日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.08

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、竹内 望(千葉大学)

17:15 〜 18:30

[HTT16-P07] 濃尾平野西部を流れる揖斐川水系津屋川に生じた過去数十年間における堆積速度の変動

*田代 喬1、陀安 一郎2 (1.名古屋大学、2.総合地球環境学研究所)

キーワード:堆積速度、洪水履歴、鉛-210堆積年代測定、津屋川

濃尾平野は、中部地方の木曽三川(木曽川、伊部川、長良川で構成される)の流送土砂によって形成されてきた。揖斐川の支川である津屋川は、岐阜県養老山地の東麓にあって、地下水が豊富な濃尾平野の西縁に位置する。津屋川の現在の幹線流路は、東側にのみ連続堤防を有し、西側から養老山地に由来する多くの湧水と土砂を受け、山麓に連なる扇状地群の端を横切って流れている。本研究は、津屋川の環境変化を、自然および人工的な影響を伴う土砂動態の観点から明らかにすることを目的とする。

津屋川における過去数十年間の土砂動態について、鉛-210年代測定法によって評価した。堆積速度は、幹線流路の西側(右岸)に連なる池の堆積物コアにCIC(Constant Initial Concentration)およびCRS(Constant Rate of Supply)モデルを適用することによって決定した。 CRSモデルはCs-137年代測定とほぼ一致した一方、鉛-210の鉛直分布は変動したためにCICモデルは適用できなかった。 結果として、0.24〜0.44 g cm-2 yr-1の平均堆積速度が得られたが、これは日本のほとんどの湖で報告されている値よりも大きかった。さらに、1961年から1984年にかけて、0.59、0.71、2.62 g cm-2 yr-1などの3つの極大値を持つ、より大きな堆積速度が得られており、既存の文献資料によると、これらは同時期に津屋川流域で生じた洪水や改修工事にそれぞれ対応していた。以上の結果により、河川堆積物の動態は、古典的な鉛210法(CRSモデル)でも説明できる可能性が示された。