17:15 〜 18:30
[HTT16-P06] モンゴル湖底堆積物の安定硫黄同位体組成変動とその古環境学的意味
キーワード:湖底堆積物、安定硫黄同位体、永久凍土地帯
本研究は、モンゴル・ゴビ砂漠西部のブンツァーガン湖湖底堆積物の硫黄同位体組成の分析を通じて、そこに記録される環境変動要因の検討を行った。2014年8月の調査において、堆積物コアの採取、湖水と河川水の採取が行われた。コアの全長は28 cmであり、210Pb-137Cs年代測定から堆積期間は1720~2014年となる。堆積物試料は0.5 cm間隔で分取され、凍結乾燥させた。水の硫酸イオン(SO42-)は、塩酸を添加し、塩化バリウムで固定された。安定硫黄同位体比(δ34S)分析は、総合地球環境学研究所既設のS-IRMSが使用された。
結果、堆積物のδ34Sは、1720~2014年にかけて約–15~+8 ‰に漸近的な上昇傾向を示す。湖水のSO42-–δ34Sは約31 ‰、流入河川のBaidragは6.20 ‰であった。堆積物最上部δ34S(+8 ‰)は、湖水のSO42-–δ34Sに比べて約23 ‰の低下を示す。これは、湖底堆積物中のバクテリアによる硫酸還元によると考えられる。湖水のSO42-–δ34Sは、流入河川に比べて約25 ‰高い値を示すことが明らかとなった。このことは、湖水のSO42-は流入河川と共に地下水からの供給を強く受けていることを意味する。その地下水は、湖水の約31 ‰以上のSO42-–δ34S値を持っている可能性を示唆する。ブンツァーガン湖の流域は、上流から下流にかけて連続永久凍土地帯から孤立的永久凍土地帯への連続的に変化する、シベリア永久凍土地帯の南端に位置する。
永久凍土が融解すると、その上位の活動層で硫酸還元バクテリアがSO42-の酸素を利用して有機物を分解し、32Sが硫化水素に濃縮し、残りの34Sが硫酸イオンに濃縮する。よって、地下水中のSO42-–δ34Sの正の異常値は、永久凍土融解に起因すると考えられる。また、この地域の1960年以降の年平均気温は、気象観測から2~3℃の上昇傾向を示す。堆積物で見られたδ34Sの漸近的な増加は、気温上昇による永久凍土融解で、凍土融解水の地下水への寄与が高まった結果と考えることができる。
結果、堆積物のδ34Sは、1720~2014年にかけて約–15~+8 ‰に漸近的な上昇傾向を示す。湖水のSO42-–δ34Sは約31 ‰、流入河川のBaidragは6.20 ‰であった。堆積物最上部δ34S(+8 ‰)は、湖水のSO42-–δ34Sに比べて約23 ‰の低下を示す。これは、湖底堆積物中のバクテリアによる硫酸還元によると考えられる。湖水のSO42-–δ34Sは、流入河川に比べて約25 ‰高い値を示すことが明らかとなった。このことは、湖水のSO42-は流入河川と共に地下水からの供給を強く受けていることを意味する。その地下水は、湖水の約31 ‰以上のSO42-–δ34S値を持っている可能性を示唆する。ブンツァーガン湖の流域は、上流から下流にかけて連続永久凍土地帯から孤立的永久凍土地帯への連続的に変化する、シベリア永久凍土地帯の南端に位置する。
永久凍土が融解すると、その上位の活動層で硫酸還元バクテリアがSO42-の酸素を利用して有機物を分解し、32Sが硫化水素に濃縮し、残りの34Sが硫酸イオンに濃縮する。よって、地下水中のSO42-–δ34Sの正の異常値は、永久凍土融解に起因すると考えられる。また、この地域の1960年以降の年平均気温は、気象観測から2~3℃の上昇傾向を示す。堆積物で見られたδ34Sの漸近的な増加は、気温上昇による永久凍土融解で、凍土融解水の地下水への寄与が高まった結果と考えることができる。