17:15 〜 18:30
[HTT16-P03] 岐阜市近郊における雨水およびエアロゾル中の硫酸イオンの季節変動
キーワード:硫酸イオン、硫黄同位体、大気エアロゾル、雨水
1.はじめに
岐阜市近郊に位置する伊自良湖は、全国最多レベルで非海塩性硫酸イオン(nss-SO42-)と水素イオン(H+)の沈着量の多い地点であることが報告されている(環境省, 2004)。また、SO42-の流出量が流入量のおよそ 2倍であることも明らかになっている(環境省, 2004)。これらの結果から、本研究では,2018年11月~2021年現在まで、沈着する前の大気エアロゾル,雨水を採取し, 包含される硫酸イオンとその硫黄同位体比(δ34S),酸素同位体比(δ18O)を測定し、伊自良湖周辺の土壌表層に蓄積される前の, 大気からもたらされる硫黄の発生源を考察した。
2.観測・分析方法
雨水は18cmφのポリポロポレン製の漏斗をペットボトルにセットした簡易雨水採取器でサンプリングを行った。大気エアロゾルは、イオン分析用は真空ポンプで8-10L/minの流量で0.2µmのPTFEフィルター上に採取し、同位体分析用はハイボリウムエアサンプラー(HV-RW型 , 柴田科学)を用い、1000 L/minの吸引流量で石英フィルター(QR-100, ADVANTEC®)上に週に1回採取した。
上記のサンプルを0.2 µmメンブレンフィルターを用いてろ過したのち、陰イオン分析はイオンクロマトグラフィー(ICS-1100, Thermo Fisher Scientific)、陽イオンは誘導結合プラズマ発光分光分析装置ICP-AES(ULTIMA2, HORIBA)を用いて, 濃度の定量分析を行った。NH₄⁺は,デジタルパックテストマルチ(DPM-MT, 共立理化学研究所)を用いて分析した。
硫黄同位体比と酸素同位体比についても同様にろ過し, 塩酸処理後に再度ろ過して有機物を除去した。これに10 %BaCl₂溶液を加えてサンプル中のSO₄²⁻をBaSO₄として沈殿させた。ろ過して摘出したものを乾燥させて, それぞれ総合地球環境学研究所に既設のS-IRMS(Flash EA 2000 + ConFlo Ⅳ + delta Ⅴ plus, Thermo Fisher Scientific)とOH-IRMS(TC/EA+ConFlo III+Delta plus XP, Thermo Fisher Scientific)を用いて分析を行った。
3.結果
3-1.中国ロックダウン期間におけるSO₄²⁻, NO₃⁻の濃度変動
2020年の初頭, 新型コロナウイルスの大流行により中国で都市封鎖(ロックダウン)の政策が講じられた。この期間のPM2.5, SO₄²⁻, NO₃⁻濃度変動についての研究結果が板橋 他(2020)で発表された。板橋ら(2020)の結果では、2018年から2020年までの三年間日本全国4か所(五島列島,隠岐,巻,箟岳)で測定されたPM2.5, SO₄²⁻, NO₃⁻濃度が, 新型コロナウイルスにおける中国のロックダウン期間の1月から3月に, 観測地点全てでPM2.5, SO₄²⁻, NO₃⁻の1月〜3月平均濃度が昨年に比べ低下していることが分かった。
伊自良湖についても, 2019年と2020年の1月から3月のSO₄²⁻,NO₃⁻濃度を比較すると, 顕著に減少しており、ロックダウンによって経済活動が低下し、大気エアロゾル濃度が低下したことが示唆された。(2019年1月~3月のSO₄²⁻平均値 2.0 µg/m3,2020年1月~3月のSO₄²⁻平均値 1.1 µg/m3)。
3-2. δ34S
2018年12月〜2020年12月における,雨水中の硫酸イオンのδ34Sは、冬季が4~12‰、夏季が2~4‰であり、冬季に高く夏季に低いという明確な季節変動を示していた。硫酸エアロゾル中のδ34Sは、冬季が5~6‰、夏季が2~6‰でありばらつきはみられるが季節変化を示していた。
3-3. 後方流跡線による解析
観測期間中全ての日についてNOAA HYSPLITを用いて後方流跡線解析を行い, 8種類に分類した(図1)。なお, 分類を1つに決定できない週はNDとした。図2は2019年12月から2020年12月までの分類毎のnss-SO₄²⁻, NO₃⁻濃度とδ34S値を示している。判別された回数が最も多かったのは, CE(朝鮮半島の東側を通ってきた経路)であり, 次いで多いのはCN(朝鮮半島の西側を通ってきた経路)である。CS(揚子江以南の中国を通ってきた経路)も含めると観測地点に飛来する気団のうち中国大陸由来のものが8割を占めていた。そのため,飛来してくる大気の多くは中国大陸を経由していると考えられる。
岐阜市近郊に位置する伊自良湖は、全国最多レベルで非海塩性硫酸イオン(nss-SO42-)と水素イオン(H+)の沈着量の多い地点であることが報告されている(環境省, 2004)。また、SO42-の流出量が流入量のおよそ 2倍であることも明らかになっている(環境省, 2004)。これらの結果から、本研究では,2018年11月~2021年現在まで、沈着する前の大気エアロゾル,雨水を採取し, 包含される硫酸イオンとその硫黄同位体比(δ34S),酸素同位体比(δ18O)を測定し、伊自良湖周辺の土壌表層に蓄積される前の, 大気からもたらされる硫黄の発生源を考察した。
2.観測・分析方法
雨水は18cmφのポリポロポレン製の漏斗をペットボトルにセットした簡易雨水採取器でサンプリングを行った。大気エアロゾルは、イオン分析用は真空ポンプで8-10L/minの流量で0.2µmのPTFEフィルター上に採取し、同位体分析用はハイボリウムエアサンプラー(HV-RW型 , 柴田科学)を用い、1000 L/minの吸引流量で石英フィルター(QR-100, ADVANTEC®)上に週に1回採取した。
上記のサンプルを0.2 µmメンブレンフィルターを用いてろ過したのち、陰イオン分析はイオンクロマトグラフィー(ICS-1100, Thermo Fisher Scientific)、陽イオンは誘導結合プラズマ発光分光分析装置ICP-AES(ULTIMA2, HORIBA)を用いて, 濃度の定量分析を行った。NH₄⁺は,デジタルパックテストマルチ(DPM-MT, 共立理化学研究所)を用いて分析した。
硫黄同位体比と酸素同位体比についても同様にろ過し, 塩酸処理後に再度ろ過して有機物を除去した。これに10 %BaCl₂溶液を加えてサンプル中のSO₄²⁻をBaSO₄として沈殿させた。ろ過して摘出したものを乾燥させて, それぞれ総合地球環境学研究所に既設のS-IRMS(Flash EA 2000 + ConFlo Ⅳ + delta Ⅴ plus, Thermo Fisher Scientific)とOH-IRMS(TC/EA+ConFlo III+Delta plus XP, Thermo Fisher Scientific)を用いて分析を行った。
3.結果
3-1.中国ロックダウン期間におけるSO₄²⁻, NO₃⁻の濃度変動
2020年の初頭, 新型コロナウイルスの大流行により中国で都市封鎖(ロックダウン)の政策が講じられた。この期間のPM2.5, SO₄²⁻, NO₃⁻濃度変動についての研究結果が板橋 他(2020)で発表された。板橋ら(2020)の結果では、2018年から2020年までの三年間日本全国4か所(五島列島,隠岐,巻,箟岳)で測定されたPM2.5, SO₄²⁻, NO₃⁻濃度が, 新型コロナウイルスにおける中国のロックダウン期間の1月から3月に, 観測地点全てでPM2.5, SO₄²⁻, NO₃⁻の1月〜3月平均濃度が昨年に比べ低下していることが分かった。
伊自良湖についても, 2019年と2020年の1月から3月のSO₄²⁻,NO₃⁻濃度を比較すると, 顕著に減少しており、ロックダウンによって経済活動が低下し、大気エアロゾル濃度が低下したことが示唆された。(2019年1月~3月のSO₄²⁻平均値 2.0 µg/m3,2020年1月~3月のSO₄²⁻平均値 1.1 µg/m3)。
3-2. δ34S
2018年12月〜2020年12月における,雨水中の硫酸イオンのδ34Sは、冬季が4~12‰、夏季が2~4‰であり、冬季に高く夏季に低いという明確な季節変動を示していた。硫酸エアロゾル中のδ34Sは、冬季が5~6‰、夏季が2~6‰でありばらつきはみられるが季節変化を示していた。
3-3. 後方流跡線による解析
観測期間中全ての日についてNOAA HYSPLITを用いて後方流跡線解析を行い, 8種類に分類した(図1)。なお, 分類を1つに決定できない週はNDとした。図2は2019年12月から2020年12月までの分類毎のnss-SO₄²⁻, NO₃⁻濃度とδ34S値を示している。判別された回数が最も多かったのは, CE(朝鮮半島の東側を通ってきた経路)であり, 次いで多いのはCN(朝鮮半島の西側を通ってきた経路)である。CS(揚子江以南の中国を通ってきた経路)も含めると観測地点に飛来する気団のうち中国大陸由来のものが8割を占めていた。そのため,飛来してくる大気の多くは中国大陸を経由していると考えられる。