被覆
1. 序論
1.1 背景
「人為改変に伴う土地利用開発」,「気候変動に伴う気温上昇や降水の極端化」に応答した流域の環境動態の変化が見込まれ,特に閉鎖水域では富栄養化の影響評価に対する研究が展開されている.内部生産ととともに,抜本にある環境変化に外部負荷の流入影響を把握しなければならない.水質の将来像を予測することに関しては,各流域の形状規模に応じた内部生産と地域特性に応じた外部負荷性の双方の緻密な情報をふまえれば更に精緻な評価が可能になる.
1.2 研究目的
本研究は,土地被覆と現況,および気候変動の水環境影響評価にも利用できる外部負荷量データベースを整備する目的の一環として,東北地方一級河川の阿武隈川流域を対象地域に設定し,数値地理情報に基づき小流域ごとに地域的特性(植生,土地被覆,土壌,地質)とサンプリング,分析された化学的な化学流出成分(多元素による化学成分含有量)の関係を比較検討することを試みた,
流域条件解析は,クラスター分析を用いて流域の持つ流域条件のタイプを分類した.大局的な地域の特徴と化学分析(含有元素量)より得られた値を比較検討することとした.
2. 本論
2.1 ICP-MSを用いた化学分析の結果
阿武隈川流域の含有元素量を把握するため,誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて分析を行った(Na, Mg, Al, Si, K, Ca, Mn, Fe, P).
阿武隈川本川の化学成分(含有元素量)は,上流から中流域にかけて増加しており,逢瀬川との合流部を最大とし下流にかけて減少している.
また,今回の分析結果では荒川の値が本川,支川の各地点の中で最大の値となった.中でもMgの濃度が他の支川の2倍以上高い値を示した.
各濃度では,Na,Caは各地点ごとにばらつきが出たので何らかの地域特性があると考えられる.
2.2 地域特性分析結果
2.2.1クラスター分析による分類結果
クラスター分析による分類を便宜的に統合化し,統合番号は相対的に近隣した位置関係で同値として示され,計3つのグループが示された.阿武隈川流域での植生は5区分,土地被覆で5区分,土壌で4区分,地質で5区分のグループに分類された.「4334(藤田川,笹原川)」,「5112(水原川,社川)」,「2113(北須川,油井川)」の分類カテゴリーは,重複の流域特徴を有したものである.条件より,似通った化学成分流出となる可能性が高い.
2.2.2多元素分析結果との比較
化学成分流出に寄与していると考えられる流域条件として,植生では,ヤブツバキクラス域の落葉・常緑広葉樹林体,土地被覆では,市街地の占拠割合が高い流域,土壌では,黒ボクをはじめとする腐植土,地質では,火山噴出物に関連する占拠割合が高い流域となった.阿武隈川流域の物質循環経路として物質流出成分(含有元素量)の推移から,市街地による人為的に流出量が高い流域と,森林や火山寄与による地域特性によって変化していることが明らかになった.
3. 結論
化学分析(含有元素量)と流域条件の比較検討から,阿武隈川流域の水質形成に寄与する流域条件として,落葉・常緑広葉樹林帯,市街地,腐植土,火山噴出物の要素が示された.
更に,流域条件による負荷量増加のパターンとして自然的要因と社会的要因による分類が必要であることを示している.
今回は,流域条件として推計人口の項目を考慮しないで解析を行ったため今後はいくつかの条件を追加し,化学成分とその物質循環経路の解明に取り組む予定である.
1.1 背景
「人為改変に伴う土地利用開発」,「気候変動に伴う気温上昇や降水の極端化」に応答した流域の環境動態の変化が見込まれ,特に閉鎖水域では富栄養化の影響評価に対する研究が展開されている.内部生産ととともに,抜本にある環境変化に外部負荷の流入影響を把握しなければならない.水質の将来像を予測することに関しては,各流域の形状規模に応じた内部生産と地域特性に応じた外部負荷性の双方の緻密な情報をふまえれば更に精緻な評価が可能になる.
1.2 研究目的
本研究は,土地被覆と現況,および気候変動の水環境影響評価にも利用できる外部負荷量データベースを整備する目的の一環として,東北地方一級河川の阿武隈川流域を対象地域に設定し,数値地理情報に基づき小流域ごとに地域的特性(植生,土地被覆,土壌,地質)とサンプリング,分析された化学的な化学流出成分(多元素による化学成分含有量)の関係を比較検討することを試みた,
流域条件解析は,クラスター分析を用いて流域の持つ流域条件のタイプを分類した.大局的な地域の特徴と化学分析(含有元素量)より得られた値を比較検討することとした.
2. 本論
2.1 ICP-MSを用いた化学分析の結果
阿武隈川流域の含有元素量を把握するため,誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて分析を行った(Na, Mg, Al, Si, K, Ca, Mn, Fe, P).
阿武隈川本川の化学成分(含有元素量)は,上流から中流域にかけて増加しており,逢瀬川との合流部を最大とし下流にかけて減少している.
また,今回の分析結果では荒川の値が本川,支川の各地点の中で最大の値となった.中でもMgの濃度が他の支川の2倍以上高い値を示した.
各濃度では,Na,Caは各地点ごとにばらつきが出たので何らかの地域特性があると考えられる.
2.2 地域特性分析結果
2.2.1クラスター分析による分類結果
クラスター分析による分類を便宜的に統合化し,統合番号は相対的に近隣した位置関係で同値として示され,計3つのグループが示された.阿武隈川流域での植生は5区分,土地被覆で5区分,土壌で4区分,地質で5区分のグループに分類された.「4334(藤田川,笹原川)」,「5112(水原川,社川)」,「2113(北須川,油井川)」の分類カテゴリーは,重複の流域特徴を有したものである.条件より,似通った化学成分流出となる可能性が高い.
2.2.2多元素分析結果との比較
化学成分流出に寄与していると考えられる流域条件として,植生では,ヤブツバキクラス域の落葉・常緑広葉樹林体,土地被覆では,市街地の占拠割合が高い流域,土壌では,黒ボクをはじめとする腐植土,地質では,火山噴出物に関連する占拠割合が高い流域となった.阿武隈川流域の物質循環経路として物質流出成分(含有元素量)の推移から,市街地による人為的に流出量が高い流域と,森林や火山寄与による地域特性によって変化していることが明らかになった.
3. 結論
化学分析(含有元素量)と流域条件の比較検討から,阿武隈川流域の水質形成に寄与する流域条件として,落葉・常緑広葉樹林帯,市街地,腐植土,火山噴出物の要素が示された.
更に,流域条件による負荷量増加のパターンとして自然的要因と社会的要因による分類が必要であることを示している.
今回は,流域条件として推計人口の項目を考慮しないで解析を行ったため今後はいくつかの条件を追加し,化学成分とその物質循環経路の解明に取り組む予定である.