日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2021年6月3日(木) 09:00 〜 10:30 Ch.15 (Zoom会場15)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、高橋 亨(公益財団法人深田地質研究所)、座長:高橋 亨(公益財団法人深田地質研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)

09:45 〜 10:05

[HTT17-04] 堆積岩を地山とするトンネルにおける先進ボーリング調査の重複区間での速度検層によるP波速度の違いについて

*岡崎 健治1、倉橋 稔幸1 (1.国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所)

キーワード:トンネル、速度検層、P波速度

P波速度はトンネルの地山分類における評価指標のひとつである。設計時にはトンネル地表面から測定され、施工時には切羽からの先進ボーリング調査によるコアや孔内、岩片で測定される。また、施工時のP波速度は掘削箇所直近の値として地山分類の見直しに用いられている。1回の先進ボーリング調査では100m程度を掘削するが、先進ボーリング調査で掘削した最深部までにトンネルの掘削が到達する前に次の先進ボーリング調査が実施される場合がある。そのため、最初の先進ボーリング調査と次の先進ボーリング調査では、30m程度の重複区間が存在する場合がある。最初の先進ボーリング調査の速度検層によるP波速度は切羽から100m程度前方でトンネル掘削前の地山に緩みが生じていない状態でのP波速度といえる。一方、次の先進ボーリング調査の速度検層によるP波速度は切羽直近におけるトンネル掘削に伴う緩みが生じている状態でのP波速度である。トンネル掘削が地山深部に進むことで、P波速度がどのように変化するかを事前に知ることによって、地山分類の見直しや補助工法の選定を判断するための重要な情報になるといえる。

 そこで、本調査では堆積岩を地山とする5トンネル(総延長11,104m)について、その先進ボーリング調査時(全104孔)の重複区間(全8孔197m)における速度検層によるP波速度を収集整理した。そして、最初の先進ボーリング調査の速度検層によるP波速度が次の先進ボーリング調査の速度検層によるP波速度とどのような関係にあるのかについて調べることで、トンネル掘削に伴う緩みを評価するための情報として取りまとめた。

 調査の結果、重複区間は平均で25mであった。最初の先進ボーリング調査の速度検層によるP波速度は2.5~3.2Km/s(平均2.7Km/s)であった。一方、次の先進ボーリング調査の速度検層によるP波速度は1.0~2.8Km/s(平均2.2Km/s)であった。このことから、トンネルの掘削に伴い、重複区間におけるP波速度は17%程度低下していたことが明らかとなった。